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高齢者狙い撃ち、11億円集めた「社債詐欺」の仰天“心につけ込むシステム”

2014-07-06 17:57:20 | 社会
高齢者狙い撃ち、11億円集めた「社債詐欺」の仰天“心につけ込むシステム”
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/snk20140706530.html
2014年7月6日(日)14:43
産経新聞

 世の中、うまいもうけ話などそうそうないものだ。だが、どうしてこうも次々とだまされてしまうのか。高配当をうたって社債を販売し、高齢者から金をだまし取っていたとして、東京都千代田区の投資会社「フォーエブリ」の元会長(47)ら同社元幹部5人が6月、詐欺容疑などで大阪府警に逮捕された。集めた金は約11億円。勧誘役は若い女性が多く、孫のように感じて求めに応じた購入者もいたという。高齢者の心の隙間に入り込み、ありえないもうけ話を信じ込ませた詐欺グループ。勧誘役には「小テスト」で詐欺のための情報をたたき込み、家族構成などの「顧客管理表」を作成して高齢者の生活を丸裸にしていた。高齢者がいとも簡単にだまされる背景には、会話などのテクニックだけでなく、恐るべきシステムが存在していた。

「相談相手おらずだまされた」

 「銀行よりもお得な3・5%以上の金利がつきます。損はしませんよ」

 名古屋市の男性(80)の元にフォーエブリの営業マンを名乗る男から電話がかかってきたのは、平成23年秋のことだった。

 その言葉を信じ、100万円分を購入。さらに「300万円分購入すれば金利が5%もつくので、絶対お得です」とあおられ、追加で200万円分を購入した。

 元手の300万円は、老後のためにとコツコツ貯金してきたほぼ全額。年金と清掃業のアルバイトによる収入はあるが、生活への不安を抱えているといい、「相談する人が周囲にいなくて、自分の判断で購入してしまった。それが間違いだった」と悔やしさをにじませる。

 時は過ぎ、昨年12月。東京都千代田区のオフィスビルの1室。記者が訪ねると、かなり広い部屋は、ガランとしていた。

 部屋の隅に積み上げられた段ボール箱の中には、不要になったのだろうか、ビジネスフォンや契約書の束などが無造作に詰め込まれていた。府警は同年春、この部屋を家宅捜索していた。フォーエブリの元本社であり、11億円もの金を集めていた拠点だった。

1日電話200件

 アポインター。フォーエブリの勧誘役の呼称だ。トークマニュアルに沿って社債の購入を持ちかけていたという。例えばこんな風に。

 「せっかくだから会ってお話ししたいなあ。話聞いたから絶対やってくださいってものでもないから安心してよ!」

 アポインターはフォーエブリの大阪、名古屋両支店に計約30人在籍。多くが20代の女性だった。電話帳を使って片っ端から電話をかけ、高齢者の話し相手を演じ、甘えた口調で会う約束を取り付けていたという。

 「銀行とかに預金されてると思うんだけど、金利が低いって言いますよね?」

 「この社債はお金の預け場所を代えるだけなんで、お金がなくなるわけじゃないんです。それどころか金利がいいし、満期がきたら償還されるから安心して」

 逮捕された元幹部の中には「時間ができた今こそ、人と人とのつながりを深め、新しい出会いから新しいトキメキやお話し仲間などと出会う場所を提供します」などとして高齢者の交流サロンを設立した者もいた。高齢者に対する接し方は心得たものだったのだろうか。

 フォーエブリは、自社が発行する社債について、49人以下への勧誘なら財務局への届け出が不要な「少人数私募債」と称していた。だが、アポインターに課されたノルマは月500万円。固定給が月20万円だったが、売り上げた社債の額の1~5%が歩合として入る仕組みだったため、1人あたり1日平均約200件もの勧誘電話をかけていたとされる。

詐欺の知識は小テストで

 電話で好感触を得ると、アポインターや契約担当の社員が購入者の家を訪問。この際にはお土産を持参したり、親近感を覚えさせる身の上話を披露したりして、高齢者の心をつかんでいた。府警幹部は「孫のような存在だと思って、かわいがっていた人が多かったようだ」と話す。こうした手練手管はどのように身につけていたのか。

 アポインターはもともと、求人広告や知人の紹介で集まった「素人」だった。嘘を本当に見せる「プロ」に仕立て上げる必要があり、フォーエブリではアポインターに対し、日常的に「小テスト」を行っていたとされる。

 「虫食い」の小テストでは、フォーエブリが投資先にしていると偽っていた企業名を埋めたり、フォーエブリの社債の利率を回答させたりする問題が出されていたという。嘘の情報を頭にたたき込ませ、勧誘時の説明をスムーズにする目的とみられ、徹底した教育ぶりがうかがえる。

 一方、こうした「技術」を確実に契約につなげるため、アポインターは高齢者らの個人情報を詰め込んだ「顧客管理表」も作成していた。

 電話や面会でのやりとりで判明した高齢者の性格、家族構成、家庭内の決裁権者や1日のスケジュールなどが事細かに書き込まれ、高齢者の生活は丸裸も同然だったという。

金で結びついた集団

 アポインターがもともと素人だった半面、彼らにノウハウをたたき込んでいた元幹部らは「詐欺で金を稼ぐ」という目的で結びついた「プロ」だったといえそうだ。

 府警に逮捕された元社長(42)は昨年12月、逮捕前の産経新聞の取材に「私は会長にだまされた。私はだますつもりはなかった」と主張。「新しい会社を立ち上げて、その売り上げを社債購入者への返金に充てる」と説明していた。

 だが、今年3月、「奄美大島にショッピングセンターをつくる。うちの会社の株を買えば高値で買い取る会社がある」などと嘘をついて、高齢男性から現金をだまし取ろうとしたとして、鹿児島県警に詐欺未遂容疑で逮捕された。

 府警によると、ほかの元幹部らも別の詐欺行為に関与していた疑いがあるといい、元幹部らは詐欺行為に手慣れていたとみられる。

 ただ、彼らの結びつきは金目的であり、強固なものではなかったようだ。詐欺行為を繰り返している最中には、元会長が私的流用したとして追い出されたこともあったという。

 フォーエブリが集めた金は平成23年9月~25年4月で総額11億円にものぼった。集めた金の約3割は社員の給料などとして支払われ、大半が元会長が経営する別会社の運営資金や遊興費に使われたとみられている。だまし取られた金は、高齢者の手元には戻ってこない。

 国民生活センターによると、25年度に寄せられた社債や未公開株などのもうけ話の勧誘トラブルは、1万8898件。うち60代以上の高齢者は1万6672件と9割近くを占めている。

 同センターは「高齢者は『お金』『健康』『孤独』の3つの不安を持っている。悪質業者は言葉巧みに不安をあおり、親切にして信用させ、大切な財産を狙っている」と忠告している。


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