http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/snk20140616064.html
2014年6月16日(月)07:59
(産経新聞)
北朝鮮は週内にも、拉致被害者らを含む全ての日本人の再調査を行う「特別調査委員会」を発足させる。日本政府は、特別調査委による再調査の実施が確認できた時点で独自制裁の一部解除に踏み切る方針だが、国内には政府方針に疑問の声もある。拉致問題の全面解決を目指す中、難しいかじ取りを迫られる。
政府は、週内にも北朝鮮から特別調査委員会の権限や態勢、再調査の実施状況の概要について報告を受ける段取りとなっている。月内にも日朝の外務省局長級協議を開催、特別調査委の詳細を確認する。
日朝合意文書は、特別調査委について「全ての機関を対象とした調査を行うことのできる権限」とある。
日本政府は、金正恩第1書記の直轄組織であることを前提に大筋で受け入れる方針を固めている。同時に、再調査に関し「日本側関係者が北朝鮮に滞在し、関係者に会い、地方まで出かけていくことが受け入れられた」(菅義偉(すがよしひで)官房長官)として、進展状況を直接確認できると強調、こうした北朝鮮の対応が日本独自制裁の解除という判断につながった。
再調査の開始が確認できれば、政府は人的往来の規制措置▽北朝鮮居住者への送金、現金の持ち出しに関する届け出規制▽人道目的の北朝鮮船籍船舶の入港禁止-の3つの独自制裁を同時に解除する。
北朝鮮は、人的往来規制の解除に最も期待を寄せている。北朝鮮が平成18年7月に弾道ミサイルを発射して以降、日本政府は人的往来規制を強化し「ヒト」の往来を遮断してきた。この規制がなくなれば在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)幹部の再入国も許され、北朝鮮指導部が総連幹部に直接「指導」することが可能になり、「カネ」の出入りを増やす突破口になる。
一方で日本政府は、輸出入の全面禁止と北朝鮮からの航空チャーター便乗り入れ禁止、「万景峰92」の入港禁止などの独自制裁については継続する。特に輸出入の全面禁止は、北朝鮮の外貨獲得を困難にしている。北朝鮮は再調査進展の見返りにさらなる制裁解除を要求するのは確実で、これらの解除の是非も今後の焦点となる。(山本雄史)