花郎徒の庵 

目指せ楽隠居! 大長今ファン&歴史フリークの隠者・花郎徒による よろずつれづれ日記です。(*>∀・*) 

スラッカン 桃の節句~地の巻~

2007-03-04 23:20:21 | 創作ネタ・二次小説
 ミン尚宮発案のスラッカン『三人官女』争奪大会は、知らず知らずのうちにちょっとしたイベントとなっていた。

 今回の大会のルールは「常識問題早押しクイズで2問先取した順番で3名決定!」というものに決められ、そして、ムスリのホンイは宮中の特殊イベントの進行役で実績のあるため、今回もMCとして起用されたのであった。

ホンイ「みなさん、長らくお待たせいたしました~! 本日、不意に開催となりましたこの企画、倭国渡りの雛人形のマスコット『三人官女』に相応しい女官を選んじゃおうという、何とも大胆不敵なコーナーです。参加しますのはこちらのみなさんです!」
 ホンイの紹介にあわせて5人の女官たちが姿を現した。先頭はミン尚宮、続いてベテラン内人チョバン、さらに純情可憐なヨンセン、年中食べ盛りのチャンイ、そしていつも挙動不審なヨンノ、の順で名前の書かれたタスキを掛けての登場である。
 周囲からはいつの間にか群がり出てきた宮中関係者(特に男性陣)からそれぞれに応援コールが上がり、場を一層盛り上げていった。
5人は特設された座席に着き、どこから調達してきたのか不明な押しボタンに手を掛け、勝負の開幕を思い思いに待った。

ホンイ「それではみなさんに意気込みをお聞きしてみたいと思います。ミン尚宮様からどうぞ!」
ミン尚宮「それじゃお言葉に甘えまして…。(小指を立ててマイクを持ち他の4人の方へ指差し)今回は悪いけど、私がもらうから覚悟しといてよ。ま、とりあえず残り2人の座を争ってちょうだいな」
 珍しく挑発的なセリフで迫ったミン尚宮に、4人はいかにも意外だといった表情をしていた。日頃の細長人生からは想像もつかない自信満々な姿に、ギャラリーもほんのちょっと驚き気味である。

チョバン「私も尚宮様に負けない自信があるの。という訳でご愁傷様、ヨンセン・チャンイ・ヨンノ。あんた達のうち2人は確実に落ちるって決定ね」
ヨンセン「覚悟は出来ています。いつものオドオドした自分じゃなくて、一人でもちゃんと何か勝ち取れるんだって気合い入れて頑張ります!」
チャンイ「この中では一番若いですし、私ってこう見えても女の子らしいとこあるんですよ。副賞にあられやお餅も貰えるみたいなんで余計に頑張っちゃいます
ヨンノ「みんな物事には持って生まれた品格が大事なのを忘れてるみたいね? その点私ならそれだけでも選ばれる資格ありね。最後に笑うのはこの私よ、ほっほっほ…(ノ ̄▽ ̄)ノ」

ホンイ「みなさん、とっても張り切っておられますね。それでは時間も押し迫ってまいりましたので早速問題に移ります」

Q1「牛肉はソェコギ、鶏肉はタッコギ、では豚肉は何と言うでしょう?」

ピンポーン! さすがにスラッカンの関係者、全員が一斉に押すもタッチの差でミン尚宮が回答権を獲得。

「テジコギ!」 ピンポンピンポーン! ミン尚宮様1ポイント獲得です。
歯噛みして口惜しがるチョバン、ヤラレタ~といった感じのヨンセンとチャンイ、ちょっと余裕を装うヨンノ、そして勝ち誇るミン尚宮…

Q2「宮中・大殿を警備する赤い装束を来た護衛官を何と言うでしょう?」

ピンポーン!
これもまたほぼ一斉に押されるも、ヨンノが一番早かった様子。誇らしげに「大殿別監!」と回答し見事正解。やっぱり叔父さんがその職ですからね。ヨンノ1ポイント獲得
今回はチョバンとヨンセンが妙に口惜しがっています。

Q3「夏に食べられる、果物や煮た小豆などを乗せて、練乳や蜜を掛けた氷菓子を何と言うでしょう?」

ピンポーン!
他の4人が少し悩む中で唯一嬉々とした顔でボタンを押したのは内人チャンイ。ホンイが答えを聞く前にさっさと
パッピンス!!!」と元気良く回答。もちろん大正解、これでチャンイも1ポイント獲得。焦るチョバン、オロオロするヨンセン…

Q4「今の王様の前の前の前の王様のお名前は何と仰るでしょう?」

ピンポーン!
鼻息も荒く、待ってましたとばかりにチョバンが血走った眼をしながら「世祖王殿下!」と絶叫。一瞬静まりかえるその場、やがてホンイが「正解です」と言うなり、「よっしゃー!」と気合い満点で全身で喜びを表すチョバン。v(・∀・)ノ cチョバンも1ポイント獲得。おかげですぐ隣のヨンセンは半泣き状態になってしまいました。

ホンイ「はい、4問目まで終わって、現在はヨンセン様以外のみなさんが各1ポイントで横一線ですね。どなたが1抜けしてもおかしくない状況です。あ、ヨンセン様、特に頑張ってくださいませ。まだまだチャンスありますよ~
 ウサギのように目を赤くして意気消沈気味のヨンセンに、男性諸氏から「イ内人、ファイティ~ン!」やら「ヨンセン、絶対負けるな~!」という声が沸き、中には亀のぬいぐるみを高々と上げアピールするツワモノも現れ、さらに人垣を掻き分けたチャングムがヨンセンの目を見てニッコリと微笑み、両拳を握って「頑張れ!O(*^-^*)O」ポーズを見せると、ヨンセンは涙を拭いて復活していった。

ホンイ「それでは次の問題です」
Q5「その昔、チャングム様がチュクスンチェの甘みの素として見つけた食材は何だったでしょう?」

ピンポーン!
全員がまたも一斉にボタンを押したが、微妙な差でヨンセンに回答権が渡り、大親友の問題だったこともあり「熟した柿」と答え、もちろん正解なので遂にヨンセンも1ポイントゲット! これにより全員がリーチとなる展開に…

ホンイ「まぁ、何とこの時点で5人の皆様全員が同点になってしまいました。それではよりスリリングな展開になるように、問題もちょっと難しいものに致します。お手付きは1回お休みですので慎重にお答えくださいませ!」

Q6「倭国の有名な古典落語の題名は、目黒…」

ピンポーン!
(※何でこんな話題を女官が知っているんだ?と言うツッコミは無しでご覧下さい)
何とこの難問にいち早く押したのは、意外にもヨンノ。他の4人の顔に緊張が走ります。そして注目のヨンノの回答は… 「祐樹!」 ブブー! 当然不正解! 

「それは、松方弘樹さんの弟さんです
ヨンノはやっちゃった的なとても口惜しい表情で地団駄踏みまくる。

ホンイ「ヨンノ様、問題まだ途中でしたのに焦ったようですね? それでは続きです、よ~くお聞き下さい。題名は、目黒の何でしょう?

ピンポーン!
続いて回答するのはチョバン。今度は最後まで聞いたので十分期待できる。
注目の回答は… 「雅叙園」 ブブー! 不正解です。

「それは有名な結婚式場ですね
恥をかいてしまったチョバンはホンイを睨みつけるも、後の祭り。

ホンイの指名により、続いて回答したのはチャンイ。
食べ物がらみの話だと知っていたのか、自信満々に「秋刀魚!」と答え、見事正解。そしてこの瞬間、チャンイの一抜けが決定!
必然的に残る官女枠は。ヨンノ・チョバンはともにお手付きで一回休みになるので、次の問題はミン尚宮とヨンセンのみが回答できることになりました。

Q7「倭国の伊豆半島にある温泉地を4つお答え下さい」
数秒の沈黙の後、少し頭を抱えつつミン尚宮がボタンを押し回答へ。

「修善寺温泉、湯ヶ島温泉、伊豆長岡温泉、…う~んと、熱川温泉!
ピンポンピンポーン! 大正解~! 三人官女2人目はミン尚宮に決定、先抜けしていたチャンイと手を取り合い喜んでいる。
残る枠は。次の問題でいよいよ『三人官女』が決定します。

ホンイ「ヨンノ様とチョバン様が復帰されまして、ヨンセン様ともども最後の問題に望みを託します。みなさん、頑張りましょうね!最後の問題は特に難しめの問題をご用意致しました。目指せ三人官女、泣いても笑ってもこれが最終問題です!」

 チョバン、ヨンセン、ヨンノ、女3人のラストバトルの火蓋が切って落とされる…

Q8「人名を当てる問題です。次に挙げる特徴からこの人物が誰かをお答え下さい」

「私はさる尊い血筋に生まれましたが、幼い頃から家の暮らしは貧乏でした。私には血の繋がらない2人の弟が居て、艱難辛苦を共にすると誓い、約三十数年間世の中を巡り歩きました。どうやら私の姿は他人から見るとかなり異様だったらしく、それを見て大物だと思う者もいれば、嘲る者も多くいました。ちなみにそんな私の容貌はと言いますと、『身の丈七尺五寸、両耳は肩口まで垂れる大きさで、手を伸ばせば膝下まで届き、目の視界は両耳すら見える幅を持ち、顔は白玉の如く、唇は最初から紅をさしたように鮮やか』となります。さて、私は誰でしょう?」

(何これ? そんな人いたっけ? 尊いのに貧乏? そんな訳あるはずないじゃない…)
(肩まで垂れる耳って、それじゃまるでお化けみたいだわ。それにしても誰かしら…)
(2人の弟と約三十数年一緒? 手を伸ばしたら膝下まで届く人っている? 絶対にありえないし!)
ホンイの出題に当然のように頭を悩ます3人。無理も無い、実はこの問題はホンイの知己である某人物がこんな事もあろうと用意したとっておきの問題なのである。
 数分経過、どうしても答えが導き出せないままの3人に焦りの汗が浮かぶ。ギャラリーもまた進捗しない状況に業を煮やし、無責任なブーイングを見せた。埒が明かないと判断したホンイは、どこからか一本の巻物を取り出し、その人物が一目でわかるような人物画を見せることで大ヒントにしようとした。
 ホンイが巻物の結びを解くと、そこにこんな画が現れた。



ピンポーン!

ヨンノ「ほほほ、悪いわねお二人さん、正義は勝つってことね!」
高笑いするヨンノを見て唇を強く咬み口惜しがるチョバン、その姿はまるで羅刹女のようである。一方、ヨンセンもまた全てが終わったように意気消沈、ただヨンノの横顔を虚ろな目で見ているしかないようであった。

ホンイ「それではヨンノ様、お答えをどうぞ!」
ヨンノ「そりゃもちろん、諸葛孔明よ!」

ブブー! 不正解です!
ヨンノ「え、何で? 違うの? それって三国志に出てくる人じゃないの?」
信じられないといった表情でへたり込むヨンノ、まさかの状況にチャンス到来を感じ喜ぶチョバン、しかし彼女の記憶にその人物名はなかなか浮かばなかった。

ホンイ「残念でした。ほんと惜しいですが間違いです。言わば『主客転倒』ならぬ『主従転倒』ですね~」

そうしている間に、一人考えていたヨンセンはヨンノの言った「三国志の人物」とホンイの言った「主従転倒」という単語が頭の中で駆け巡り、そしてある答えを導き出した。
 横で頭を抱えたままのチョバンに対して、少し申し訳ないと言った思いで、ヨンセンは手元の回答ボタンを押した。

ピンポーン!

ホンイ「はい、それでは改めましてヨンセン様、お答えをどうぞ!」
ヨンセン「もしかして、りゅ、りゅ、劉備玄徳様じゃないかしら…」

ピンポンピンポーン!!!
正解のベルが鳴り響き、笑顔のホンイがまだオドオドしているヨンセンの手を包み「おめでとうございま~す!(*^▽^*)」とお祝いの言葉と告げた。
その瞬間、ヨンセンはめでたく『三人官女』の資格を得たのだった。

感極まってうれし涙を流すヨンセンの許へ、ミン尚宮とチャンイ、そして親友チャングムが駆け寄り、喜びを分かち合った。ホンイやギャラリーたちもまた惜しみない拍手を送り、歓喜の渦が巻き起こった。
 チョバンはしばらく放心状態であったが、それでも先輩らしく静かに拍手を送った。大チョンボをしたヨンノは、「ふん、何さ。たかがお飾りの名前じゃないのさ。別に口惜しくないわよ」とわかりやすいやっかみコメントを残し、どこへともなく去っていった…

 その夜、1日の勤めを終えた『スラッカン三人官女』の面々は、ささやかなお祝いを行った。チャンイの思惑通り、雛あられや菱餅そして甘酒が副賞として届けられ、チョン最高尚宮の「あまり羽目を外さない程度に楽しみなさい」とのお達しに従い、チャングムやチョバン、さらにはクミョンも交えての宴となった。
 しかし、もう一人が姿を見せていなかった。言うまでもなくヨンノである。
が、無関心なふりをしてその実では一番執着していたのに、落選してしまった彼女が人一倍天邪鬼だというのを知っていたので、誰も敢えて口に出さなかった。

 宴もたけなわの時、ヨンセンは「ちょっとご不浄へ」との一言を残し中座した。
心なしかその懐がいつになく膨らんでいた。それを察したのは、チャングムだけであった…

「はい、これ。あんたの分よ」
あまり気の進まないような顔でヨンセンが何かの小さな包みを差し出した。
差し出された先には涙目になった一人の内人が膝を抱えて座っていた。ヨンノだった。包みを開くと雛あられや菱餅が少しだけ入っていた。
「何これ? こんなもんいらないわよ!」
「まったく口惜しかったのはわかるけど、素直になりなさいよ! 確かにあんたと私は昔からウマが合わない仲だけど、それでも、それでも…何て言うかその…」
「?」
「…同じスラッカンで働く仲間だし、何かほっとけないのよ。どうせ断られるって思ってたけど、桃の節句は女の子のお祝いなんだし、今夜くらいは仲良くしなきゃって思って…
「…ふん、あんたも馬鹿ね。とことんおせっかいなんだから。そんな俄かに優しくしたって私はこれからも容赦しないわよ。それと…今日はたまたま負けただけ、そう何回も勝たせてやらないわ。ま、まぁ、今夜だけは休戦してあげてもいいけど…
「…うん、それでもいいわ、あんたらしくてさ。泣くなんてあんたらしくないわよ、さ、みんな待ってるから行こう」
「仕方ないわね… それで甘酒まだ残ってるの?」
「どうかしら? チョバン姐さんがかなり飲んでたし」
「そりゃ大変! こうしちゃいられない、急ぐわよ!」

仲が良いのか悪いのかよくわからない二人は、残り少ない休戦時間を過ごすべく皆の待つ部屋へ向かった。

スラッカン桃の節句の夜は更けてゆく…          -おしまい-


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4 コメント

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こちらの方が楽しいです (雪の華)
2007-03-05 01:15:06
花郎徒さん

予想は見事にはずれましたが、流石知識とユーモアが
たっぷり組み込まれたクイズには、笑ってしまいました。
それぞれの意気込みもキャラを現している台詞ですね。ヨンセンを応援する場面はあり得る~。と納得するし。>ホンイの知己である某人物・・これって花郎徒さんですよね。
もうお腹一杯の楽しさです。優しいヨンセンはヨンノの所へ。ここがヨンセンのヨンセンらしいところですね。ヨンンは可愛くないけれで、照れ隠しの台詞を言いながらも、心ではきっと嬉しかった事でしょう。
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人の巻 (角田)
2007-03-05 10:58:12
> -おしまい-
え~っ、「人の巻」は?
雛壇コスプレはないんですか~(期待)
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面白いです (悠菜)
2007-03-05 17:41:28
大兄

 やはり三人官女はこの3人に決まりましたか。それにしてもヨンセンファンはコアなファンが多いですね。亀のぬいぐるみが応援グッズなんだから

 しかし・・大兄?
 よほど私に「きゃ~!!」と言わせたいのですね?まさかピンポンクイズの最後が昭烈帝陛下だなんて思いもつきませんでした。
 昭烈帝陛下・・さしずめあの映像は成都の武侯祠廟のものですな?
 個人的には順平侯の方が良かったな・・なんて思う三国志マニアなのでした
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賛否両論? (花郎徒)
2007-03-05 19:36:57
☆雪の華さん
 こちらにもありがとうございます。
実際のドラマとの整合性よりも、二次小説の娯楽性を追求してしてみました。でも、何とかまとまった内容になったようです。
 最後の二人のやりとりは、きっとドラマにはないところでこんな事もあったかもしれないという私なりの想像から考えてみました。だから、ヨンノの死を聞いた後にヨンセンは悲しかったんだと思うのです。

☆角田さん
 「人の巻」ですか…う~ん、そこまで考えてませんでした。
でも、コスプレしてどうなったかは私も気になりますね。うまく創作できたら別の機会に発表したいと思います。という事で…

☆悠菜小姐
 ヨンセンに実際宮中でのファンがいるとしたら、けっこう熱狂的な連中になるのでは?と思い、コアな感じにしてみました。

それと、劉皇叔ネタは物語のインパクトとして挿入しましたが、と同時に小姐をはじめとする三国志フリークの皆さんのために捧げる問題でもあります。
 事のほか喜んでいただけたようで幸いです。なお、この画像は成都の廟にある像です。
いつか子竜殿も引用してみたいですね。
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