🔲陰翳礼賛🔲
その時私が感じたのは、日本の漆器の美しさは、そう云うぼんやりした薄明かりの中に置いてこそ、始めてほんとうに発揮されると云うことであった。(中略)
漆器と云うと、野暮くさい、雅味のないものにされてしまっているが、それは一つには、採光や照明の設備がもたらした「明るさ」のせいではないであろうか。事実、「闇」を条件に入れなければ漆器の美しさは考えられないと云っていい。(中略)
古えの工芸家がそれらの器に漆を塗り、蒔絵を画く時は、必ずそう云う暗い部屋を頭に置き、乏しい光の中における効果を狙ったのに違いなく、金色を贅沢に使ったりしたのも、それが闇に浮かび出る工合や、燈火を反射する加減を考慮したものと察せられる📖。
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