なにぬネコ書店

詩とか、日記とか  (榎本初=えのうい)

空へ伸びて

2017-06-01 04:50:15 | 詩を書く

 藤の花が朶れていて咲いていて、光が空へあふれていた。茜色の雲が街路樹と語らいを始める頃に、ワイングラスに揺れる葡萄色の傍で微かに頬を染めた君は、空が好きだと言った。
 夜独り。珈琲を淹れる。一匙の砂糖。グールドが奏でる変ホ長調の間奏曲は何も語らない。ただ流れているだけであり、ただ想うだけであり。
 空が好きだと君は言った。