美と知

 美術・教育・成長するということを考える
( by HIGASHIURA Tetsuya )

高見 順

2007年05月18日 | 私の本棚


詩集『死の淵より』は高見 順の最後の作品として昭和38年、講談社より発行された。(写真は講談社文庫)
『三十五歳の詩人は』高見順の全詩集より、各時代を代表する作品158編が納められている。(中公文庫)

 
 詩集『死の淵より』は、高見順が食道ガンと戦いながら、少しずつ、少しずつ、それこそ身を削りながら書いたものといわれています。 その行為は昭和の文士高見順の生き様そのものであり、書くことへの情熱だったのだと思います。
 迫り来る死の影に立ち向かい、打ちひしがれ、だけども、自分を見つめ続けた詩人の心は、時を越えて心に響きます。
 大学生の時にこの詩集に出会った時、溢れ出る涙が止まらなかった記憶が今でも蘇ります・・・



(詩集より)

 帰れるから
 旅は楽しいのであり
 旅の寂しさを楽しめるのも
 わが家にいつかは戻れるからである
 ・・・
 この旅は
 自然へ帰る旅である
 ・・・



 ・・・
 何か赤いものが見える
 花ではない もっと激烈なものだが
 すごく澄んで清らかな色だ
 手あかのついた悲しみを
 あすこに捨ててこよう




 ・・・
 さよなうなら
 もう発車だ 死へともう出発だ
 さようなら
 青春よ
 青春はいつも元気だ
 さようなら
 私の青春よ





 たえず何かを
 望んでばかりいた私だが
 もう何も望まない
 ・・・
 もう何も望まない
 すなわち死も望まない





 一生の間
 一度も開かれなかった
 とざされたままの部屋が
 おれの心のなかにある
 今こそそれを開くときが来た
 いや やはりそのままにしておこう
 その部屋におれはおれを隠してきたのだ








死の淵より (講談社文芸文庫)
高見 順
講談社

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三十五歳の詩人 (1977年) (中公文庫)
高見 順
中央公論社

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