私の研究日記(映画編)

ここは『智に働けば角が立つ』の姉妹ブログ。映画の感想や、その映画を通してあれこれ考えたことを紹介しております。

『人生に乾杯!』(Theater)

2009-08-02 01:00:38 | さ行
監督:ガーボル・ロホニ
出演:エミル・ケレシュ、テリ・フェルディ、ユディト・シェル、ゾルターン・シュミエド
製作国:2007年(ハンガリー)
時間:1時間47分

 シネスイッチ銀座にて鑑賞(2009年6月20日)。

 あらすじ。「運命的な出会いを機に結婚したエミルとヘディも、今では81歳と70歳。互いに恋に落ちていた頃のことなどすっかり忘れていた。年金だけでは暮らしていけず、借金取りに追われる毎日の中、ついに二人の出会いのきっかけだったダイヤのイヤリングまで借金のカタに取られてしまう。高齢者に冷たい世の中に怒りを覚えた夫のエミルは、イヤリングを奪い返すために持病のぎっくり腰を押して20年ぶりに愛車のチャイカを飛ばし、郵便局を紳士的に強盗!それを皮切りに次々と紳士的強盗を重ねていく。一度は警察に協力した妻のヘディも、奮闘する夫の姿にかつての愛しい気持ちを思い出し、手を取り合って逃げる決心をする。二人の逃避行は、やがて民衆を巻き込んで思いもかけない展開に…」(『映画生活』からの引用)。



 シュールな笑いを誘う場面が多かったが、特に、二人のしたたかさが判明する物語の最後は、思わずニンマリしてしまった。また、時代を遡らせ、二人の馴れ初めをラストシーンに持ってきたのは、構成として絶妙な配置だったと思う。じーんと胸が締め付けられた。

 ところで、ハンガリー映画を見たのはこれが初めて。そもそもハンガリーってどんな国なんだろう? ドナウの真珠ブタペスト、ハンガリー動乱。う~む、知っていることを思い浮かべてみたが、これだけしか挙がらなかった。ハンガリーって未知の国。ということで調べてみると、ハンガリーは人口1000万弱の小さな国。東京よりも人口が少ない(というより東京の人口が多すぎるのだと思うが)。

 この作品のヒーローとヒロインは高齢者。ということでOECDの統計をみてみると、ハンガリーの高齢化率は16.1%(2007年)。日本ほどでないにしてもそこそこの高齢化社会である(日本は同じ年21.5%)。ちなみに、最近日本では、「高齢化」という言葉がトピックとして取り上げられなくなった気がする。例えば衆院選が今月末に控えているということで、自民党と民主党のマニュフェストで「高齢化」という単語の数を数えてみると、「えっ!たったこれだけ?」という程しか取り上げられていない。「高齢化」のように、将来の社会構造を左右するほどの要素を念頭に置いていないマニュフェストなんて、果たして意味があるんだろうか?
 
 それはともかくとして、話を元に戻すと、この作品が老夫婦を憐れみの目でも蔑みの目でもなく、したたかな人生の達人として、あるいは長年夫婦関係を維持してきた男女の先輩として、敬愛の目で描き出しているところに、私は共感を持てた。なかなか良い映画だったと思う。



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