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グリーンアノールと大人買いの観光客 小笠原レポート①

2013-08-23 | 本当かな? 世の常識=自然界の非常識

小笠原父島 大神山公園からの360度パノラマ写真 2013-08-21

昨夜、小笠原から帰ってきた。前回のブログで、「明日から小笠原…。請うご期待」などと書いてしまったが、全く何も書かなかった。まずはお詫び申し上げます。
まあ、色々諸般の事情がありまして…。ご勘弁を。

さて、基本的に仕事なので、あまり自由にならないという事情はあるのだが、それでも、いくつかの目標を持って出かけていた。たとえば、ウスイロコノマチョウと、ウスキシロチョウを見つけること。オガサワラオオコウモリの撮影をしてくること。などなどだ。ところが、これらの目標は、何一つ達成できなかった。

実は、小笠原には、昆虫はほとんどいない。いや、小笠原にはというのは間違えで、父島、母島には、というべきであろう。小笠原で人が住んでいるのはこの二島だけである。
人がいるから昆虫が少ないというのは、半分当っている。というのは、人そのものではなく、人が持ち込んだグリーンアノールというトカゲ(イグアナの仲間)のせいで昆虫がいなくなたということなのだ。
このトカゲが持ち込まれたせいで、次々に虫が食われ、ある昆虫の先生の言葉を借りると、「母島の昆虫は、アノールが入る前と比べると、100:0になった。」とまで言うのだ。100:1ではなく0である。つまり以前の1%にも満たない数になったということだ。いわゆる虫屋さんといわれる人(昆虫マニアなど)からすると、この気温で、これだけの緑があり、虫が居ないという状況に、とてつもない違和感を感じるのだ。実際、山の中を歩いてみても、ほとんど蚊にも刺されず、クモの巣に絡まれることも少ないのだ。それほどまで昆虫が少ないということだ。


グリーンアノール 2008-10-12 小笠原母島       野ヤギ 2013-08-19 小笠原父島

世界遺産になったことなどもあり、現在このアノールや、クマネズミ、ネコ、ヤギなど、在来種に影響を与える、侵入種の駆除を進めているが、アノールクラスの小型の生物を根絶することは不可能だろう。それどころか、今年になってから、父島の隣にある兄島に、アノールが入ったという報道がなされた。「ああ、これで兄島もおしまいだ。」小笠原の自然を知る多くの人はそう思ったに違いない。

僕は、小笠原に通いだして11年目になる。世界遺産登録後は、客層がかなり変わった。地元の人と話していると、僕らでは手が出せないような高級なマンゴーや、工芸品を大人買いする客も増えたという。宿、お土産、体験プログラムなど、いわゆる観光業に従事する人たちには、ちょっとしたミニバブル状態だが、外来種の駆除などに奮闘する地元の方々は、かなり苦労しているようだ。

単に、多くの人が来て、お金を落として行ってくれるだけでいいのだろうか。ここに示したような事情を理解して、一緒に考えてくれるような振興のあり方が考えられないのだろうか…。