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なにぬネコ書店

詩とか、日記とか  (榎本初=えのうい)

とるまりんとん 7

2006-05-31 15:26:36 | とるまりんとん

尻尾のリボンで
青空をくすぐりながら
太陽を独り占めにする
とるまりんとん

2つくしゃみをして
とるまりんとん
鼻と尻尾を結ぶ線を軸にして
クルッと体を半回転
4つの足を下に向けてゆっくりと
ゆっくりと
地上に降りてきた

何ごともなかったかのように
いつもと同じように
小豆のような瞳を精一杯キラキラさせながら
ブゥブゥブォブッブゥのシャワーを出しながら
僕のほうへ駆け寄ってきた
とるまりんとん

僕はあわてて
ポカンとあけていた口をとじた
5人と6匹の口はまだ
ポカンとあいたままだ

(つづく)

とるまりんとん 6

2005-09-07 14:48:35 | とるまりんとん

ブタガブットンダブタガブットンダ
ブタガフトンダフトンガフットンダ
ブタガブッタンダフタガブットンダ
ブタガフットンダブタガブットンダ
なんてカタカナが僕の頭の中をかけめぐる

おかしいのは
あお向けになって足をバタつかせながら飛んでいるところ
へたくそな背泳ぎを見ているようで
だけど
おぼれることなく
いや
おちることなく
飛んでいる

僕たちより先に公園に来ていた5人の人と
6匹の豚(双子豚がいたのだ)
合わせて11の口が
空に向かってポカンとあいていた
僕もあわてて
空に向かってポカンと口をあけた

公園のブランコが揺れていた

(つづく)

とるまりんとん 5

2005-07-06 13:40:27 | とるまりんとん

さて
公園デビューである

今日が大安であることを確かめると僕は
とるまりんとん
を金魚蜂から取り出して
尻尾にリボンなんぞを結んであげて
シャツの胸ポケットにほうりこんだ

梅雨の合い間の晴れた空の下
公園に向かう道で小さな水たまりをのぞきこむと
太陽がまぶしくてポケットに顔を隠した
とるまりんとん
黄色いからだがほんのり赤くなっている
豚も緊張するのだな
と小さな発見の喜びにひたったのもつかの間
僕が公園に足を踏み入れるやいなや
とるまりんとん

飛んだ

(つづく)

とるまりんとん 4

2005-06-03 11:15:56 | とるまりんとん

餌は1日2粒のドッグフードで十分だった
あとは10ccの水を与えておけばよかった
リーズナブルわんワンダフル

さて
1週間ほど過ぎた頃には
とるまりんとん
と呼ぶと小豆のような瞳を精一杯キラキラさせながら
ブゥブゥブォブッブゥのシャワーを出しながら
僕のほうへ駆け寄ってくるようになった
ブゥブゥブォブッブゥのシャワー
僕のちっぽけな脳ミソがいつの間にやら
マイナスイオンの海にゆるろゆりゆら浮かんでいた

ある日ドッグフードを切らしていた
代わりに2粒のキャラメルを与えた
パワフル走る600メートル

(つづく)

とるまりんとん 3

2005-06-01 09:09:09 | とるまりんとん

トルマヴォコフォンフォン・ドチュニヌネーグフ・ナニャリントン
と呼んでみたが僕のほうなど見向きもしないで
ただ金魚鉢の中を左へ右へ駆けまわっていた
そう
トルマヴォコフォンフォン・ドチュニヌネーグフ・ナニャリントン
こんな長くて舌がでんぐり返しそうな名前を豚が覚えられっこないのだ
そう
豚の記憶力は7文字が限界なのだ
と僕は勝手に決めつけてしまって
とるまりんとん
という名前に決めてしまった
とるまりんとん
とひらがなで書くことにしたのは
豚はひらがなしか読めないからである

(つづく)

とるまりんとん 2

2005-05-31 00:31:31 | とるまりんとん

高級牛革と生ハム爺に別れを告げて帰宅すると
僕は部屋の隅に転がっていた金魚鉢を
さっきまで財布が置いてあった炬燵の左隅に置いて
その中へ豚を放りこんで眺めていた
尻尾に薄いピンク色のリボンいや紙切れが結ばれていた
軽く握った掌の中で豚は脚をバタバタ
僕は尻尾からほどいた紙切れを開いた

 この度は
 トルマヴォコフォンフォン・ドチュニヌネーグフ・ナニャリントンを
 お買い上げいただき、ありがとうございます。
 フルネームで呼ぶと泣いて喜びます。
 なお、当商品はトルマリン喉ぼとけ仕様のため、
 喉から発せられるブゥブゥブォブッブゥのシャワーには
 マイナスイオンによる癒し効果がありますが、健康のため
 ブゥブゥブォブッブゥのシャワーの浴び過ぎに御注意下さい。

ルバルトヴッチ・チョチョガノフのフルネームは
もっと長いらしいが
そんなことはどうでもいい

(つづく)

とるまりんとん 1

2005-05-30 01:28:03 | とるまりんとん

近頃巷では豚を飼うのが流行りだ
と聞いた僕は躊躇うことなく肉屋へ足を運んだ
豚1匹くれ
と声をかけると
生ハムのような肌をした肉屋の爺〈おやじ〉は
掌サイズの黄色い豚を秤に載せた
12g360円の液晶表示の上で駆けまわる豚
僕の高級牛革財布には327円だけ
しょうがねえなあ
と言いながらも生ハム爺の顔はニコニコ笑っていた
僕の掌には黄色い12gと8枚の硬貨が残った

(つづく)