毎月給料日になると、寮で月に一度だけのマージャンがあった。
当時の給料は現金支給だったので、寮には住んでいない先輩達が自分のフトコロを増やして、帰りに一杯やるためのものだったのだ。
当然全自動マージャン卓などではなく、手積みでやっていたので、私はただでさえ少ない自分の給料を減らしたくないので「積み込み」を覚えるようになった。
それは、手前の「自分が積む山」に千鳥状に特定のパイを仕込み、その順番が来ることを前提にして、手の内をあらかじめ調整していくものだ。うまくいけば高得点が期待できる。
そんな日々が続いていた、ある日、寮に住む先輩が珍しく友人を連れてきて、マージャンをしようという。
私は、いつものクセで積み込みをしてしまった。そうしたら、その人は、私の怪しい手つきから積み込みを見破り、最初の1回目のゲームだけで帰ってしまった。
あれは、今にして思えば、私に不正をやめるように、寮の先輩が仕組んでくれたのだと思う。