・酸性食品とアルカリ性食品Acid Food and Alkaline Food さんせいしょくひんとあるかりせいしょくひん
体内で代謝が行なわれ酸性とアルカリ性を生じ、人では一般的に弱アルカリ性のphに保たれています。
スイスの生理学者グスタフ・フォン・ブンゲGustav von Bungeによると、肉を食べると含硫アミノ酸が硫酸に変化し、体組織を酸性にするのでアルカリ性のミネラルを摂取する必要があると1890 年頃に提唱し、一時期日本でも酸性・アルカリ性の議論が行われていました。のちに日本では分類は無意味という主張が語られています。
タンパク質中の含硫アミノ酸、メチオニン、システインの酸が骨のカルシウムを流出させるため骨の健康に影響を与え、カリウムを含む野菜や果物のアルカリ化の効果が少ないときカルシウムを損失し骨密度を低下、食事の酸性度が高いほど総死亡及び循環器疾患死亡のリスクが上昇することの報告があります。医学的な研究は、骨や高齢者の筋肉量の保存に関わり、尿路結石、痛風との関係をも示しています。食事の酸塩基バランスを表す潜在的腎臓酸負荷を表す PRALスコアPotential renal acid load (食事の酸性度)という指標を提唱して以来、多くの研究発表がありました。
食事の摂取が不十分の場合には、食事の種類や構成によって血液が酸性に傾くことがあります。また酸性の負荷が高く代謝性アシドーシスを起こす食習慣では骨密度を減らすこと、心血管疾患のリスクを高めます。
動物性たんぱく質による酸性の負荷は、骨粗鬆症の発症に関してカルシウム摂取量よりも重要な要因ではないかとの報告があります。このような過剰な食事性たんぱく質や塩化物、リンといった酸性の負荷に偏り、野菜や果物のようなアルカリ性のミネラルが多い食品をバランスよく食べていなければ慢性アシドーシスAcidosis(酸毒症)のリスクが上昇するということです。
食品の酸性・アルカリ性は、食品そのものではなく、食品に含まれるミネラルが酸性かアルカリ性かを判断します。測定は、食品を燃やした灰を水中に入れて溶出成分を含む水溶液を調製し、その水溶液のpHを計測し pH値は、水溶液中の水素イオンの酸性度を数値化したものです。
酸性を示すミネラルとして塩素、リン、硫黄
アルカリ性を示すミネラルとしてカリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムがあります。
カリウムイオン: 多いと塩味が感じられる
ナトリウム: 多いと塩味を感じさせる
カルシウムイオン: 多すぎると重たく感じる.
マグネシウムイオン:多すぎると苦み、渋みが強くなる
PRAL値Potential renal acid loadの分類では、卵黄やアルカリ分が残っていないチーズは酸性度の最も高い食品とし、野菜や果物はアルカリ性の食品に分類しています。
アルカリ性食品
野菜(ほうれん草、ゴボウ、サツマイモ、ニンジン、里芋、キュウリなど)、果物(メロンなど)、海藻(ひじき、ワカメ、昆布等)、キノコ、大豆製品、梅干し、牛乳など
ナトリウム・カルシウム・カリウム・マグネシウムを多く含む食品です。
牛乳のpHは6.4~7.2程度でヨーグルトで は乳酸菌が増殖しPhは5以下に乳糖を元にして乳酸(有機酸)を作り、乳のpHは4.6のカゼインの等電点に近づき、カゼインからなるチーズでは、熟成期間中に少しずつ乳酸菌が作り出す乳酸も増えpHは減少し、ヨーグルトの様に大きく下がることはなく乳のカルシウムはほぼ全てがカゼインミセル中に留まり、チーズは極めてカルシウム的な食品となります。チーズの製造過程では、とくにカルシウムとリンとナトリウムというミネラルが重要な役割を担っています。
酸性食品は、 食味の酸っぱさではなく、無機質のうち体内で酸を作るP(リン・穀類)、S(イオウ・肉、卵)、Cl(クロール)の多い食品をさしています。食品を焼いて灰が残りその灰が酸性を示すものでありアルカリ性を示すものより多く含むと酸性食品としています。
一般に魚肉、蓄肉、卵にリン、イオウを、穀類にリンを多く含みます。肉類(豚肉、牛肉、鶏肉など)、魚類、卵、砂糖、穀類(米、酢、小麦等)など、砂糖は体内で酸性の乳酸を作り酸性食品に分類しています。
高タンパクに偏りがちな食生活では酸性食品を多量に摂取し、アルカリ性食品が不足しがちになります。
重度の脱水症によって血液が酸性化するアシドーシスが起こります。
2000年代以降、研究によって酸の過剰蓄積するアシドーシスAcidosisには筋肉疲労を逆に防ぐ作用があることを示唆しています。
慢性的な酸性化するアシドーシスでは、骨からアルカリを引き出して血液のpHを保つため骨軟化症が現れますが、電解質となるアルカリを与え補充することで骨が回復するといいます。
植物性の食品は有機酸のアルカリ塩を多く含みます。
果物の酸味(リンゴ酸、クエン酸、酒石酸)の有機酸は、カリウム塩の形で含まれ体内で酸化されると二酸化炭素と水となって排泄され酸を作るものがなくなりアルカリ性を示すカリウムが残りアルカリ性を示します。
食品のアルカリ性度は、食品100gを焼いて得られる灰分を中和するのに得られる規定の酸のml数で表しています。ミネラル中Na(ナトリウム).K(カリウム).Ca(カルシュウム).Mg(マグネシウム)等が、P(りん).S(イオウ).Cl(クロール)等に比較して多く含む食品を一般にアルカリ性食品としています。
アルカリ性食品を必要量以上に摂取すると尿をアルカリ性にします。
酸性の負荷の高い食事は、心血管代謝症候群Cardiometabolic syndromeのリスクが高くなります。アルカリ性食品、特にカリウムの摂取が多い場合、高齢者の筋肉量が保存できる可能性があるといいます。
2002年WHOの報告書では、カルシウムの摂取量が多い国に骨折が多いというカルシウム・パラドックスの理由として、カルシウムの摂取量よりも、タンパク質によるカルシウムを排出させる肉類の酸性の負荷の悪影響のほうが大きいのではないかと推論しています。
食品を口に入れた数分後に口腔内はpH4~6に最も酸性に傾き、その後1時間ほどでゆっくりアルカリ性に回復していきますが、臨界pHであるpH5.5以下の酸性に傾いているとき歯が溶けてう蝕(虫歯)が進行すると考えられています。
砂糖など摂取頻度の増加はう蝕のリスクを確実に上げます。
2003年のWHO/FAOの報告は、堅いチーズはう蝕を予防する可能性が高く、乳製品は口腔内をアルカリ性に傾けることでう蝕を予防します。
さらに酢やアスコルビン酸(ビタミンC含む)、炭酸など酸の多い食品の消費が多いほど歯が侵食が進みます。アルカリ性を示す緑茶・紅茶・ウーロン茶、牛乳、豆乳のようなpHが高いものには、歯を溶かしません。
日本における高尿酸血症・痛風の増加は畜産物、砂糖の摂取が増え食生活の欧米化が原因とも考えられ、そうした食事は多くの生活習慣病の原因にもなっているといえるでしょう。
酸、アルカリの平衡は、排泄の為の臓器、腎臓、肺、腸の疾患、極端に片寄った食事で調節機能が正常に働かなくなるときがあります。腎機能が健全であれば重炭酸塩、リン酸塩、タンパク質が血液中のphを一定に保つように働き支障をきたさないというのが最近の一般的な考え方になっています。
普通多少の調節が体液の緩衝作用、排泄作用によって平衡維持されているのです。血液中のpHは7.3~7.5に緩衝作用により保たれています。
極端に酸性に傾くとアシドーシス(Acidosis)の肺疾患・尿毒症・尿路結石・糖尿病・脂肪代謝異常など、アルカリ性に傾くとphが7.4(±0.05)より高くなるとアルカローシス(Alkalosis)の高ナトリウム血症・アルカリ過剰摂取・おう吐などとなっていずれも好ましい状態ではありません。
食品の酸、アルカリ度は、食品が体内に入って体内での無機質(ミネラル)の貯蔵、排泄によっても体内で示される酸、アルカリ度は異なるといわれます。
酸性食品、アルカリ性食品と一概に決められるものでなく、体調の変化によりその度合いは異なってくるものと考えられます。
不足しているミネラルは少しでも取り込もうとして働きます。酸性食品、アルカリ性食品という考え方も悪いとはいえませんが、食料構成、ミネラルの摂取基準を念頭に置いて食品の摂取をしていく方がより体調の変化に順応していくように思えます。
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