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中国が世界の食肉買いあさる…勝負できぬ日本企業、突破口は「官民一体」

2014-07-13 17:33:21 | シナ
中国が世界の食肉買いあさる…勝負できぬ日本企業、突破口は「官民一体」
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/snk20140712514.html へのリンク
2014年7月13日(日)08:03
産経新聞

 中国の習近平国家主席がドイツ西部の工業都市デュイスブルクの駅を訪れると、貨物を山積みにした列車が計ったように滑り込んだ。列車は、中国中西部の重慶(略称・渝)から1万1179キロを走破し、3月29日、この駅に到着した。アジアと欧州を直結する「渝新欧鉄路」だ。習氏は式典で「中独両国は協力を強化し、シルクロード経済ベルトの建設を推進すべきだ」と強調した。

 もともとこの鉄道は「パソコンや機械の欧州向け輸出を通じ、中国内陸部の活性化を狙った肝煎りプロジェクト」(日本貿易振興機構上海事務所の三根伸太郎所長)として、2012(平成24)年に開通した。重要なのは昨年、デュイスブルク→重慶の復路が本格運行を開始したことだ。中国にとっては、船便に比べ半分以下の約16日間で、欧州からの貨物を受け入れることが可能になった。

 現在、この路線に冷蔵・冷凍コンテナを整備し、「欧州から中国内陸への食の輸入ライフライン構想」(大手商社)が浮上しているという。これは何を意味するのか-。

 ◆メジャー標的か

 「オランダの豚肉加工業者を仲介してほしい」

 最近、日本の複数の商社に中国企業からこんな打診が舞い込んだ。ある商社は「日本向けの調達先を奪われかねない」との不安がよぎったが、とにかくオランダ視察に同行した。中国の豚肉加工世界最大手の萬洲国際がメキシコ企業と共同で、スペイン食肉大手カンポフリオを買収した-というニュースに接したのは、ちょうどそのころだ。

 「中国が世界の食肉を買いあさっている」という警戒感は、業界内で次のような噂に発展した。「今度は中国最大の国営食料商社、中糧集団(コフコ)が穀物メジャー買収に動くのではないか…」

 わずか数年前、世界穀物貿易の7割は「ABCD」と呼ばれる欧米系穀物メジャーが握っていた。すなわち、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(A)、ブンゲ(B)、カーギル(C)、ルイ・ドレフュス(D)の4社だ。

 現在ではその4社支配体制は崩れ、穀物貿易は戦国時代に突入している。カナダの穀物会社を買収したスイスの資源大手グレンコア・エクストラータが首位の米カーギルに迫り、米5位のガビロンを買収した丸紅も大手の一角に名を連ねる。

 今年に入り急速に力をつけているのが中国企業だ。コフコは2月、オランダの穀物商社ニデラを子会社化。4月には、香港に拠点を置く穀物商社ノーブル・グループ子会社を傘下に収めることで合意した。「次の標的はメジャーか」と噂になるのも無理はない。

 ◆現実路線に修正

 実は食をめぐる中国の攻勢は、昨年末に複数の重要会議で打ち出した方針に沿ったものだ。中国の農政に詳しい農林中金総合研究所の阮蔚(ルアンウエイ)主席研究員は、一連の会議で「中国の食糧安全保障をめぐる歴史的な大転換があった」と分析する。絶対的に自給する穀物を小麦とコメに絞り込み、国内産よりも安く調達できる他の穀物や豚・牛の加工肉の輸入戦略を食糧安保の両輪とする現実路線に軌道修正したというのが阮氏の見立てだ。

 なかでも中国が重視しているのが、豚肉や牛肉など畜産物の確保だ。農畜産業振興機構によると、中国が昨年輸入した牛肉の量は12年の約4倍、11年からは14・7倍に膨れあがった。水不足や農村の都市化で畜産の生産拡大には制約がある。ならば飼料穀物を輸入して牛を育てるより、海外の牛肉加工業者を買収した方が手っ取り早い。大手商社の幹部は「20年には1千万トンの豚や牛肉が中国に向かうはず」と打ち明ける。

 ある日本のハムメーカーは昨年、オーストラリア企業の牛肉加工会社の買収に動いたが、最終的には断念せざるを得なかった。ハムメーカーの社長は現地に乗り込み、自ら交渉を進めたが「中国勢が別の牛肉加工会社を買収する際に価格をつり上げたため、相場が上がってしまった」と残念がる。食の安全保障をめぐり、激しさを増す日中の企業戦争。中国の戦略転換の影響はすでに日本にも及んでいる。

 ■中国と勝負できぬ日本企業 「官民一体」食糧安定調達の突破口

 360度、見渡す限りの大豆畑が広がる。ブラジル中部・バイア州にある大規模農園。2007(平成19)年から日本の大手商社が経営に参画している。現地を視察した中国飼料大手のトップは思わずうなった。

 「ここには中国にないものがすべてそろっている。新鮮な空気と土地と水だ」

 国土面積は日本の約22・5倍。約2億5千万ヘクタールの耕作可能面積に対し、実際に農地として使われているのは6千万ヘクタールにすぎないブラジルは、「世界で最も生産余力がある国」といわれ、食糧の安定調達を目指す国々がこの南米の地に熱い視線を送る。

 しかし、ブラジル政府は11年、外国資本の流入による農地の高騰に歯止めをかけるため、土地取得の規制を強化する法律を制定した。豊富な資金力を誇る中国勢だが、この壁に阻まれ、現地への投資はままならない。

 ◆ブラジルに足場

 一方、日本は1970年代から、不毛の大地を意味する「セラード」を農地に変える国際協力を進めてきた。ブラジルを世界最大の大豆輸出国に押し上げる原動力となった日本勢には実績と信頼がある。

 三井物産は昨年、ブラジル最大の農業生産法人SLCアグリコラと提携。三菱商事は現地の集荷会社を完全子会社化し、双日も港湾使用権を持つ集荷会社に参画した。丸紅は港湾施設会社を子会社化し、穀物輸出ルートを押さえた。

 小麦や大豆、トウモロコシといった穀物貿易では、その生産はもとより、大量の穀物を貯蔵する集荷施設や海外への輸送の拠点となる港湾施設を握ることが欠かせない。日本企業はブラジルでその足場を着々と築きつつある。日本の食糧安全保障にとってブラジルの存在感は高まるばかりだ。

 ◆最大市場の威力

 世界の人口は2012年時点で約71億人。これが、20年には77億人になると予測されている。これに伴い、穀物の世界貿易も現在の約30%増の4億7千万トンに拡大するとみられている。食糧をどう安定調達するかは、世界各国が直面する待ったなしの課題だ。

 中でも、日本は1984年以降、世界最大の農産物純輸入国(金額ベース)だ。大手商社の食糧調達網は世界に広がり、日本の食糧安保にも大きな役割を果たしているが、近年は隣国・中国が攻勢をかけ、世界中で日本の調達先を浸食している。早期の資金回収を株主などから求められる大手商社が、国をあげて買収攻勢をかける中国勢と正面から勝負するには限界がある。

 しかも、中国企業と真っ向から対立するのは得策ではないとの思いが、穀物貿易を担う商社にはある。投資した国で生産された穀物の最大の輸出先は、ほぼ間違いなく中国となるからだ。ブラジルなどの新興国に投資しようとする日本の大手商社にとっては、最大市場を持つ中国企業と手を組み、購買力をつけることが日本向け穀物を確保する手段にもなる。

 国際協力銀行(JBIC)は最近、丸紅のガビロン買収や双日のブラジル集荷会社をめぐる出資や融資を支援するなど、海外の農業投資支援にかじを切り始めた。だが、政府金融や貿易保険を総動員する資源外交によるエネルギー安保に比べると、その支援内容は脆弱(ぜいじゃく)であることは否めない。

 日本が食の安定調達を目指す上で、民間企業に多くを委ねるのは限界がある。ブラジルのセラード開発で日本の政府開発援助(ODA)が大きな役割を果たしたように、官民一体となった総合的な食糧安保戦略が求められている。


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