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憲法判断には「賢慮」が必要だ || 弁護士も続々ツイートした「婚外子訴訟」違憲決定 ||不倫助長?

2013-09-05 18:14:58 | 社会

憲法判断には「賢慮」が必要だ
埼玉大学名誉教授・長谷川三千子
2013年9月12日

  9月4日に、最高裁大法廷は民法900条4号のただし書き中の「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし」という部分を、憲法14条1項に定める「法の下の平等」に違反しているとする判断を下しました。たしかに字面だけ見れば、この規定は「相続差別」であり、憲法違反という決定は当然のようにも思われます。

  ≪均衡のとれた現行相続規定≫

  しかし実際には、これはそんな風に簡単に片付けてすむ問題ではない。もともとこの規定は「法律婚の尊重と婚外子の保護の調整を図ったもの」であって、その調整の結果が、形の上で「相続差別」となっているにすぎないのです。

  他の多くの国と同じくわが国でも、役所に届け出をしてはじめて「婚姻」の成立が認められます。そしてそこに、扶養の義務や相続の権利といったものが生じる。「法律婚」のうちに生まれる子には、そうした保護が保証されているわけですが、それ以外の関係によって生まれた「婚外子」にはその保護が及ばない。それを多少なりとも補おうとするのがこの規定なのです。

  しかし他方で、法律婚の内側に生まれた子とそうではない子を完全に均等に扱ってしまうと、今度は法律婚の意義そのものが曖昧になってしまう。やはり本筋は法律婚にあるのだということを明らかにしておく必要がある--こうした二つの相反する課題の間で、どちらかを切り捨てることなく、バランスをとって作り上げたのがこの規定だったのです。

 もちろんこれは、当事者の全員に百パーセント満足のゆく解決を与えるものではありません。そもそも嫡出子と婚外子がともに存在するという状況自体、そこに置かれた人間には辛く苦しいものであって、今回の発端となった遺産分割審判の双方のコメントを見てもそれぞれのやり切れない思いが切実に伝わってきます。ただ重要なのは、この規定がその双方に配慮しつつ全体を広く見わたして定められているということなのです。

  ≪覆された平成7年の合憲判断≫

  本来、憲法の条文解釈や憲法判断というものは、決して機械的に杓子定規になされるべきものではありません。今回の決定についての「法廷意見要旨」にも、冒頭、こんなことが述べられています--「相続制度を定めるにあたっては、それぞれの国の伝統、社会事情、国民感情なども考慮されなければならず、また、その国における婚姻ないし親子関係に対する規律、国民の意識等を離れてこれを定めることはできない」。

  つまり、このような熟慮の上に立ってはじめて、それが違憲か合憲かの判断を下すことができるわけで、こうした憲法判断の仕事が「法の賢慮(ジュリス・プルーデンス)」の術と呼ばれたりするのも、それ故のことなのです。

  ちなみに平成7年の最高裁大法廷では、まさに今回の意見書の冒頭に語られた見地から、この規定を「法律婚の尊重と婚外子の保護の調整を図ったもの」と評価し、合憲の判断を下しています。

  ではいったい、今回はいかなる理由でその判断が覆されたのでしょうか?

  たしかに、社会事情や国民の意識が変化してきた、ということは語られています。実際に、いわゆる事実婚による非嫡出子が1・2%から2・2%に増えているという事実はある。しかしそれはこの問題に直接かかわることではない、と意見書もはっきりと述べています。唯一目につくのは、現在欧米諸国でこのような規定をもつ国はないという記述と、「国際連合の関連する委員会」がわが国のこうした規定に「懸念の表明、法改正の勧告等を繰り返してきた」という記述です。これ以外には、これと言って違憲判断の決め手になるような話は見あたりません。

  ≪平等原理主義に陥るなかれ≫

  そしてそこに、いささか唐突に結論が述べられます--「上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立してきている」。だからこの規定は違憲だというのです。

  しかしこの結論はおかしい。まず、さきほども見た通り、これは親を同じくする嫡出子と非嫡出子の利害を調整した規定であって、自ら選択の余地のない事情によって不利益をこうむっているのは嫡出子も同様なのです。その一方だけの不利益を解消したら他方はどうなるか、そのことが全く忘れ去られています。またそれ以前に、そもそも人間を「個人」としてとらえたとき、(自らの労働によるのではない)親の財産を相続するのが、はたして当然の権利と言えるのでしょうか? その原理的矛盾にも気付いていない。

  ここには、国連のふり回す平等原理主義、「個人」至上主義の前に思考停止に陥った日本の司法の姿を見る思いがします。「法の番人」には本来の「法の賢慮」を発揮していただきたいものです。(はせがわ みちこ)

(産経新聞テキスト朝刊)

 「ついに出ました」 弁護士も続々ツイートした「婚外子訴訟」違憲決定
http://news.goo.ne.jp/article/bengoshi/life/bengoshi-topics-738.html
2013年9月4日(水)21:16
弁護士ドットコム

明治時代から続いてきた、非嫡出子(婚外子)の相続格差に関する民法の規定に「憲法違反」の判定が下された。民法900条4号では、結婚をしていない男女の間に生まれた子(非嫡出子)の相続分は、法律上の夫婦の間に生まれた子(嫡出子)の半分としている。しかし、最高裁判所大法廷は9月4日、「法の下の平等を定めた憲法に違反しており、無効」との判断を初めて示した。

最高裁の違憲決定を受け、国会は民法の改正を迫られる。今回のように、法律について最高裁が違憲と判断するのは、これまでで9例目。違憲審査制度ができて65年以上たつが、その歴史のなかでも最高裁の違憲判決・決定はめったにないことだ。「最高裁が違憲判断」という貴重なニュースにツイッターで言及する弁護士も多かった。

●「違憲判決が遅すぎた」

「ついに出ました。婚外子の相続格差の違憲判決。学生時代に授業でやったことがついに現実となった」とツイートしたのは、渡辺輝人弁護士(‏@nabeteru1Q78)。「ついに」という言葉を2回も使っていることから、待望感が伝わってくる。

同じようなニュアンスで、菅野朋子弁護士(‏@kanno_tomoko)は「ようやくですね。反対派の『法律婚の尊重』は、ちょっと視点がずれていると思います」とつぶやいている。さらに強い言葉を使っているのは、谷山智光弁護士(‏@taniyama)だ。「違憲判決が遅すぎた。生まれてきた子にはどうすることもできない事情による差別でしたからね」。

最高裁決定の直前に弁護士ドットコムが実施したアンケートでは、回答した43人のうち95%にあたる41人が「違憲」を支持する姿勢を表明していた。弁護士のあいだでは、「民法900条4号は違憲」というのは共通の見解といってもよい情勢だったようだ。ツイッターでも、最高裁が違憲と判断したことを当然と受け止める空気が強かった。

●「婚外子差別を擁護していた政治家は猛省を」

今回の最高裁決定を受けて、国会は民法改正を迫られることになるが、最高裁に「ノー」を突きつけられるまで放置してきたのは問題だともいえそうだ。たとえば、山口貴士弁護士(‏@otakulawyer)は「当然の結論です。これまで、国会において、婚外子差別を擁護していた政治家は猛省を」とツイートしている。

また法改正について、実務的な問題を指摘している弁護士もいる。高井重憲弁護士‏(@takailaw)は 「非嫡出子の相続分の規定が違憲にされたけど、早く法改正してくれないと今関係する事件は手続き進めようがなくて困るよね。尊属殺のときは検察が事実上起訴しなかったから問題にならなかったらしいけど」と、早期の民法改正の必要性を訴えている。

法律の改正は国会議員の仕事だ。弁護士資格をもつ国会議員の一人、社民党の福島瑞穂参院議員(@mizuhofukushima)は「最高裁は、全員一致で民法の規定は憲法違反だと婚外子差別について決定。全員一致も違憲決定も本当に嬉しい。これから民法改正について頑張ります!」と、ツイッターで決意表明していた。

●最高裁の決定文はネットで読むことができる

野党議員だけではない。同じく弁護士出身で、与党・自民党の柴山昌彦衆院議員(@shiba_masa)は次のようにツイートしている。「最高裁の婚外子差別違憲判決。頭に浮かんだのがかつての尊属殺重罰違憲判決だ。かつての日本の価値観は変わった。一方でかつての常識から考えられない不適切映像の投稿はじめあちこちで見られるモラルの低下。外国での実態も含め、これから社会のあり方を真剣に考えねば」。

なお、今回の最高裁大法廷の決定文は、最高裁のウェブサイトにアップされていて、誰でも読むことができる。そのことを何人かの弁護士がツイッターで、すかさず告知していたが、中村元弥弁護士(@1961kumachin)もその一人だ。「話題の大法廷決定がもうアップされている。こういうときは仕事が早い最高裁。http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130904154932.pdf」

最高裁の「違憲判断」がどのように説明されているのか、決定文を直接読んでみて、そのロジックを確かめてみるのもよいだろう。

(弁護士ドットコム トピックス)

婚外子の相続差別は「違憲」 迫られる民法規定改正
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/snk20130905517.html
産経新聞
2013年9月5日(木)09:45

 婚外子の遺産相続規定を「違憲」と判断した最高裁決定は、家族観の多様化などに伴い「個人の尊重がより明確に認識されてきた」ことを重視、出生で線引きする規定の合理性は失われたと結論づけた。平成7年以降「合憲」判断を貫いてきた最高裁が事実上の判断見直しに踏み切った形だ。

 規定は110年以上にわたって民法の中に残されてきたが「生まれる環境を選べない子供にペナルティーを科すものだ」との批判は根強く、国連からも度重なる勧告を受けてきた。最高裁の判断でも常に反対意見が付され、決定も「合憲の結論を辛うじて維持してきたもの」と表現している。

 規定撤廃を求める人たちには、民法が格差を認めることが「婚外子への社会的差別の元凶となってきた」との思いがある。婚外子の男性も弁論で「大法廷が再び合憲と判断すれば、国民に最も身近な法律である民法に、規定が永遠に残り続けることになる」と、最高裁に“決断”を迫った。

 相続の同等化はたびたび議論となりながら、是正が見送られてきた。法制審議会の答申は17年もたなざらしにされている。「違憲」と判断された以上、速やかに法改正に着手すべきだ。

 決定は「法律婚の尊重」を否定したわけではない。現行規定でも、財産が家屋だけの場合、残された配偶者が遺産分割で住まいを失うといった事態は生じ得る。改正にあたっては配偶者の居住権保護などを含めた議論が求められている。(滝口亜希)


婚外子の相続差別は違憲 最高裁初判断「確定事案に影響せず」
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/snk20130905088.html
2013年9月5日(木)08:05
(産経新聞)

 結婚していない男女の間に生まれた非嫡出子(婚外子)の遺産相続分を嫡出子の半分と定めた民法の規定が、法の下の平等を保障した憲法に違反するかが争われた2件の家事審判の特別抗告審で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允(ひろのぶ)長官)は4日、規定を「違憲」とする初判断を示した。14裁判官全員一致の結論。

 また、すでに決着済みの同種事案には「この違憲判断は影響を及ぼさない」と異例の言及を行った。

 明治時代から続く同規定をめぐっては大法廷が平成7年に「合憲」と判断、小法廷も踏襲してきた。最高裁が法律の規定について憲法違反と判断したのは戦後9件目で、国会は法改正を迫られることになる。

 規定の合憲性が争われたのは、13年7月に死亡した東京都の男性と、同年11月に死亡した和歌山県の男性らの遺産分割をめぐる審判。いずれも家裁、高裁は規定を合憲と判断し、婚外子側が特別抗告していた。

 大法廷は決定で、婚外子の出生数や離婚・再婚件数の増加など「婚姻、家族の在り方に対する国民意識の多様化が大きく進んだ」と指摘。諸外国が婚外子の相続格差を撤廃していることに加え、国内でも平成8年に法制審議会(法相の諮問機関)が相続分の同等化を盛り込んだ改正要綱を答申するなど、国内でも以前から同等化に向けた議論が起きていたことに言及した。

 そして、法律婚という制度自体が定着しているとしても「子にとって選択の余地がない事柄を理由に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、権利を保障すべきだという考えが確立されてきている」とした。

 その上で、遅くとも13年7月の時点で「嫡出子と婚外子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていた」と結論づけ、審理を各高裁に差し戻した。

 一方で、決定は7年以降に出された最高裁判断については、「その相続開始時点で規定の合憲性を肯定した判断を変更するものではない」とも言及した。

 さらに、今回の違憲判断が他の同種事案に与える影響については「先例として解決済みの事案にも効果が及ぶとすれば、著しく法的安定性を害することになる」とし、審判や分割協議などで決着した事案には、影響を及ぼさないとした。

 今回の審理には法務省民事局長などを務めた寺田逸郎氏(裁判官出身)は加わらず、14人で審理された。


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