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「そう言うと思うたわ。前に来たときもわしらと同じくらい飲み食いしておったからなあ。そんな小さな体によくもあれだけ入るものよ。はっはっは!」
そうと決まれば僕たちは、寝泊まりする部屋で荷物を下ろしたあと、すぐに広間へと案内された。鬼の宴会、なんて字面だけを見ると恐ろしく感じるけど、大口を開けて笑い転げる鬼がいたり、芸を披露しては失敗している鬼もいたり、実際は気のいいおじさんたちの飲み会って感じだ。それこそ、僕の故郷でもよく見たような。
「盛り上がっておるようだな」
「おお、ヤクシャ童子!」
「家主のくせに来るのが遅いではないか!」
「そら、こっちへ来い!」
「我もいるぞ! 遠路はるばるやってきたのだ。我にも酒をもてぇ!」
「おお、本当に来たぞ! 懐かしい顔だ、200年ぶりぐらいか?」
襖を開ければ、ヤクシャ童子さんは大歓声で迎えられ、アダムは素早くそこに混ざるとさっそく、杯を傾けていた。僕のことは簡単に、アダムの連れだと紹介された。
「ほれほれ、坊主も飲みやれ。お連れも楽しんでおるようじゃしな!」
「あ、はい。では、いただきます」
小さなお猪口いっぱいに注がれた透明なお酒は、初めて嗅ぐ独特の匂いがした。おそるおそる口に含んだ。
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