私の研究日記(映画編)

ここは『智に働けば角が立つ』の姉妹ブログ。映画の感想や、その映画を通してあれこれ考えたことを紹介しております。

『ニュー・シネマ・パラダイス』(CATV)

2008-12-18 12:52:01 | な行
監督 ジュゼッペ・トルナトーレ
製作総指揮 ミーノ・バルベラ
製作 フランコ・クリスタルディ
脚本 ジュゼッペ・トルナトーレ
出演者 フィリップ・ノワレ
    ジャック・ペラン
    サルヴァトーレ・カシオ
    マリオ・レオナルディ
    アニェーゼ・ナーノ
音楽 エンニオ・モリコーネ
撮影 ブラスコ・ジュラート
編集 マリオ・モッラ
配給 日本ヘラルド
公開 イタリア 1989年11月17日
    日本   1989年12月16日
上映時間 155分
124分(国際版)
170分(ディレクターズカット版)
製作国 イタリア、フランス

 CATVにて鑑賞(2008年11月17日)。

 物語は1980年代のローマから始まる。物語の主人公は、映画監督サルヴァトーレ・ディ・ヴィータ(ジャック・ペラン)。夜遅く帰宅した彼は、故郷シチリアにいる母親からの伝言を受け取る。アルフレード(フィリップ・ノワレ)が死んだという伝言だった。アルフレードという懐かしい名前を聞き、誰よりも映画を愛した少年時代、エレナ(アニェーゼ・ナーノ)への愛と人生に迷う青年時代の思い出が蘇ってくる。仕事で成功を収めてはいるものの、心の空白を埋められずにいる現在のサルヴァトーレは、かつてトト(少年時代:サルヴァトーレ・カシオ、青年時代:マルコ・レオナルディ)と呼ばれていた過去の日々に思いをはせる。そして、約30年ぶりに故郷シチリアへ帰郷することを決意するのだった。

【ネタばれ注意!】
 最も好きな映画監督は?と訊ねられたら、私は迷うことなくジュゼッペ・トルナトーレ監督の名前を挙げる。『海の上のピアニスト』、『マレーナ』、『題名のない子守唄』と、どれも素晴らしい作品ばかりである。そのトルナトーレ作品の中でも、特に名作中の名作といわれている本作。恐らくファンの方も多いだろう。当の私もこの映画の大ファンである。この映画を見て何度励まされてきたことか。

 生き方に戸惑ったり、不安を感じたり、自信をなくしたという経験が、一度や二度ならず恐らく誰にだってあるだろう。主人公サルヴァトーレは映画監督として成功した人物。が、一方で、かつて恋人だったエレナとの別れを悔み続け、満たされない心の空白から、自分の人生に疑問を抱いている。いわば彼は、ときおり人生の意義について悩まされるわれわれの姿を投影した人物といえるだろう。そして、自分の人生に疑問を抱く主人公が、その答えを見つけるため、自分の過去を振り返り、故郷シチリアを訪れる、というのがこの映画の物語だ。

 だが、懐かしい故郷への帰郷も、かつての恋人との再会からも、結局、彼は何の答えも見出すことができない。失意のままローマに戻った彼に答えを与えてくれたのは、意外な人物である。死んだアルフレードだ。職場の試写室で彼の遺したフィルムを見ながら、サルヴァトーレの表情が変わっていく。物語冒頭から暗いままだった彼の目は、キラキラと輝きだす。トトと呼ばれた少年の頃のように。

 まさに、青年トトがローマに旅立つ場面で、アルフレードの言った「ノスタルジーに惑わされるな。・・・自分のすることを愛せ。子供の時映写室を愛したように」というセリフの通り。つまり、彼が人生に対してずっと抱いてきた疑問の答えは、結局のところ過去にではなく今、それも目の前にあるということだろう。砂の数ほどある映画の中でも、これ(試写室の場面)ほど好きな場面はない。若干ニュアンスが異なるかもしれないが、この映画は、幸せが実は意外と身近な所にあるという、大人版『青い鳥』(メーテルリンク)といえるのではないだろうか。私も、自分のやっていることにどんな意味があるのだろうかと、悩んでしまうことがよくある。が、どんなに悩んでいても、今の自分に対し前向きな気持ちになれる作品である。




 それにしても、この映画は愛に満ちている。映画に対するサルヴァトーレの愛は、人生に対する彼の意義でもある。トトに対するアルフレードの愛は、将来のトトの悩みを予想してしまう。エレナに対するサルヴァトーレの愛は、30年間も続いた。これらを見るだけで心がほだされてくる。




 シチリアの乾いた空気を映し出す映像は、言うまでもなく美しい。何より、この映画のもう一つの魅力は、エンリオ・モリコーネの音楽である。今やトルナトーレ監督作品には欠くこのできないモリコーネ。ノスタルジーと哀愁に満ちた曲が、聴いていると寂しくなる。と同時に、どこか慰められているような矛盾した気持ちになってくる。一度聴いたら忘れることはできない、強烈だが優しさに満ちた音楽だ。イタリア映画の音楽の良さに気づかされた作品である。


 物語に様々な教訓が詰まっており、仕事、恋愛、そして人生そのものについて考えさせられ、そして励まされる。また、一方で物語は愛で満ちている。見ているときっと温かい気持ちになれるだろう。そして美しい映像と、一度聴いたら忘れられない優しい音楽。映画を見るとき、私が重視するのは物語と映像と音楽。私が知る限り、この三つの要素がこれほど調和している映画はないように思われる。どれをとっても、とても素晴らしい作品だ。映画サントラも素晴らしいので、こちらもお薦めしたい。



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2 コメント

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ほんとうに (Matthew)
2008-12-19 01:21:18
モッサンさん、こんばんは。
この作品、WOWOW録画で見たのが初めてで、本当に良い作品だったので、大きなスクリーンで見たかったと、激しく後悔しました。
本当に、サルヴァトーレのラストの表情変化は、すばらしかったですね。
私もです! (モッサン)
2008-12-19 02:05:37
Matthewさん、こんばんは。
コメント&TBありがとうございます。

私もDVDとCATVでしか見たことがないので、ぜひともスクリーンで見たいです。
運良く再上映された時には、絶対見逃すまい!と思っております^^。