ピアニスト藤木明美のブログ No.2

異色のピアニスト藤木明美が、音楽を通しての日々を綴ります。

とことん知りたい!ノーベル賞

2015-12-28 09:17:40 | 日記
今朝のNHK番組「とことん知りたい!ノーベル賞」、素晴らしかったです。

ニュートリノ振動を発見した梶田教授が出演して、いろいろなエピソードを話していました。

中でも、スーパーカミオカンデでリーダーだった、戸塚洋二先生の話に感動しました。
2008年に66歳で亡くなった方。
生きていれば、この方も受賞したに違いないそうです。

ノーベル物理学賞は3枠あるのに、今年は2人の受賞でしたが、
それは、この戸塚先生のために椅子を空けるという、ノーベル財団の計らいだったのではと言われているそうです。
亡くなった方は受賞できないからです。

戸塚先生は、100億円のカミオカンデが大規模破損事故を起こしたとき、
事故で絶望している現場に、「作り直そう!」と立ち上がり、再建を世界に発信、指揮を取った素晴らしいリーダーだそうです。
その後、事故の責任をとり、東京大学を辞職されました。

梶田さんは、この方からリーダーとしての姿を学んだと話していました。

こうした、表に出ない人々の無心の力が、世の中をささえているんだろうと思います。

私利私欲なく、一生懸命取り組む、そこに生まれるものは、人知を超えますね。
今朝は、ワクワクと感動と力をもらい、心が希望で満ち満ちています。

世界に希望の光りを降り注ぐようなお話でした。



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パーヴォ・ヤルヴィ N響第九

2015-12-26 09:30:14 | 日記

昨夜は、NHK交響楽団の第九を聴いてきました。
指揮は今年N響の主席指揮者に就任したばかりの、パーヴォ・ヤルヴィ(エストニア出身)。昨日、朝イチに出てましたね。

年末の第九は、日本フィルを聴くことが多いのですが、今年は初めてN響にしました。
予想とは違い、昨夜の第九は、これまで聴いたものとは全然違う(私にとっては)ものでした。
第1楽章から、そのドライブ感は圧倒的でした。中でも強調されていたのは、スラーの部分のクレッシェンド、デクレシェンド。(楽譜はこうなってたっけ?と思うほど)多重な音が濃厚な液体のように、ウワ~ンとウネルわけです。

そうすると、聴衆の身体の液体までが一緒にウネルようになり、同じ空気圧の変化を体感する感じで物凄いドライブ感が生まれます。

そしてテンポはかなり速めで、リズムのコントラストが明確なので、
そのドライブ感がさらに加速されて、一体化していきました。

また、フォルテッシモとピアニッシモの差のつけ方が凄くて、特に、第4楽章の何回もの否定の問答の後に始まる、低弦のあのメロディ(歓びの歌)は、ホール中が、息をひそめないと聞こえないほどの、ピアニッシシシシモで始まりました。(あの音は、死ぬ時にもう一度聴きたい。静かな歓喜の涙に抱かれます。)

プログラムに書いてあった、P.ヤルヴィのコメントです。
「私の人生にとって重要な作曲家を一人あげるとすれば、それはベトーヴェンなのです。これまでに多様な角度からベートヴェン像の解明を試みてきました。(中略)ベートーヴェンに対する私の発見や核心を反映させる演奏をお約束します」

ベートヴェンの音楽は、楽譜に忠実に演奏すれば、必ず全ての人の魂に一体化する偉大な作品です。中でも、第九は、その頂点となる作品で人類の残した偉大な財産。
それでも、これを聴くことなく人生を終えてしまう人の方が多いわけです。
病に伏す人々、戦地の人々、路上で暮らす人々、国家のトップの人々、全ての人々に、小さなプレーヤーからの雑音まみれの音でも、何とか聞いてもらいたいと思うのです。この普遍的なメッセージを。

忘れてはならないのは、ベートヴェンの耳は30代から悪くなり、
第九を作曲したときはもう聴力を失っていたということです。
その中で、晩年、あの大曲を作り上げたということです。

昨夜、私はウネリと振動の第九を聴きました。
ベートヴェンは、恐らく、あの天地を揺るがす振動を浴びながら書いていたのだろう。
そう想いを馳せました。

(写真はNHKホールのロビー)

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ヨハン・クリスチャン・バッハ

2015-12-21 10:57:53 | 日記
昨日は、チェロの豊田浩作さんの伴奏で、
ヨハン・クリスチャン・バッハ作曲
J.C.Bach Cello Concerto in C minor を演奏しました。
普段演奏しない曲なので、いろんな気づきがあり、
チェロとのアンサンブルは音楽的に楽しい本番でした。

曲名を見ると、バッハの曲ね、と思うわけですが、あの大バッハ、ヨハン・セバスチャン・バッハではなく、
末子の、ヨハン、クリスチャン・バッハの作品です。

J.S.バッハには20人の子どもがいて、そのうち4人を優秀な音楽家に育てあげたので、
当時、バッハは優秀な音楽家のお父さんとして知られていたようです。

バッハが今のように有名になったのは、死後80年あまり経って
メンデルスゾーンがバッハの作品を絶賛し広めるのに尽力してからです。

作品の評価と言うのは、流行に左右されるので、普遍的な評価はあとから付くのが常ですね。

今は逆に、息子たちの作品はお父さんの作品の影に隠れています。
私も、譜面をもらったときは、J.S.BACH、お父さんのバッハの作品だと思い込んでいて、
弾き始めてから「あれ?バッハと曲想が違うぞ」と気づいたくらい、息子たちの作品を弾く機会はありません。

弾いていると、お父さんの音楽より、イタリア古典、ヘンデル、モーツァルトのエッセンスが色濃くミックスされているなあと思って、
調べてみたら、まさに、末子のクリスチャン・バッハは、イタリアで音楽教育を受けて、ヘンデルを敬愛してギリスに渡り、
天才モーツァルトの方がクリスチャン・バッハの音楽に影響を受けているようです。
曲から時代の背景がすぐにわかるから、面白いです。

どんな天才の音楽も、先代の音楽家のエッセンスをバトンリレーのように無意識に受け取りながら、
新しい音楽を作っていることを改めて感じました。
芸術は、全てそうですね。

見えないバトンが、作品を通して渡されている、それが芸術なんだなあと思った日でした。

楽曲はこちら。
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