難民条約では難民を迫害の恐れのある国へ送還しないよう求めており、国内では難民認定の申請中でも一律に送還が停止されてきた。
だが、その運用の中で急増したのが悪用・誤用とみられる申請だ。特に申請者が急増したのは旧民主党政権時代の平成22年3月、難民認定申請者に対し、申請半年後に一律、就労を認める運用が始まってからだ。
出入国在留管理庁によると、同年に1202人だった申請者は増え続け、29年には1万9629人に。一律の就労可能措置をやめた30年には半減したものの、新型コロナウイルス禍の令和2年~4年をのぞき、1万人前後で推移している。
入管庁が不認定としたケースの中には「借金返済のため、日本で働きたい」といった申請もあり、入管関係者は「申請の一定数は国内に居残ることを狙った制度の悪用・誤用だ」と分析する。
申請中に強姦
難民認定を申請する外国人犯罪者も相次いでいる。
平成25年10月には、難民認定申請中だったスリランカ国籍の男が当時19歳の女性に対して暴行した強姦致傷事件が発生。 男は以前、国内で別の性犯罪で服役しており、出所後に母国に送還されるはずだったが、難民認定を申請。健康状態を理由に収容所から出られる「仮放免」措置を受けて国内で生活していた。
男には27年、懲役6年の実刑判決が下されたが、刑期を終えて出所した男はその後も難民認定を申請し、送還が止められた。
難民認定申請中に犯罪に関わった外国人はこの男だけではない。
不法滞在中で母国への送還を拒否している外国人のうち令和3年末時点で懲役3年以上の実刑判決を受けたのは330人。そのうち129人が難民認定を申請中で、対象犯罪は薬物事件や性犯罪、傷害事件など多岐にわたっていた。
出国促す措置
6月10日から施行される改正入管法では、2回目までの難民認定申請者については引き続き母国への送還を停止するが、3回目以降については認定のために相当な資料を示さない限り、送還できるようにする。
送還中に暴れるなどした外国人には罰則付きで退去命令を出せる制度を創設するほか、不法滞在者に自発的な帰国を促す仕組みも導入する。
過去に犯罪歴がなく、自費で出国するなど一定の条件を満たせば、帰国後に日本に上陸できない期間を5年から1年に短縮できる措置も講じる。
また、スリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんが入管施設収容中に死亡した問題を受けて、支援者などの「監理人」を付ければ、施設外で暮らせる「監理措置制度」も始まる。
入管庁幹部は「一度に物事が変わるのではなく、個別のケースを丁寧に審査する」とした上で「望ましい外国人を受け入れ、望ましくない外国人には出てもらうのが原則だ」としている。(宮野佳幸) 産経新聞
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