奈良県在住の映像作家・保山耕一さん(55)。末期がんを抱えながら、毎日、奈良の自然や寺社仏閣を撮影しています。その日に撮った映像はすぐさま編集してSNSで発表。「奈良の365日の季節のうつろいを写した作品」は「涙が出る」「神さまの気配がする」と静かな反響を呼んでいます。
保山さんはフリーカメラマンとして人気番組「情熱大陸」などを手掛けていたが、2013年8月、直腸がんで放置すれば余命は2カ月と宣告される。治療には成功したものの排便障害が残り、仕事は激減した。
リハビリ代わりにと、動画も撮れる一眼レフカメラと三脚を携え地元・奈良を歩き始めた。夕日が照らす曽爾(そに)村のススキ、雲海に浮かぶ夜明けの月ケ瀬梅林。駆け出しの頃教わった「撮影の基本は自然に学べ」という言葉を胸に、「あるがままを撮った」という映像は180本を超し、ユーチューブで公開すると「涙が出た」などと反響が相次いだ。昨年12月の雨上がりの朝に春日大社で撮った映像は、木々をぬらす水のしずくに陽光が差し込み、七色に輝く一瞬を切り取った。