エバ夫婦の山紀行ログ

道産子60代、四季を通じて主に夫婦で登った北海道の山を中心に紀行文を載せています。アウトドア大好き夫婦。

北日高の静峰・・・札内岳 (1895.5m)

2015年11月20日 | 山紀行 (日高山系)
ブログ開設前の山紀行から・・・
北日高の静峰・・・札内岳(1895.5m)
ナメワッカ岳敗退後の再訪・・・
■ 山 行 日    2005年9月3日(土)~4日(日)   1泊2日
■ ル ー ト     エサオマントッタベツ川ガケノ沢~北面直登沢 往復
■ メ ン バ ー     夫婦登山 №12
■ 登 山 形 態      沢登り
■ 地 形 図     1/25000地形図  「札内岳」
■ 三角点・点名   三等三角点   点名「サツナイダケ」
■ コースタイム   テン場まで登り 2時間15分 テン場~頂上 4時間05分
           頂上~テン場 3時間40分  テン場~登山口 1時間50分



当時の山行記録はワードで作っていました・・・

★ ブログ開設前の山行記録を再編集・・・
10年前に初登頂した「札内岳」の記録を読み返している内に、そのままブログに転換してみようと
気まぐれに思いつく。
未だに果たしていない「ナメワッカ岳」を目指しながらも敗退した半月後のリベンジ山行だった。
少し古い紀行文ですが、当時の記録を忠実に再現してブログにも残し誰かのお役に立てたら幸いです。




★ ナメワッカの教訓・・・
8月の夫婦登山№11では、エサオマントッタベツ川を遡行し北東カールで泊り札内分岐から
ナメワッカ岳を往復して分岐で泊り、翌日は札内岳に縦走してガケノ沢を下降するという計画
を組んいました。
結果は「エサオマン」の1ピークのみで終わり北東カールから再び下降して下山した。
結論的には計画の失敗で終わってしまったが「日高山系そのものをナメた」事を実感として
教訓になった事が成果となった。

札内分岐から主稜線を辿りナメワッカ岳を目指した時は、炎天下の中で私自身の体調不良、
想像以上に苦戦したハイ松漕ぎ、オーバータイムやオーバー給水等が理由で途中撤退を決断した。
また札内分岐から札内岳への縦走では、あまりに不明瞭な踏み跡に意気消沈し自分の力量不足を
思い知らされて、気持ちの良い北東カールで二泊目をあっさりと決めた。しかし、一方では
7時間以上に渡り沢を遡行し釣りを楽しみ幻想的なカールを知った事は二人にとっても大きな
成果と収穫になったことは間違いないと思った。
そんな成果と教訓そして悔しさをもって今回の札内岳が実現出来て非常に満足している。


★ ガケノ沢下降は無理だったかも・・・
もし8月に札内岳までの縦走が実現出来たとしても頂上からガケノ沢の降り口ルートを
判断するのは無理だったかも知れない。また下降したとしても重装備を背にしてあの急斜面の
ルンゼやいくつもの小滝を下るには相当の時間を要したと思う。
ガケノ沢についてはその情報も薄くガイド本やネット上では「大きな滝も無く問題ない沢・・」としか
得られず、あのときそれを鵜呑みにして降りていたら・・・きっと大変な苦労をしただろうと背筋が
凍る思いだ。
結果としては、空身(日帰り装備)で往復しロープも何も使わずに登下降出来るくらいの沢かも
知れないが、重装備での下降には相当の覚悟とそれなりの技術、時間が必要であることをここに
付け加えて置きたい。


★ 流木と倒木に遡行苦戦・・・

     【9月3日 (土)】  晴れ

自宅を8:30に出発。
8月のエサオマンと同じルートで、走り慣れた国道274号線を快走する。
エサオマントッタベツ川出合約1キロ手前の林道で「通行止め」の立て看板が道路の真ん中に
置いてあった。もしかして土砂崩壊などで林道が塞がっているのだろうかと不安になる。
しかし、せっかくここまで来て何が原因か確認もせずに引き返すのは悔いが残るとして勝手
ながら立て看板を一旦除けて突破する事にした。道路は前回とさほど変わらず2箇所で小さな
ガケ崩れの跡があるだけで通行には支障がなかった。
出合の林道では更にテープで「通行止め」としてあったが、偵察を兼ねて通過し車止めの広場
まで進む事にした。
(現在は、沢出合の林道入口にゲートがあり車は入れません)
結果は、問題なし。道路管理者の立場で考えると、土砂崩壊の恐れがあると判断しての通行止め
なのだろうが、できればその理由や看板の設置場所をず~と手前にしてほしいと思うのはやはり
勝手な言い草だろうか。
良い事ではないが、自己責任で制止を突破してまずは登山口に到着したので「良し」として
出発準備にかかることにした。

12:30出発。
ガケノ沢出合近くの林道終点まで歩く事にした。
約30分で終点となり入渓する。すぐにガケノ沢出合となりどんな沢かと興奮気味に左股に入る。
本流ほど川幅は無く、少し暗い感じではあるが何も問題なさそうだ。しかし、少し進むと沢を塞ぐ
ような大木が横たわり遡行に支障をきたした。
くぐったり跨いだりで中々先に進まなかったので時間だけが過ぎて行く。



25㎝を超える天然のオショロコマ (ナイフの長さが21㎝)


整地して確保したテン場 (840二股出合)と手前の焚き火・・・


テントの横で焚き火して、テントの近くで釣った大物のオショロコマを塩焼きにして頬張る幸せ・・・


塩焼きはじっくりと遠火で焼くのがコツ・・・


沢での焚き火は久々だ。明日大丈夫かなぁ~って少し不安。

★ 贅沢な晩餐会に満足のチーヤン・・・
840二股のテン場までガイド本やネットではガケノ沢出合から約1時間で着くはずだったが、
なかなか現れなかった。何度も地形図を出し確認するが沢を間違えているとも考えられず・・・
でも不安が過ぎる。
それでも14:45 ようやく顕著な支流と出合、地形図からもここが840二股であると確信した。
出合は大きな石や流木でゴロゴロし川岸も狭くとてもテント適地とは言えない場所だった。
しかしなんとか少しでも高い所にスペースを確保し整地してテン場を作った。
テントを設営し流木を掻き集め焚き火の用意をした後に釣りをする。
すぐ目の前の流れ込みで面白いほどオショロコマが釣れる。10匹ほど釣り上げるのに30分と
かからなかった。内2匹は25㎝を超える大物だったので塩焼きにする事ことを決め他はムニエル
にして頂いた。

持ち上げた缶ビールを沢で冷やし、焚き火を起して夕食の準備は整い16時、ようやくの乾杯となった。
誰も居ない大自然の中で夫婦二人きりの贅沢な晩餐会。
グイッと咽喉越しを通るビールの旨さに幸せを感じながらムニエルを作る。
塩焼きは1時間ほどじっくりと遠火で焼き、背中から思いっきり頬張る。
夕食はオショロコマオンリーで満足した・・・。

18:30、テントに入って二次会へと移行する。
外は風も無く流れる沢の音だけが休む事無く続く。
明日の無事の登頂を願いながら夫婦の会話は続くが・・・20時頃静かに就寝してしまった。

【9月4日(日)】  くもり~晴れ

起床は3時だったが、夜中に何度も目が覚めてよく眠れなかった。
しかし、そんなことをよそに隣りのチーヤンはぐっすり寝ていた。
今朝も風は無く穏やかな朝を迎える。実際の天候は分からなかったが、夜空の星は確認出来なかった。
沢の音だけが絶え間なく続く・・・。

いつものようにコーヒーを落とし、まったりとした時間を過ごす。
チーヤンものんびりとサブザックに物を詰めていた。
簡単に朝食を済ませ、5:10にテントを出た。

右岸左岸と選びながら遡行するが所々に流木が沢を塞ぎ今日も跨いだりくぐったりしながら
徐々に登って行く。すぐに最初の小滝が現れ難なく直登し通過する。その後10mほどの滝が
2箇所現れるが、右岸に明瞭な踏み跡があり高巻く。1100m二股まで滑滝を含めると10
個ほどの滝を通過しただろうか。1100m二股は、右股の本流に進む。以降も何個かの滝に
出合うがさほど問題なく通過出来た。
1350m二股も右股へ。そして1450m二股では地形が少しカール状になり傾斜も急に
なってくる。左右どちらに進むか迷ったがここは左股に進んだ。右股はすぐに涸れた滝状に
なっていてその先が急に狭くなっているように見えたので止めた。
1600m付近から水が涸れ、沢幅も急に狭くなってきた。沢地形をかろうじて保ちながら
ガレの急斜面を登る。
1700m付近から草地と低い灌木帯となり、見上げると稜線らしき何もない空が見えて来たが
ず~と見ていると首が痛くなる程の斜度がある。いよいよ頂上が近いかな?と大きな期待を
しながら攀じ登ると「ヒョコン」と出たところが頂上だった。



テントから最初に出合った小滝群は難なく直登して通過する・・・


大量の流木に苦労する場面もあった・・・


急斜度の滑滝も楽しんで登れる・・・


振り返ると妙敷山と伏美岳を望む・・・


「ミヤマダイコンソウ」と妙敷山・・・どんな花でも癒される瞬間だ!


「チシマフウロ」・・・優しい色合いが好きです。


メジャーな「オオバミゾホウズキ」の黄色も鮮やかだった。


頂上直下か?・・・期待が膨らむ。


「モミジカラマツ」


「エゾツツジ」

★ 初登頂「札内岳」・・・
9:15
ルートを間違える事無くその頂に飛び出ると、風も無く穏やかな空間の中で
360度のパノラマが目の前に広がった・・・。正に感動の瞬間だった。
稜線で繋がった西には「エサオマントッタベツ岳」の勇姿が聳え立ち、その北にはカムイ岳、幌尻岳、
戸蔦別岳、ピパイロ岳、伏美岳、妙敷山などが広がり、南の展望にカムエクを始め果たせなかった
ナメワッカ岳の秀峰も望む事が出来た。
十勝側の低山には微かなガスがかかり水墨画のように山が浮き出た幻想的な姿は、心を和ませる
静かな感動を覚えた。

恒例の山頂ビールは、テントに忘れてしまったが今回はお湯を沸かしてコーヒーを落とし
体を温めながら満足のいくまで眺望を楽しむ事が出来た時間だった。



十勝側の展望は水墨画のように幻想的だった・・・


札内岳頂上から南側の展望・・・


札内岳頂上から南西側の展望・・・


西の稜線に続くエサオマンを間近に望む・・・


札内岳頂上から北西の展望・・・


札内岳頂上にて・・・エサオマントッタベツ岳を背に


札内岳頂上にて・・・幌尻岳を背に


コーヒーを飲むチーヤン・・・


偶然飛来したアゲハチョウ・・・

★ 登りより下りが不安・・・
札内岳頂上はテント2張くらいは設営可能なスペースがあり、十勝幌尻岳やエサオマン側への稜線に
向かっては明瞭な踏み跡もあったが、どこまで繋がっているかは確認出来なかった。

10:00
後ろ髪を引かれる思いで札内岳の下山を開始した。
何気なく通過して来た小滝や滑滝も登りでは問題なかったが下りでは一抹の不安を抱えながらの
下山だった。チーヤンには黙っていたが、自身ではけっこう緊張しての下りだったのだ。
しかし、その不安は的中せず意外なほどに何もなく下山て来た。
チーヤンにケガをさせられないと滝の直登でも比較的安全と思われる草付きルートを選ぶ私に対して
チーヤンは身軽に岩場に取付き簡単に滝を乗り越えてしまったりで・・・
クライミング技術は一枚上手のようだった。

何度か休憩を取りながら順調に下降出来、最後の滝をクリアした時は心底安堵した。
ただその後チーヤンが枝にザックを引っ掛けて転び深みにはまって泳いでしまった事を
最後に付け加えておこう(笑)

C1テン場には、頂上から3時間40分で到着した。
早々にテントを撤収し再び大きなザックを背負う。ダメと思っていた天気も二日間とも晴れてくれ、
登頂を果たし素晴らしい眺望を望めて無事に下山が出来たことが何より嬉しかった。
「次はあのナメワッカだね」と二人で苦笑しながら下りの足取りは軽く、充実感に慕っていた。



「チシマセンブリ」