ピアニスト藤木明美のブログ No.2

異色のピアニスト藤木明美が、音楽を通しての日々を綴ります。

声楽界のイチロー、関定子先生の「ルチア」

2015-06-28 21:52:01 | コンサート
2015年、6月22日、ソプラノ関定子氏(先生)のオペラ「ルチア」(紀尾井ホール)第2幕【狂乱の場】は、
人類の歴史的な瞬間!でした。
あの場にいた全ての人が、あの時、そう思ったと思います。


この場面は、超絶技法を駆使する18分という難曲の長大なアリアがあります。
まさにその時、聴衆は、息を止めて、ピンと空気を張り詰め、
天から降ってくるような聴いたこともない美しい響きに聴き入っていました。

世界にソプラノ歌手関定子氏しかいないような・・そんな感覚でした。
舞台の共演者も、その天からの声に心身が震えているのが伝わってきました。
すべてが透明な光りに包まれた瞬間でした。

この方は、何と言う偉業を成し遂げてしまったのだろう・・
彼女が70歳であることなど、誰も感じない。
人類初の偉業!

と同時に、何故ここにいる人しかこの瞬間を知り得ないのか、何かおかしい、と思いました。
イチローが世界的記録を塗り替えるとき、世界の人が見るのに、
何故関定子氏(先生)が人類未踏の偉業を達成するとき、これだけの人しか知らないのかと。
(会場は、ほぼ満席ではありましたが)



番組には間に合わなかったけど、NHKのプロデューサーに見てもらう方法はなかっただろうかとか、
観客の中に、世界に紹介できる人はいないだろうかとか、そんな想いで会場を後にしました。
胸が詰まって、お会いできないほど感無量でした。
今だに、その偉業を思うと、あのシーンを思い出すと胸がいっぱいになります。

超難曲オペラ「ルチア」は、関先生の70歳の力を知らしめるのにドンピシャの演目でした。
年齢を隠しても、世界的に絶賛されるものでした。
まだまだ余裕がありました。
これまで聴いた中で最高の声の響きでした。

それが、70歳と聞いたら、世界の音楽業界を驚愕させる出来事なわけです。

そのことを世界の人はは知らないわけです。

「素晴らしい芸術は、ひっそりと行われている」という言葉、まさにそれです。

でも、いつかこの伝説は伝わる気がします。神様が伝える気がします。
でないと、何かがおかしい・・
コメント
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