讃歌 (朝日文庫) | |
篠田 節子 | |
朝日新聞出版 |
若き日に、天才少女としてヴァイオリン・コンクールに入賞するほどの実績を積んでいたが、その後厳しいプロのレベルで挫折したバイオリニスト柳原園子。精神的に打ちひしがれ、自殺未遂をはかり、結局その後遺症で20年という時間が失われる。
40歳を過ぎ、教会でギターを伴奏に奏でていたヴィオラ。
その演奏が、一人のTV番組制作ディレクター小野の心を捉える。
「天才だ、と思った。世の中には、無名のまま、一部のファンだけを相手にひっそりとコンサートを開き、自分の素晴らしい音楽を一般の人々に聴かせることもなく終わっていく埋もれた天才がいる・・・」CDで聴いた世界最高峰の演奏家が弾く同じ曲には何の魅力も感じなかった・・・
小野の企画でTV番組に取り上げられたことで、柳原園子のCDは爆発的に売れていくが、一方でバッシングも噴出する。
クラシックの演奏家としての実力の壁を越えられなかったこと・・・
それでも演奏が大衆に受け入れられてしまうこと・・・
芸術の本来の価値とは・・・
TV番組制作の裏側も描かれ興味深い。
大きな問題提起を感じる小説である。
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