ぼくにとって、20年以上ぶりくらいによい映画を観た。ずいぶん前の映画だから、今更と思う方もいるだろうが、ぼくにとっては初めてのことだ。
「鑑定士と顔のない依頼人」という映画だ。観終わったあと、監督を調べたら、監督脚本はイタリアの人であった。イギリス映画だと思って観ていたのだが、どうやらユーロ映画というべきなのだろう。
この映画の何が素晴らしかったかというと、老年期に入った主人公の権威ある鑑定士に若い女性から鑑定依頼の電話がある。この若い依頼人とともに物語は進んでいく。映画途中には収集した女性の肖像画もいっぱい出て来る。
惜しむらくは、結末の意外さにびっくりと感動があるため、何度も観る映画にならないのではないか、と思ってしまうことだ。
それにしてもよい映画だった。自分の中でベスト10の映画に入ってしまった。
ドクトルジバゴ、ライアンの娘、ゴッドファーザー、砂の器、そしてこの映画。齢を重ねないとわかりにくい心理というものがある。すべてのことにそれを理解する前提がある。
ぼくにはこの映画と出会い、良いと思ったのは脚本家の想像力が理解できる前提があったのだろう。顔を出さないパニック症候群の若い女性が初めて顔を見せる場面は圧巻であった。
この前観た「プロメテウス」は「凄い」というものだった。アキ-カリウスマキの「ルアーブルの靴磨き」は「不思議な善良さ」だった。
この頃映画をよく観るので、良い出会いもあるというものだ。