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なにぬネコ書店

詩とか、日記とか  (榎本初=えのうい)

光冠舞台〈コロナステージ〉

2005-07-15 01:07:04 | 詩を書く
 太陽に染め抜かれた帆布のトートバッグを見つけることから始めなければならない。ファスナーが壊れた革の鞄を部屋に置いて、街のどこからか上がる花火の音を頼りにして、鞄作りを始めてから百一年目の職人の家を探して、歩いて、職人の頬は真っ白な髭を蓄えているに違いない、なんて訳もなく想いながら歩いていく。
 やがて日蝕が始まる。黒い砂時計。黒い砂が太陽から時間を奪っていく今、全てを曝け出すところから出発しなければならないのに、曝け出せるような実体などないのだ。ただもがいている虚ろな肉体。朽ちることすら許されない。朽ちることすら幻。職人は何処にいるのか。真っ白な髭は闇を知らない、そう信じて、空へ耳を澄ます。花びらが開く音を見つけて、白い大輪の花が街を抱いていく。黒い太陽が戴く冠、100万℃の真珠。
 街を歩いて百一年目、僕は帆布を太陽で染め上げて、鞄を作り上げる。たっぷり入るトートバッグでなければならない。百万語に及ぶ台詞を詰め込んで、祈りが吹き込まれた肉体、銀河に名を馳せる名優がダイヤモンドの王女に逢いにいくのだから。



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 「存在」というテーマで書いてみました。

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らいおんのヒゲ

2005-06-19 23:59:59 | 詩を書く
みかづきの夜には
きっとどこかに
月のかけらが
落ちてるにちがいない

でも
月のかけらが落ちてるばしょを
誰にもきくことができなくて

見つけられないまま
たずねられないまま
信じることもできなくなって

今は
みかづきにぶらさがってみたい
なんてことも思わない

ミニクロワッサンのほうが
げんじつてき
3つで105円

本当のことを言うと
僕が大好きなのは
らいおん

とどかない月じゃなくて
僕が立ってるおんなじ地球で
ほえてる
らいおん

王さまのヒゲ
おおぞらへ伸びてけ

虹へ飛べ

2005-06-15 23:59:59 | 詩を書く

『近づく湧泉 第2集』の参加者による巡回吟が進んでいる。巡回吟とは3人以上で回す四行連詩のことで、ナカネコ!の掲示板で行われているのもこの巡回吟である。

先日(13日)、編者の一人である田部武光さんからの手紙が届いた。巡回吟は田部さんを中継点として名前の五十音順につないでいる。この度の手紙は、私の番が来たことを告げるものである。

というわけで、2か月ぶりに詩作に励んだ。
付言しておくと、「とるまりんとん」は(これが詩かどうかはさておき)以前書き溜めていたものを小出しにしていたわけで、その書き溜めも尽きた現在、「とるまりんとん」は休止状態である。

私の後の方がどうつないで下さるのか、それは後日のお楽しみ。完結のあかつきには「詩と思想」誌に掲載して頂ける内諾を得ているそうである。


数多の太陽から生まれた花の鼓動を
濡れた土の匂いの中から掬いあげて
天弓が伸びていくほうへ歩いていく
蒼穹へ放つ矢の花をかざすパレード

六月のスクランブルエッグ

2005-06-11 01:10:32 | 詩を書く

青青として空は笑いクリーム色のジャケット
風に惹かれて橋の上誰も振り向かないで眩暈

生きていると寂しいこともあるんだよね青空
届かないんだよ指の先遠いんだよ遠いんだよ

街濡れて傘の彩滲んでいくの待ち侘びた瞼に
紅く擦れて傷い白いハンカチ覚えていますか

哀しみが伝わるのであって想いは伝わらない
ただ僕が回っているだけ馬鹿野郎じゃないか

紫陽花の葉陰をバガボンド蝸牛が歩んでいて
もう行かなければならない遠くない夏へ雷鳴

虹晴れ

2005-05-18 23:59:59 | 詩を書く
 萌えわたる白詰草が濡れて、空に滲んでいる。
 少年はしゃがんで、頬を微かに丸くして赤くして、膝小僧の土を両手で払う。雨垂れがひとしずく、左手のくすり指の爪を濡らす。空が心に染みて、染みていき、涙を結んだプラチナが翔けめぐり脈動を打ち鳴らす。眼差しの行方を惑わすようにして広がる白い波が、紫色に始まる七つの花を見つける。白い涙に告げる、花の場所を。花は、太陽が生まれる前から、少年が抱いている。
 しなやかに虚空を振り抜くタクトの先に響く、ファンファーレ。   (2004.5.28)