・冷凍技術 Freezing technology れいとうぎじゅつ
食品を冷凍すれば長期保存できることは、アラスカのイヌイット(エスキモー)が肉を氷の中で保存していたようです。 近代冷凍技術を生み出 したのは今から僅か250年 ばか り前でスコットランドのウィリアム・カレンWilliam Cullenが1748年に、エーテルを断熱膨張により気化させることで、気化熱を周囲から奪う方法で、水を凍らせる事に成功し冷凍技術の先駆けとなる技術でした。
その後数多 くの食品科学者は冷凍機械の技術開発者らの研究が続けられ行われています。冷凍食品の事業コ ールドチェインの生産と流通を結びつけた のは、ア メ リカの ジェネラル・フ ー ド社(GeneralFood)といわれ 1912年からカナダに滞在中にイヌイット住民が捕獲した魚を 雪に埋めて一50℃に急速凍結し、そ して数ケ月後解凍で、その魚が新鮮で あることを発見して急速冷凍の実験を進め研究して特許 申請 しています。
急速冷凍 という考え方が、その後の冷凍食品の進歩に大 きく貢献 しています。
日本では日本書記(375年頃)の記載から氷室(きむろ)が、そして、今からおよそ1300年前に奈良につくられた国内最古といわれる「氷室跡」が残って4世紀には存在していたと推定していますが、わが国では氷雪の利用は明治に至るま で大衆化していませんでした。
日本の冷凍技術の発展は魚からで漁船に冷凍以前は氷を使って海産物の鮮度の保持をしていました。 緩慢冷凍でしたので、その後には急速冷凍加工を行い流通させる試みが行われていました。東京オリンピック(1964年)で冷凍食品の発展のきっかけとなったのです。 冷凍庫が普及し現在に至ります。
最新の冷凍技術として1)CAS(Cells Alive System)冷凍と2)プロトンProton冷凍、3)凍結含浸法の紹介です。
その方法・原理がそれぞれで、どのようなやり方で、鮮度への影響などはどうなのか調べてみることにしました。
凍結した際の氷結晶を小さくして、凍結時のダメージを小さくするという考え方としています。
その方法・原理がそれぞれで電磁波と磁束の効果により氷の粒子を細かくしたものをいいます。
◇CAS(キャス)冷凍は、世界特許を所得した新しい冷凍技術です。
千葉県にあるアビーが1997年に開発し日本と欧米で特許を有するこれまでの常識を変える技術といわれています。
水を瞬時に凍らせることで氷晶化を防ぎ、磁場エネルギー発生装置より微弱なエネルギーを発生させます。
食材においしさを変質させない為のCASエネルギーを与え凍結する事により、 食品を凍らせる際に水分子を振動させることで、水分の氷結晶化を抑えて過冷却(液体を静かに冷やすと凝固点以下でも凍らないこと)状態を維持します。
温度を下げても水は氷にならず、0℃以下になっても水のままの過冷却水となるのです。
解凍しても通常の急速冷凍物のようなドリップなどは一切流出せず、細胞を無傷に保ち長期間にわたって鮮度を保持することができます。新鮮さとおいしさを冷凍したままで数年の間再現しています。
食の流通だけでなく医学の常識も根本から変えてしまうかもしれない、さらにこの冷凍技術は臓器保存などの医学の分野でも応用し大学などでも研究が進められているようです。
急速冷凍でありCells(細胞) Alive(生きている)Systemの略です。
食材の細胞を全く壊さない急速冷凍装置に「CAS(細胞が生きている」という意味の装置を組み合わせて凍結すると、従来の凍結技術で損なわれていた食材の鮮度、食感、旨味、色、味などを損なわなわずにフレッシュ感を保って生と変わらない高品質な状態で保管、流通できるとしています。
CAS凍結、細胞蘇生システムともいわれます。
従来の冷凍技法による食品の凍結融解に伴う食味の低下を大幅に低減することを可能にしています。
首都圏に約60店舗を展開するスーパーのOKストア、大丸や松坂屋の大手百貨店では、CAS食品の導入がすでに始まっています。
またマグロ漁船にCAS冷凍機を取り付け、すぐに凍結し、鮮度を保つシステムも始まっているようです。
離島などの流通のハンディを抱えた地方では、農業・漁業などの産物が、鮮度を保ったまま都市に輸送でき、第一産業の活性化にもつながっています。岩がきをCAS冷凍し年中旬の岩がきを食べれるようになった等、小さな離れ小島で大量に水揚げされる魚貝類をCASによる急速冷凍し鮮度を認められています。
◇プロトンProton(陽子:一個の陽電子を持つ素粒子のことを意味しています)で凍結すると、ドリップが2%におさえられ解凍後も味が変わらなく美味しく戴けるとのことです。
プロトン凍結法は、菱豊フリーズで1998年の設立で2003年ごろに開発したものです。以前は「ユースフル・フリーザー」と呼ばれていましたがプロトン凍結と名称を変えています。
プロトン凍結とは、急速凍結機内に強力な電磁波と磁束を発生させ、食品の細胞を整列させて凍結することにより、ドリップとしての旨味成分の流出を少なくする技術です。 プロトン凍結後は通常の冷凍庫で保管します。
(株)菱豊フリーズシステムが北海道大学水野工学博士の協力で研究開発を進められた新しい冷凍技術です。
通常の凍結方法では、細胞内の氷の粒が大きくなり細胞が壊れ美味しさが損なわれてしまいますが、均等磁束密度と中波電波、冷風を一体化させたプロトン凍結では、水分子を強力な磁場で整列させ、中波電波で水素原子の結合を阻止します。
その為解凍時に大量のドリップが出ることなく、採れたての美味しさを届けられるとしています。
プロトン凍結の原理として水が氷になる時の氷の生成に影響を与え、微細な小さな氷の核を多数作ることで大きな氷の結晶の成長を妨げています。
結果、食品細胞の破壊を最小限に防ぎ、ドリップ量を少なくしています。
フレッシュで到着するより、安全性が保たれ好きな時に召し上がれます。
旬の刺身の味をキープ、きびなご、生シラス、からすみ、キムチ、そのほかに弁当、ケーキ、柿の葉寿司、いなり寿司、お節、サンドイッチなどに使われています。解凍は、開封せず袋のままで流水で急速解凍か、同じく袋のまま常温で解凍がよく、冷蔵庫などでゆっくり解凍すると生しらすの劣化が進むとしています。
◇凍結含浸法は
広島県立総合技術研究所食品工業技術センター (hiroshima.lg.jp)https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/tg/が2002年に食材の中凍結・解凍と減圧の2つの処理を組合せる新たな発想で酵素等の物質を急速にしみ込ませる技術で、食材の組織を分解する酵素をしみ込ませることにより食材の形を保ったままでスプーンで簡単に押しつぶせ、歯茎・舌で潰せるほど軟らかい食材を作ることができるということです。見た目がよく栄養価の損失を少なくすることができています。
食品には多くの水を含んでおり、野菜や果物では重量の70%-90%、魚・肉などで70%前後、豆・穀類でも10%-20%程度が水分です。
緩慢冷凍の場合、最大氷結晶生成温度帯の0℃~-7℃くらいを通過する時間が長いため、氷の結晶が大きく成長しやすく、細胞の破壊が進んでしまいます。この従来の冷凍方法では食品が周辺部位から冷凍されることにより水が徐々に氷に変わるため、氷が結晶することによる体積の膨張により食品の細胞膜に傷をつけてしまうことになります。
解凍時には、傷からドリップと呼ばれる細胞内の栄養分や水分が流出し、食品の味を落としていました。
おいしく凍らせるためには、「全体を均一に凍らせること」「氷の結晶が成長しないように短時間で凍らせること」「酵素を利用した冷凍」がポイントになります。高齢化社会に、歯の寿命は特に奥歯は60年程といわれ歯を失って形のある料理は見た目がよく期待できるのではないでしょうか。
緩慢な冷凍条件では、氷の結晶が大きく成長するため、一部の病原菌は死滅します。 急速な冷凍では、食品の組織に与える影響は小さくなりますが、病原菌を殺す作用も小さくなるようです。
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