徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

雅の月、花と霞の里にて 5

2019-10-31 21:07:20 | 小説










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 そして吹いた。
 悶絶する僕に、ヤクシャ童子さんが水を差し出し、さらに周りの鬼をいさめてくれた。
 「おいおい、何をしとるんだ。人間にこれはちとキツいと言われたのを忘れたか。ほれ、水じゃ」
 「……あ゛、あ゛りがどゔござ゛います……」
 「おおっ、そういえばそうだったか」
 「人間なんぞと酌み交わすなど、久方ぶりすぎて忘れておったわ」
 「すまんのぉ、坊ちゃん!」
 残念ながら、謝られてる気がしなかった。いや、まあ悪意がないからいいけどさ……
 「やれやれ……。好みの酒があれば用意させるが?」
 「いえ、お気遣いなく……。今のがだいぶ効きました……」
 「それでは茶にしよう。鬼の宝珠茶は人間にも好評だ」
 そう言ってヤクシャ童子さんは奥へ向かって声を張り上げた。もらった温かいお茶は、五臓六腑に沁みわたるぐらい美味しかった。

 宴もたけなわの頃、僕はトイレに立ったついでに、少し縁側に出てみた。
 縁側というと普通、庭と家の間をつなぐものだと思っていた。けど、この家の縁側は、文字通り家の縁(ふち)だった。枝からほんの少し外に張り出しただけだから、足を踏み外したら下へ真っ逆さまだ。



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