徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

朝の月、世界と舞台の隙間にて 11

2020-05-02 19:03:40 | 小説





 本文詳細↓



 「ええ、そうね。彼を守ってあげることはできなかった。残された家族の慰めと、未来の標として海図だけはなんとか送り届けられたけど」
 「……ああ、そうだ。僕はそのおかげで今ここにいる。どうして僕は消されなかったんだ? 僕だって知っていた。この世界がおかしなことを」
 「それは君がこの天の火を掲げていたからよ。これは、私が落とした魔法の火。これがブロッケンたちに、君を私だと誤認させた。いくら私が疎まれていても、突然攻撃なんてされないわ」
 「……だからひいひいおじいさんは消されてしまった。天の火がなかったから。僕は借りられた。だってフィレモンがそうしろって言ったから。僕はフィレモンを知っていた。夢の中でそう聞いたから。ああ、そうだ、アルディオス、シャンシャリアン、エストアム。僕の知らない名前。人間が住む街の名前。全部、外の世界の街の名前だったんだ。あの夢も、あなたが?」
 「それはもしかして、他種族と相席できる夢のことかしら。だとしたら、私は何も知らないわ。その夢については、私も聞きたいぐらい。けど、だから君はこんなにも早く、無事にここに来てくれたのね。やっぱり君は、英雄にふさわしい人なのよ」
 英雄。
 『おめでとう。君はまたひとつ、英雄の高みへ登った』
 仮面の魔術師の台詞がふいに蘇った。
 「……アダム」



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