
天気に恵まれた週末は、奥会津の深い原生林に包まれた山々を巡って来ました。
初日(土曜日)は、奥会津の山でも比較的人気のある本名御神楽、
そして県境をまたいだ御神楽岳でした。
美しい清流と、生き生きとした手付かずの原生林、
厳しい気候によって造り出された切れ落ちるスラブ状の岩壁。
そのどれもが素晴らしく、心に強く残る山行となりました。
10月18日(土)
例によって魚河岸並みの早朝(というか夜中)に自宅出発。
深い靄に包まれた只見川に到着したのは5時頃。
本名ダムから本名御神楽登山口へ至る林道は、地元では「三条」と呼ばれていました。
その昔、林道の途中に「三条集落」があり、その名残のようです。
あまりに雪深い地域で、集落の人は秋に大量の食材を買い込み、
冬季はほとんど外には出て来なかった、そんな所だったようです。
下山後に地元のご老人に「まだ小学校はあったか?」と聞かれましたが、
確認できたのはもう随分以前に放置された古い古い墓地だけでした。
そんな三条集落跡地を過ぎ、登山口少し手前の駐車スペースに到着。
4WDであれば登山口まで乗り入れできたのですが、
家の車では橋を渡ってすぐの砂利で空転してしまい先に進めませんでした。
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手前の駐車スペースから登山口までは、ゆっくり歩いて15分ほどでした。
ここから薄暗く湿り気のある、ほぼ平坦な登山道を進みます。

6:47八乙女ノ滝。
山を歩くものだけが見ることのできる、深い森の中を流れる神秘的な滝でした。

少しばかりの鎖場を抜け、

しばらくは美しい清流沿いを進みます。

足場がやや悪いように見えますが、
あちこちに鎖が付けられているので安心感がありました。

登山道に咲いていた白い花。

7:20八丁洗板。
思わず水遊びしたくなるような、足首ほどの浅いナメ沢が続いています。
静かに流れる清らかな沢は、なんとも神秘的です。
やがて尾根道に入ると、これまでのノンビリとした渓流沿い歩きは一変!

かなりの急登を延々と歩かされます。もう10月も半ばだというのに汗ダラダラ。

気が付けば周囲は紅葉ゾーンに突入していました。

足元にも。

いつの間にか足にはたくさんのトゲトゲボールが!
8:28杉山ヶ崎に到着。
ここからパッと視界が開けます。

尾根を彩る黄葉が眩しい。

これから向かう本名御神楽が右手に見えました。

そして、まったく表情の違う左手の険しい山肌。

あまりに紅葉が綺麗で、

ぜんぜん先に進めなくなってしまいました。
紅葉に見とれている足元には・・・
・・・!?

マムシくん。
マムシくんも、紅葉を眺めてたんでしょーか。

9:06熊打場。
なるほど視界の開けるこの場所なら、ムカダテが指示を出すのに最適。
マタギ衆が熊狩りするのに好立地だったのかもしれない。
ここから鎖場が続きます。

鎖場が紅葉に彩られ、花道のようになっていました。
おそらく日本でも指折りのメルヘンチックな鎖場でしょう。

では、メルヘンの世界を参りましょう。ずんずんと。

天まで上れ~、どこまでも~。

振り向けば、歩いて来た尾根道がすっかり見渡せます。
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10人ほど泊まることができそうな広さのある、しっかりとした造りの小屋でした。
小屋内には薪ストーブ、薪、灯油、たくさんの毛布、銀マット、
トイレットペーパー、のこぎり、鍋、サンダルなど、備品もいたれりつくせりで、
大事に管理されている感があり、ここには根強い愛好家がいるのかな、と思いました。
ただ、こちらの小屋にも使用済みトイレットペーパーを持ち帰らないヤカラがいるようで
黒板には、それに対する苦言が記されていました。
何度も、しつこく言っちゃうよ~
良い子の皆は、NGSの後は必ず
トイレットペーパーは持ち帰ろう!
使用済みの紙を山に置き去りにしたら、
後々、妖怪「糞拭き戻し」が、あなたの家にあらわれて
夜中、寝ている間に、置き去りにしたトイレットペーパーで、
そっと顔を拭いますよ。
ちなみに、この日の宿泊者は少なくとも6人はいた模様。
さらに紅葉に彩られた尾根道を進み・・・

9:54本名御神楽山頂到着!360℃爽快な大展望!

薄っすらと雪をかぶる飯豊の山並みが見えました。

山頂から続く山肌が赤く色づいています。

ここでカップラーメンの大休憩。山で食べるカップラーメンは最高に美味しい!
カップラーメンをすすっていると、
御神楽岳方面の尾根を単独ハイカーさんがひとり、
そしてもうひとり、歩いてくるのが見えます。
やがてこちらに到着すると「あれ?あっちには行かないの?」と。
我家と同じコースで後から来たご夫婦も、
少しの休憩の後、御神楽岳へ足を進めていました。
(奥様にお団子をご馳走になりました、ありがとうございます)
実はこの時点で御神楽岳まで足をのばすかどうか未定だったものの、
どうやら本名御神楽+御神楽岳が定番のコースらしく、
「よし、行こうか!」我家も流れに乗って行くことに。
10:53御神楽岳へ向かって本名御神楽山頂を出発。
ここから細い尾根道を歩きます。

この尾根道が、また良かった。深く切れ落ちた谷の眺めが見事で、
何度も足を止めては見入ってしまった。

ところどころ登山道の崩落箇所があり、足を滑らせないよう要注意。

やがて尾根道が左へ折れると、
目の前には御神楽岳からのびるスラブ状の凄まじい岩壁が
圧倒的存在感を持って出現。
よくよく見ると、その上に登山道が造られているじゃないですか。
ああいうヤセ尾根を「馬の背」と言うけれど、あの馬はヤセ過ぎ。
更によく見ると、その激ヤセ尾根の上を歩いている人がいます。うーむ・・凄い。

11:37御神楽岳山頂到着!山頂には先ほどのご夫婦を含め
5人ほどのハイカーさんがいらっしゃいました。
山頂は360℃の大展望。三角点は、さすがの一等でした。
しかーーし、悲しい事に、これだけの眺望を前にして
飯豊と燧ケ岳と磐梯山以外の山名がわかりません。
一応、展望案内図は山頂にあったものの、見比べてみてもまったくわからない!
が、ここで救世主登場。新潟方面から登って来られた男性ハイカーさんが
山座同定できるガイドブックのコピーを持っていたのです。
図々しくも見せていただくと・・
名前の通り平べったい平ヶ岳、越後三山、男体山もチョット見えた。

大展望に見惚れていると、何やら賑やかな声が新潟方面から響いてきます。
見ると5~6人の中高年ハイカーさんが山頂目指して近づいて来ます。
「あれは、うちの仲間ですよ」と、先ほどガイドブックのコピーを見せてくれた男性。
「テーブルと椅子を山頂まで担ぎ上げて、皆でお酒を飲むんです」との事。

12:07賑やかな山頂をあとに本名御神楽へ戻ります。

この眺めも見納めと、何度も足が止まりました。
その後、本名御神楽山頂で小休止の後、朝と同じルートで登山口へと戻ります。
13:34杉山ヶ崎。ここからは淡々と樹林の中を下るのみ。

14:17八丁洗板まで戻ってきました。

西日が射し込む登山道では、リンドウが花を咲かせていました。
15:05登山口到着!
はじめて歩いた本名御神楽と御神楽岳。
温泉目当てに何度もウロついた湯倉の奥に、これほど壮大で美しい眺めがあったとは、
またひとつ、深い奥会津の姿を見ることができました。
下山後、件の三条集落の話をしてしてくださった地元のご老人に
「今日は熊はいたかい?」と聞かれましたが、
「え、熊なんかいるんですか!?」と聞き返すと、
「何を変なこと聞くんだい、熊がいるのは当たり前」
というような事を仰っていました。どちら様も入山の際は熊鈴をお忘れなく。
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熱い源泉を滔々と掛け流した浴場は、
新しく露天風呂も加わり、とてもいい雰囲気になっていました。
今宵は「道の駅奥会津かねやま」で車中泊。
まだ新しい道の駅で、建物もトイレもピッカピカ。
駐車スペースは広く暗い場所もあり、静かで車中泊には最適でした。
空には落ちて来そうな満天の星空が広がり、天の川もハッキリと確認できました。
さぁ、明日(日曜)は、秋の山開きに向かいますよー。
・ホームページ(はしご湯のすすめ)