徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

彩の月、果樹と宴の町にて 7

2019-10-21 19:31:32 | 小説












 本文詳細↓



 マスターの指の先を追ってみれば、凛とした態度で上品にフルーツを食べている常磐色の毛のフェネネットがいた。
 「み、緑⁉ 聞いたことありませんよ……」
 「突然変異種なんだろうな。まあこいつも虐められてねえみたい……というよりむしろ過保護に守られてる感あるからな。大丈夫なんだろ。ほい、注文の品だ。酒はエメラルドクーラーとトリュフティーニだ。おすすめをってことだったからな、兄ちゃんの一杯目にはこれがふさわしいだろ」
 マスターが僕の前に置いてくれたグラスを見て思わず笑ってしまった。だって僕の髪と瞳の色は、母さん譲りの甘いミルクチョコレート色だから。
 「ああ、あとその黒毛のフェネネットな。どうも大の辛党なようなんだわ」
 マスターがそう教えてくれて、ようやく僕はこのフェネネットが何を言いたいのか察した。
 「そっか、君も辛いのが好きなんだね。もしかしたら、僕らが行った店にも行ったことがあるのかな。よろしくね、同士」
 差し出した僕の手の人差し指を、黒毛のフェネネットは嬉しそうに舐めて、額をこすりつけた。彼らなりの親愛を示す挨拶だ。
 ひらりと紙が横から飛んできたので何かと思ってみて見れば、さらりとした人間の文字が並んでいた。
 〝あんな気合の入った口の奴が二頭もいるとはな〟


コメント
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