25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

妻への家路

2015年11月17日 | 映画

 チャン・イーモー監督んl「妻への家路」を見た。月曜日は見るべきテレビ番組がないのである。この監督の「生きる」「初恋のきた道」「上海ルージュ」はとてもよかったので、期待して見た。

  中国の文化大革命で、大学の教授をしていた夫が下放された。妻は高校の教師である。それを「コン・リー」が演じている。夫婦にはバレエをしている娘がいる。主役を争っている。そんな中 、父親(夫)が脱走し、妻に会いたいと書き置きを残して逃げた。妻は夫が指定した場所に向かうが、娘が主役をとりたいと思い、密告してしまう。しかし娘は右派の娘だからと主役にはなれなかった。母と娘は別れ、娘はバレエをやめ縫製工場で働いている。

 文化大革命が終わる。20年の下放から、職場復帰ができるのだが、家に帰ってみると、妻は待ちわびた夫の顔を覚えていない。妻はそれでも毎月夫が帰える5日には、ボードに夫の名前を書いて出かけていく。

 夫は同じ団地の一階に住み、妻が思いだすような手掛かりをさがす。写真はみな娘が切り取ってしまっている。親戚を訪ね、妻も入った写真を手に入れる。写真をみれば夫とわかるのだが、20年経った今目の前にいる男は別人だと思う。ピアノが好きだった夫は調律の勉強をして、調律師として家を訪れ、よく妻に聴かせた曲を弾くが、これも失敗する。

  夫が送れずに書きためた手紙を読む、代読人となり、自分の書いた手紙を読み聴かせる。「娘を裏切ったと思わないで」とも書いてあった。妻は夫の手紙に従い、娘と和解し、一緒に暮らすようになる。夫は代読人として通い続ける。

  数年が過ぎる。なおも5日になると、夫を迎えに代読人といく。人との交流をやめ、認知症になった、と今なら言えるのだろうが、記憶喪失の一種だと思っている。愛する夫、愛する妻の情景を丹念に描いた名作であった。