自民党の総裁選が大きく動き出した。お盆真っただ中の8月14日。午前11時半から岸田文雄首相は記者会見を開き、次期、自民党の総裁選には不出馬の意向であると表明した。総裁選についてはさまざまな名前が挙がっているが、岸田首相が会見で強調したのは自民党のイメージ刷新だ。最もふさわしいのはだれだ。
「(裏金事件など)『政治とカネ』の問題。その責任は私にあります。自民党が変わることを示す最もわかりやすい最初の一歩は、私が身を引くことであります」
などと述べた岸田首相。この会見を見た自民党の閣僚経験者のXさんは、驚いた様子でこう話した。
■講演会に1200人の大入り満員
「青天の霹靂だ。びっくりとしか言いようがない。ただ、支持率が低迷し、来年は参院選挙が待ち構えるなかで、次の総裁選に(岸田首相が)勝つのは難しい。名誉ある撤退を、と麻生太郎元首相が進言していたとは聞く。これまで表立った動きが少なかった総裁選は、一気に盛り上がってくる」
世論調査などで「次の首相」として名前が挙がるのは、石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相、河野太郎デジタル相、高市早苗安全保障担当相、上川陽子外相、そして茂木敏充幹事長らだが、
「こちらに風が吹いてくるのではないか」
と期待するのが高市氏に近いY議員だ。
高市氏は、国会終了後から全国各地をまわって講演会を開いている。8月3日、兵庫県姫路市で開かれた会について、参加した関係者がこう話す。
「1000人で募集したところ希望者が殺到し、1200人の大入り満員でした。すごい熱気で、次期総裁選への期待も非常に高かった。高市さんも、出馬への強い思いを明確にしたスピーチの内容でした」
高市氏は、岸田首相が勝利した2021年の総裁選では、劣勢の下馬評を覆して3位に食い込み、大きく評価を上げた。安倍派のトップ、安倍晋三元首相が全面的に支援に乗り出したことも功を奏した。
しかし、安倍派は裏金事件で派閥解散に追い込まれ、安倍氏もこの世にはいない。となると、後ろ盾がなくなり、厳しい状況のように思える。
旧安倍派の議員によると、
「安倍派には、安倍元首相なら誰を総裁選に推すのか、と考える議員が多くいます。安倍元首相が元気であれば、きっと今回も高市先生を推したんじゃないかなと思っています。私は高市先生が名乗りをあげるならばご支援を、と思っています。高市先生は派閥がなく、推薦人20人の確保は難しいという報道もありますが、旧安倍派は100人いたわけです。20人は確実に集まります。前回も最初は、高市さんは20人が無理だとずっと言われ続けましたが、最後に安倍元首相がついて一気に流れが変わりました。石破氏や小泉氏らの名前が出ていますが、保守層に訴えかける強い候補は高市さんだけ。土壇場に強いタイプですから心配ないです」 とのこと。
■菅元首相が出馬できなかったときと似ている
自民党の政務調査役として長く手腕を振るい、歴代首相にも仕えた政治評論家の田村重信氏は、
「岸田首相は、これだけ支持率が落ちると続投は無理。衆院の総選挙も遠くないし、来年夏には参院選、東京都議選も控えている。選挙の顔として『岸田首相ではだめ』という意見が党内の大勢を占め、各種世論調査でも7割ほどが岸田首相の『交代』を求めていた。21年の総裁選に菅義偉首相(当時)が出馬できなかったのも、選挙で勝てないから、という理由が大きかった。その状況と似ている。岸田首相が早々に不出馬を表明したことで、2つのメリットがある。お盆明けになると“岸田おろし”が吹き荒れて、辞めさせられた感が大きくなっていたはず。もう一つは、早めの不出馬で総裁選が盛り上がり、世論へのアピール効果や自民党への支持回復につながるという点だ」と話し、こうも付け加えた。
「選挙の顔を選ぶ総裁選では、岸田首相が派閥を解消したので、世論調査のように、国民人気がある人、もしくは女性という流れになるのではないか」
岸田首相は記者会見で、
「後任のことについては控えるべき。ただ一つ、申し上げるならば、『政治とカネ』の問題、政治と信頼回復の問題は改革努力を続けていかなければなりません。やはり大変重要な問題であり、誠心誠意取り組んだつもりであります。政治家としてやりたかったこと、そしてやるべきこと、これを今一度しっかりと整理をし、そして方向性を示す。そういった政治家の意地みたいなものは、ありました」 と述べた。
(AERA dot.編集部・今西憲之)
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