救急医療:2次救急体制、63病院が輪番制離脱
入院が必要な救急患者を交代で受け入れる「輪番制」に参加する2次救急病院のうち、医師不足などで輪番制から離脱した病院は昨年1月以降だけで24道府県の63病院に上ることが、毎日新聞の調査で分かった。42都道府県は救急医確保の困難さを訴えており、自治体の財源難を理由に輪番制自体を中止した地域もある。救急病院を初期から3次に区分する体制の中、重篤な患者以外の入院を受け入れる2次病院は救急医療の中核で、救急医療の根幹が揺らぎ始めている実情が浮かんだ。
調査は47都道府県の救急医療担当課を対象に実施し、昨年1月以降に輪番制から離脱した病院の数などについて尋ねた。
その結果、都道府県が医療計画などに基づき区割りした394地域のうち9割以上の372地域で輪番制を実施しているが、高知県で17病院、鹿児島県で7病院、愛知県で5病院など、各地で輪番制からの離脱が相次いでいた。厚生労働省によると、輪番制に参加する2次救急病院は昨年3月末現在で約3000病院で、ここ1年で約2%減少したことになる。
高知県の17病院の離脱は、幡多地域(四万十市など6市町村)で輪番制自体をやめたためだった。四万十市保健介護課によると、04年度には輪番制を委託する幡多医師会に約3000万円を補助した。国と県が3分の1ずつ、残りを市町村が人口割りで負担していた。
しかし、05年度から救急医療に対する国庫補助が一般財源化され、市町村が補助金を全額負担することになった。05年度は各市町村で1000万円を出し合ったが、今年度は財源不足などで中止に追い込まれ、救急患者は県立と四万十市立の2病院で対応せざるを得なくなった。同課は「補助を続けたいが、自力ではできない」と説明する。
輪番制から離脱する病院があると、他の病院の負担が増える。栃木県の芳賀地域では、芳賀赤十字病院(真岡市)が医師減のため昨年4月から、週6日だった当番日数を、少ない時で週1日まで減らした。その影響で、負担が重くなる他の病院が輪番を抜けた。当番病院のない空白日が、多い時で週6日も生じ、他地域の大学病院への患者搬送が必要になった。救急医療体制は多数の病院の参加で成り立っているが、医師の分散配置にもつながり、その弱点を医師不足が直撃している。
救急医の確保状況については、18県が「困難」、24都道府県が「やや困難」と回答した。「問題なし」などと答えたのは5府県にとどまった。
国に対しては「救急病院に対する診療報酬の増額」(北海道)や「医学部の定員増」(島根県)、「医師の地域偏在の改善」(静岡県)などを求める声が出ている。【まとめ・鯨岡秀紀】
◇2次救急病院の輪番制 休日や夜間に入院の必要な救急患者の診療体制を確保するため、地域ごとにその日の当番病院を決める制度。東京都など病院が多い大都市では、参加全病院が毎日、当番を務める場合もある。
毎日新聞 2006年5月4日 3時00分
まずもってこの国の厚生官僚は,算数が出来ない。全国平均で医師が余っていると試算を出し,全国医学部の学生数を削減した。10年ほど前からその流れは始まっていた。
今頃になって医師不足と報道される。そりゃそうだろ入学者(全員が国家試験に通り,現場で働くわけではないにしてもそれは数パーセントだろう。)を減らして,高齢の医師が引退,女子学生が医師になり過酷な労働環境で辞めていく。
文部省と厚生省がきちんと試算を出してないかもしれないが,医師免許の数と実際に現場でフルタイムで診療を行う医師数は合わないはずだ。
医師免許数だけを数字で取り上げても実情を反映していないのは,小学校2年の算数のレベルだ。
またマスコミは医局を白い巨塔で古い封建的な制度だと叩いた。確かに問題も多い制度だ。
しかし日本の社会主義としか言えない医療政策の中で医局制度は有効だったことも確かだ。
地域の病院へ医師を派遣していた側面は大きい。では医局制度をつぶした今,誰が責任をもって地域の病院へ医師を派遣するのだろうか。各都道府県はどうやって医師を確保するのだろうか?
厚生省は背景にある問題は見ないふりをして,病院で医師定数を決めた。それを保険収入に直接増減する仕組みとした。
定数の足りない病院は医局の大学院生のアルバイトや名義貸しを行った。監査する各県も黙認していた。
しかし通常は名義貸しと言っても夜間や休日の当直などは行っていた。官僚が日頃考えているような理事職に天下り何もしない名義貸しではない。大学院生は収入がないのだ。アルバイトと名義貸しが必要悪で行われていた。
(正しいことでないことくらいは誰でも知っている。しかし・・・)
厚生省が新研修システムを改革した。医局に頼らず医学生が自分で研修先の病院と契約を結び2年の研修を行う,きっとアメリカ式の研修システムを考えているのだろう。
おかげで,人気のない大学病院は研修医が入ってこない。派遣した医師を医局に戻さないと自分たちの医局自体が機能しない。
医局とは医師の研修指導であり,研究論文執筆の指導をするところであり,医師にとって大切な情報交換の場でもある。
(決して必ずしも良いシステムとは言わないが,日本的な良さもあったはずだ。自民党の派閥とは意味合いが異なる)
結果,地方で僻地であればあるほど医師の派遣が難しくなる。
産婦人科医不足の問題でもこの医師不足(偏在)の問題が露骨に出ている。
日本の医師教育を大学だけに押しつけ,医局制度をつぶすとこうなることは業界の事情を知っている者なら誰でも分かっていたことだ。
これこそ構造改革のお陰なのでしょうか。
入院が必要な救急患者を交代で受け入れる「輪番制」に参加する2次救急病院のうち、医師不足などで輪番制から離脱した病院は昨年1月以降だけで24道府県の63病院に上ることが、毎日新聞の調査で分かった。42都道府県は救急医確保の困難さを訴えており、自治体の財源難を理由に輪番制自体を中止した地域もある。救急病院を初期から3次に区分する体制の中、重篤な患者以外の入院を受け入れる2次病院は救急医療の中核で、救急医療の根幹が揺らぎ始めている実情が浮かんだ。
調査は47都道府県の救急医療担当課を対象に実施し、昨年1月以降に輪番制から離脱した病院の数などについて尋ねた。
その結果、都道府県が医療計画などに基づき区割りした394地域のうち9割以上の372地域で輪番制を実施しているが、高知県で17病院、鹿児島県で7病院、愛知県で5病院など、各地で輪番制からの離脱が相次いでいた。厚生労働省によると、輪番制に参加する2次救急病院は昨年3月末現在で約3000病院で、ここ1年で約2%減少したことになる。
高知県の17病院の離脱は、幡多地域(四万十市など6市町村)で輪番制自体をやめたためだった。四万十市保健介護課によると、04年度には輪番制を委託する幡多医師会に約3000万円を補助した。国と県が3分の1ずつ、残りを市町村が人口割りで負担していた。
しかし、05年度から救急医療に対する国庫補助が一般財源化され、市町村が補助金を全額負担することになった。05年度は各市町村で1000万円を出し合ったが、今年度は財源不足などで中止に追い込まれ、救急患者は県立と四万十市立の2病院で対応せざるを得なくなった。同課は「補助を続けたいが、自力ではできない」と説明する。
輪番制から離脱する病院があると、他の病院の負担が増える。栃木県の芳賀地域では、芳賀赤十字病院(真岡市)が医師減のため昨年4月から、週6日だった当番日数を、少ない時で週1日まで減らした。その影響で、負担が重くなる他の病院が輪番を抜けた。当番病院のない空白日が、多い時で週6日も生じ、他地域の大学病院への患者搬送が必要になった。救急医療体制は多数の病院の参加で成り立っているが、医師の分散配置にもつながり、その弱点を医師不足が直撃している。
救急医の確保状況については、18県が「困難」、24都道府県が「やや困難」と回答した。「問題なし」などと答えたのは5府県にとどまった。
国に対しては「救急病院に対する診療報酬の増額」(北海道)や「医学部の定員増」(島根県)、「医師の地域偏在の改善」(静岡県)などを求める声が出ている。【まとめ・鯨岡秀紀】
◇2次救急病院の輪番制 休日や夜間に入院の必要な救急患者の診療体制を確保するため、地域ごとにその日の当番病院を決める制度。東京都など病院が多い大都市では、参加全病院が毎日、当番を務める場合もある。
毎日新聞 2006年5月4日 3時00分
まずもってこの国の厚生官僚は,算数が出来ない。全国平均で医師が余っていると試算を出し,全国医学部の学生数を削減した。10年ほど前からその流れは始まっていた。
今頃になって医師不足と報道される。そりゃそうだろ入学者(全員が国家試験に通り,現場で働くわけではないにしてもそれは数パーセントだろう。)を減らして,高齢の医師が引退,女子学生が医師になり過酷な労働環境で辞めていく。
文部省と厚生省がきちんと試算を出してないかもしれないが,医師免許の数と実際に現場でフルタイムで診療を行う医師数は合わないはずだ。
医師免許数だけを数字で取り上げても実情を反映していないのは,小学校2年の算数のレベルだ。
またマスコミは医局を白い巨塔で古い封建的な制度だと叩いた。確かに問題も多い制度だ。
しかし日本の社会主義としか言えない医療政策の中で医局制度は有効だったことも確かだ。
地域の病院へ医師を派遣していた側面は大きい。では医局制度をつぶした今,誰が責任をもって地域の病院へ医師を派遣するのだろうか。各都道府県はどうやって医師を確保するのだろうか?
厚生省は背景にある問題は見ないふりをして,病院で医師定数を決めた。それを保険収入に直接増減する仕組みとした。
定数の足りない病院は医局の大学院生のアルバイトや名義貸しを行った。監査する各県も黙認していた。
しかし通常は名義貸しと言っても夜間や休日の当直などは行っていた。官僚が日頃考えているような理事職に天下り何もしない名義貸しではない。大学院生は収入がないのだ。アルバイトと名義貸しが必要悪で行われていた。
(正しいことでないことくらいは誰でも知っている。しかし・・・)
厚生省が新研修システムを改革した。医局に頼らず医学生が自分で研修先の病院と契約を結び2年の研修を行う,きっとアメリカ式の研修システムを考えているのだろう。
おかげで,人気のない大学病院は研修医が入ってこない。派遣した医師を医局に戻さないと自分たちの医局自体が機能しない。
医局とは医師の研修指導であり,研究論文執筆の指導をするところであり,医師にとって大切な情報交換の場でもある。
(決して必ずしも良いシステムとは言わないが,日本的な良さもあったはずだ。自民党の派閥とは意味合いが異なる)
結果,地方で僻地であればあるほど医師の派遣が難しくなる。
産婦人科医不足の問題でもこの医師不足(偏在)の問題が露骨に出ている。
日本の医師教育を大学だけに押しつけ,医局制度をつぶすとこうなることは業界の事情を知っている者なら誰でも分かっていたことだ。
これこそ構造改革のお陰なのでしょうか。
もっとも,大学病院自体が,相当の重症例しか診なくなっているし,それゆえ症例がどうしても限られてくるので,学者志望でなければ大学病院に残る価値がないとも言えるんじゃないかな。患者(患畜の飼い主も同様)はアホだから大学病院へ行けば偉い先生の治療が受けられるなんて単純に考えてるみたいだけど,そんなに単純なもんじゃないんだけどねぇ……。私は人間の医者やないから,突き放して見ているのかも知れないけど。
どっちにしても,高知県のように中核病院のような救急病院がない,というのは問題だなぁ。医者が足りなくなることも,十分に分かってたはずなのにね。その上「ゆとり教育」だなんだと,子供たちの学力さえ根こそぎ奪っておいて,今更なんだって感じです。はい。
国立大学在籍の研修医はいま、勤務医を数年されておられる医師よりも収入がいいと聞いています。
その制度を作ったのは、研修医の過労死が立て続けに起こったからだったと覚えている。
それゆえに、研修にのみ専念できるようにと所得が増えた。
そしてアルバイトをしなくなった。
ということは、輪番の番をする、新人さんがいなくなってしまったから回らなくなったんでしょう?
やっぱりいろいろ施策を行なうと、どこかに歪は出てくるものなのではないでしょうか。
と、わたしは感じましたが。
(それと、申し訳ありませんが、患者をアホと表現するのはやめてほしいです)
それに研修医と言っても,現在は2段階に分かれてるのです。まず卒後2年間はスーパーローテートと言って,一般臨床7科を一通り学びます。もちろん,この間はアルバイトなんてできるはずがない。これは国立だろうと公立だろうと私立だろうと同じで,法律で決まっているのです。
また,スーパーローテートが終わった後の,本来の意味での研修医(レジデント)も,専門医資格を得るための勉強に追いまくられます。だからアルバイトをしなくなったのではなく,する余裕がなくなったというのが正確です。
とりあえず,誤解されているようですので。
P.S. 私も「患者」の一人ですけど? 勝手にケンカをふっかけないで下さいね。
なかまた先生
「いなか小児科医」のbefuです。
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厚生労働省の方針を続けると、地域医療は崩壊しますね...
(ashiyu)さん 新研修システムでは研修医がアルバイトを出来ないようにする代わりに給料をきちんとだすようです。それでも年収500万は出てないと思いますよ。月に20万から30万という所じゃないですか。それから税が引かれ・・・・
いつもは毒を吐かれていても知らんふりしてたけど、度が過ぎます。
何でも知ってらして、すごいですね。
それからなかまた先生、研修医のお給料のお話は、実際に大学病院の先生にお聞きしたので間違いは無いと思います。
研修医のときに煮え湯を飲まされ、やっと一人前になったと思ったら研修医よりお給料が低いって若手が怒ってたと聞きましたから。
まあ、そういう下世話な話はいらないのでしょうけれど。
わたしには大切な話。
自分の息子が過労死しないために、ありがたい制度を作っていただいたと思っておりますわ♪
それと,なかまたさんが補足してくれたように,人間の医者の場合は卒後研修時から,確かにスズメの涙ですけど,一応病院から給料が出ます。自治体立の場合なら地方公務員扱いとなるわけですね。
# ちなみに私は人間の医者じゃなかったので,予備校教員しながら,臨床研修を受けました。獣医師には研修中も給料が出ないからです。薬剤師の場合は病院勤務となって病院薬剤師や管理薬剤師の資格を取ろうとすれば,病院から給料が出ます。ただ,一般のドラッグストアなんかで単なる売り子になったり名義貸しなんかをすると,単なる高給取りだけで舞い上がって後でひどい目にあったりしますけどね(笑) いわゆる「薬剤師ジプシー」がそうです。
それから,ashiyu さんが「大学病院で聴いた話」というのは,世代によって違うんじゃないかな。昔の「白い巨塔」時代の話のような気がします。
まぁ,私も過労死寸前で命を救われた技術屋ですけど,人間の医者はまだ恵まれている方だとマジで思いますよ。それならどうして医学部中退したの,って言われたらおしまいですけどね(笑)
今、時間がないので、いずれ補足のコメントをします。
kさんもaさんも日頃のコメントを読んでいると、本blogで言いたいことの真意は良く伝わっていると思うのですが、kさんのコメントは時にブラックジョークや表現が相手をフォローするつもりでも逆になるような文体となることがあるようで、かなり誤解されそうで気になります。
また、相手が見えないネットでのコミュニケーション上の特質で部分が全体にひっくり返ってしまうこともあります。これまでも、出来るだけコメントは削除してませんし、そのつもりです。
blogをお持ちの方同士でしたら、出来れば、互いのblogでやりとりすることが、本blogを御覧の他の方のためにはよろしいかと思います。
単に勘違いの指摘や、新しい情報の提供などは当然構わないのですが。
いずれ、補足をと思ってます。あしからず。
わたしはそんな気全然ないんですけどね。
わたしはわたしの意見を述べるだけ。
それのみです。
自ブログでもやりあうつもりはありませ~ん。
読者の皆様、申し訳ありませんでしたm(__)m
補足:5年前までは研修医のお給料は確かにすずめの涙14~5万円でした。その頃の研修医ご本人からお聞きしました。
現在は、金額ははっきりとは知りませんが、研修医時代に14~5万円しかいただけなかった医師のいまのお給料よりも研修医の方のお給料の方が多いということは、大学病院の医師から病院内でこの耳でしっかりとお聞きしました。
これ以上は、この件に関してコメントはいたしません。失礼いたします。
国会中継で民主党議員が医療崩壊元年だと発言していました。
まさに健康格差社会と近藤氏がのべているように、東京で経済が安定し上場企業がどんどん史上最高益を出していることと地方では商店街がシャッター街になっていることとダブってしまいます。