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【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

『news23』党首討論で安倍首相の醜態一部始終! 自民党フェイク本配布問題で悪あがき、ルール無視に小川彩佳は…

2019-07-04 16:38:54 | 転載と私見
2019.07.04 11:27リテラ転載と私見

構成
➀【『news23』(TBS)での党首討論の安倍首相】
②【フェイク野党攻撃本に乗っかって「枝野は無責任」と主張を始めた安倍】
③【志位「自民党は出所不明の文書を議員に配るのか」のツッコミに安倍は…】
④【議論を「学級崩壊」状態にしたのは安倍なのに玉木の発言を「学級崩壊になるから」と制止】
⑤私見【安倍自民党の報道統制と闘うジャーナリスト群像】


写真:『news23』での党首討論(TBSニュースHPより)


Ⅰ:【『news23』(TBS)での党首討論の安倍首相】
 本日、公示日を迎えた参院選。昨日には日本記者クラブや民放のニュース番組で党首討論がおこなわれたが、またも安倍首相は醜態を晒しつづけた。とくに酷かったのが、『news23』(TBS)だ。

 同番組では、まず最初に街の声をVTRで紹介し、年金2000万円問題への不安や「軍事より社会福祉を」といった街頭インタビューを放送。そのなかで厚労省が2日に発表した「国民生活基礎調査」で1世帯あたりの平均所得が4年振りに減少したことなどを示したのだが、安倍首相は「現役世代の勤労所帯は月3万円増えている」と反論。「一回の発言は40秒まで」というルールを超過し、司会の小川彩佳キャスターから「40秒経ちました」と制止されたのだが、しかし安倍首相は「大切なことなので」とルールを無視して持論を展開。再び「ルールはお守りいただけたら」と言われても話をつづけた。

 その上、小川キャスターに「国民生活基礎調査」で生活が「苦しい」と感じる世帯が全体の57.7%にも達していることを突きつけられても、安倍首相はそのことをまるで無視。「一方で内閣府の調査では75%が『いまの生活に満足している』、これは過去最高の数字です」と言い、別の調査結果を持ち出して、話をすり替えてしまったのだ。

 本サイトでも過去記事で指摘しているが(https://lite-ra.com/2018/09/post-4228.html)、安倍首相が持ち出した内閣府の「国民生活に関する世論調査」はかなりバイアスがかかっていると言われているシロモノだ。一方、今回発表された「国民生活基礎調査」は厳しい生活を余儀なくされている人が増えていることを裏付けるものとなった。だが、安倍首相はこうした不都合なデータから背を向け、ひたすら論点をずらしつづける始末。

 そんななかでも、とくに安倍首相が恥ずかしすぎる論点ずらしに出たのが、例の“野党&メディア攻撃まとめ”トンデモ本問題が取り上げられたときだ。

『news23』では、小川キャスターが「選挙戦を前にちょっと刺激的な資料が出回っている」と言い、一冊の冊子を取り出した。本の名は『フェイク情報が蝕むニッポン トンデモ野党とメディアの非常識』だ。

 これは本サイトでも紹介したように(https://lite-ra.com/2019/06/post-4784.html)、自民党本部が参院選を前に党所属の国会議員に「演説用資料」として配布している本で、“立憲民主党の枝野幸男代表は革マル派に近い”だのといったネトウヨが流布しているデマ攻撃そのまんまの文章や、野党党首らを醜く描いたイラストを掲載する一方、安倍首相を誰だかわからないほどに美化したイラストとともに礼賛するなど、とても政権与党が配布しているとは思えないレベルの冊子。

 しかも、この冊子は「terrace PRESS」なるサイトからピックアップされた記事を加筆・修正したものを掲載しているというのだが、このサイトは意図的にgoogleの検索に引っかからないようにするタグが埋め込まれているだけでなく、運営者情報さえも記載されていないのだ。

 ともかく、安倍自民党はネトウヨフェイクニュースの総決算のような冊子を「演説用資料」として議員に配るという信じられない言動に出ているわけだが、『news23』では、この冊子に掲載された醜く描かれた野党党首や美化された安倍首相の挿絵をフリップで紹介。番組アンカーの星浩氏は「総理、これ国会議員に20部ずつですかね、配られているということですが、ご覧になられたことありますか?」と質問したのだが、対する安倍首相は、こんなことを言い出したのだ。

「あの、党本部でですね、いろんな冊子を配っていますが、あの、私、いちいちそれを見ておりませんので、まったく知らないんですが。無責任だと言えば、無責任だと思いますよ」


Ⅱ:【フェイク野党攻撃本に乗っかって「枝野は無責任」と主張を始めた安倍】
 テレビや新聞でも取り上げられて問題になっているのに、党を代表する総裁が「見てない」「知らない」って。しかし、まあ一応はこういう冊子を配ることを安倍首相も「無責任」だと認めるのか……と思いきや、じつはこの安倍首相が言った「無責任」というのは、問題の冊子のなかからフリップに抜き出された「枝野代表の無責任を嗤う」という見出しのこと。ようするに、安倍首相はトンデモ冊子の主張をそのままテレビで肯定してみせたのである。

 フェイクを振りまくトンデモ冊子を配布したことの責任はおろか、冊子と同じように「(枝野代表は)無責任だと思いますよ」とテレビの党首討論で言い出す総理大臣……。もはや絶句するしかないが、さらに驚いたのはこのあと。安倍首相は枝野ディスのあと、間髪入れずに、こうつづけたのだ。

「たとえば、立憲民主党と言いながらですね、憲法9条について統一候補を選んでいるにもかかわらず、共産党は『自衛隊、違憲だ』って言ってますね。で、枝野さんは合憲だと言っている。立憲なんだから、憲法の根本、安全保障の根本じゃないですか。それなのに、それを横に置いておいて統一候補っておかしいでしょ。とくに、福井県においては立憲民主党は候補者を擁立しない、島根、鳥取もそうですよね。共産党の候補者を、応援している。枝野さんに訊きたいんですけど、枝野さん、福井県に住んでいたら、共産党の候補者に入れるんですか?」

 冊子の話だったのに、いつのまにか野党共闘に難癖をつけはじめる──。まさしくトンデモ冊子を地でゆく安倍首相の話のすり替えぶりに、さすがにスタジオは一瞬ポカンと無言になったほど。そして、“いや、話が違うだろ”といった感じで一気にスタジオがざわつき、小川キャスターも元の話題を戻そうとしたのだが、安倍首相はその進行を遮り、こうまくし立てた。

「ちょっとねえ、そのマンガ(挿絵)なんかより、大切なことじゃないですか」

「マンガなんかよりも」って、アンタたちが配っている冊子なのに……。こうして安倍首相は必死になって野党統一候補が問題だと叫びつづけたのだが、一方の枝野代表は「生活防衛こそがいまの国民のみなさんのいちばんのテーマであり、その点で一致している」「安保法制は違憲であり変えるべきだということできちっと合意している」と冷静に反論、「何もどこか指摘されるような問題があるとはまったく思っておりません」と淡々と返答した。

Ⅲ:【志位「自民党は出所不明の文書を議員に配るのか」のツッコミに安倍は…】

 だが、安倍首相の暴走は止まらない。「それは違いますよ! ちょっと待って、ちょっと!」「すいません! いまの、いまの大切な点なんです!」などと声を上げ、星氏の進行をシャットアウト。これには共産党の志位和夫委員長も「自衛隊違憲か合憲かという点では立場は違うが、いま問われているのは合憲か違憲かではない。安保法制という立憲主義を壊して憲法違反の法律をつくったことは許せないということで一致している」と枝野代表と同様に強調。さらに冊子について「もうコメントは要らないと思う」としながら、「出しているところはテラスプレスっていうんですか? 出所不明ですよ。安倍さんね、出所不明の文書をね、自民党の本部として国会議員に配るんですか? これ一点を取ってもね、ほんとうに選挙を真面目にやる資格がないと言われてもしようがないですよ」と安倍首相を諭したのだが、安倍首相に聞く耳はなく、またもこう喚いた。

「先程申し上げましたように、私、読んでないですから、反論のしようがないんですよ。いま、いきなり言われたんですが、そんな似顔絵なんかよりもですね、中身についてちゃんと……じゃあ憲法だったら憲法の論争をしましょうよ、星さん!」



 わかりやすいまでに露骨に慌てふためき、何が何でも冊子の話からずらすために野党共闘批判を繰り返す安倍首相。まるでそれが野党の急所であるかのように安倍首相はワンワン吠えるのだが、他方、枝野代表は「私、福井県民なら野党統一候補に投票します」とあっさり返答。それでも安倍首相は「立憲民主党、立憲主義なんでしょ? それを横においておくというのは極めて無責任」などと暴走を止めようとはしなかった。

 自分の党が配布した冊子が問題になっているのに、とにかくそれを無視し、自分の言いたいことだけを言いつづける……。これにはほとほと呆れたように、冊子で攻撃対象となっている野党側も「こういう冊子はやめてくださいよ」(国民民主党・玉木雄一郎代表)、「この冊子については、反省してくださいよ」(志位委員長)と述べるに留まり、“ゆ党”たる日本維新の会の松井一郎代表までもが「出所不明のものをね、まあ自民党も配るのはこれは大人げないと」と苦言。

 しかし、松井代表はつづけて「大事な参院選挙の党首討論で、出所不明のアレをね、本をね、TBSが、TBSが取り上げてやるような話なんかなと、思いますけどね」とメディア批判で安倍首相をフォロー。安倍首相も「私も知りませんよ! 必要ないでしょ! 何のために! くだらなすぎますよ!」と興奮し、この冊子の話題は終わったのだった。

Ⅳ:【議論を「学級崩壊」状態にしたのは安倍なのに玉木の発言を「学級崩壊になるから」と制止】
 いかがだろう。もはや安倍首相の態度は無責任というようなレベルではないことがわかっていただけるかと思うが、じつはこのあとも安倍首相は、日米貿易交渉でトランプ大統領との「密約」があるのではないかと追及する玉木代表に「密約だ、密約だって言うのは勝手ですけど、じゃあ、なんか証拠でもあんの?」とガラの悪さを露呈。その上、こんな台詞まで吐いたのだ。

「私がしゃべってるあいだ、玉木さん、静かにしていただけますか? 学級、崩壊した学級みたいになっちゃいますから」

 さんざん話題をずらしてギャンギャン吠えて学級崩壊状態だったお前が言うか……という話だが、これが日本の総理大臣の姿なのだから笑うに笑えない。ただひとつたしかなのは、安倍首相こそが自民党が配布したトンデモ冊子を実践・体現する者だということだ。

 きょうからの選挙戦でも安倍首相は、国民が不安を抱く年金問題では恣意的な解釈をした都合のいいデータを並べ立てて粉飾し、またぞろ野党批判を街角でがなり立てるのだろう。こんな低レベルかつ国民と向かい合わない政権与党でいいのか。有権者は冷静な判断をしていただきたいものだが……。

(編集部)

Ⅴ:私見【安倍自民の報道統制と闘うジャーナリスト群像】

 安倍晋三氏が政権を担当して、どれだけの報道人が現場を引退させられたことか。
NHK「クローズアップ現代」の国谷祐子さん、NHKの相澤冬樹氏。TBS「news23」の岸井成格氏・膳場貴子さん、テレビ朝日「報道ステーション」の古館伊知郎氏、「Jチャンネル」のコメンテーターの大谷明宏氏。
これで全員ではなく、多くの被害者がいる。
 さらに眼の前で相次ぐ圧力を見て、萎縮したり暮らしのためにやむなく自粛せざるを得なかった方々も多数いよう。
 今回の「news23」は、小川彩佳キャスターとそれをフォローした星浩アンカーも、協力して政治報道の根幹を保つ努力を試みた。
 厳しい日本社会の報道・言論の第一線で、権力者の恫喝と同僚へのアメの篭絡で自らがムチを奮われる。それでも日本の報道をまともな報道を貫き続ける闘うジャーナリストたちを私たちは尊重しなければ、誰が日本の言論・報道の砦を守るのだ?! 
 TBS『報道特集』など良心的健闘番組のテレビばかりか望月衣塑子ら東京新聞など日本のジャーナリストは、週刊金曜日を今も守る本多勝一、OBの村上義雄、在野の佐高信、日刊ゲンダイ、リテラ、しんぶん赤旗、全国中の琉球新報、沖縄タイムス、田崎基氏ら神奈川新聞など力強い地方新聞。

 究極的に、要は受け手の私たちの課題なのだ。

『リテラ 』終了する上田晋也『サタデージャーナル』の後番組MCに「安倍政権元厚労相の娘」起用…TBSも政権に屈服か【転載と私見】

2019-06-19 21:47:11 | 転載と私見

画像1:『まるっと!サタデー』は自民党議員の娘がMCに!(番組HPより)

構成
❶【終了する上田晋也『サタデージャーナル』の後番組MCに「安倍政権元厚労相の娘」起用】
❷【テレ朝に続きTBSでも薄まる政権批判色…小川彩佳の『news23』でも】
❸【唯一の期待は駒田健吾アナ 辺野古土砂投入のときは魂のレポート】

➃【私見】それでもなお   櫻井 智志



Ⅰ:【終了する上田晋也『サタデージャーナル』の後番組MCに「安倍政権元厚労相の娘」起用】
 昨日、上田晋也(くりぃむしちゅー)がMCを務める土曜早朝の報道番組『上田晋也のサタデージャーナル』(TBS)が6月で終了するというニュースをお伝えし、本サイトにも大きな反響が寄せられた。政権批判に踏み込んできた数少ない番組が終了するということもあり、突然の終了は首をひねりたくなるものだったが、新たにとんでもない事実が判明した。

『サタデージャーナル』の後番組としてスタートするのは、『まるっと!サタデー』。そして、この番組のMCを務めるのは、先日『NEWS23』(現『news23』)を卒業した駒田健吾アナウンサーと、初のMCに抜擢された入社2年目の田村真子アナウンサーだ。

 だが、じつはこの田村アナ、自民党のベテラン議員・田村憲久衆院議員の娘だというのだ。

 田村アナをめぐっては、2017年4月に「週刊新潮」(新潮社)が「「中山美穂」そっくり「田村前厚労相」美人愛娘が女子アナになる」というタイトルでTBSから内々定を受けていると伝えたが、実際に翌2018年4月にTBSに入社。昨年12月に放送された年末特番『爆笑!さんまのご長寿グランプリ2018』では「(父が)以前、厚生労働大臣をやらせていただいて」「それにプレッシャーを感じてしまったり」と語り、父が田村元厚労相であることを明かしている。

 一方、田村アナの父である田村憲久議員は現在、石破派の水月会に所属するが、安倍首相は第一次安倍政権では総務副大臣、第二次安倍政権では厚労大臣に抜擢。厚労相だった2014年にASKAの薬物問題で持ち上がった人材派遣大手パソナの接待施設「仁風林」に出入りしていたことが発覚するなどで続投とはならなかったが、その後の組閣でも入閣候補者として名前が取り沙汰されてきた。

 しかも、田村議員はあの「アベノミクス」の名付け親でもある。

 民主党政権時代の2011年、超党派による「増税によらない復興財源を求める会」が発足したが、このとき安倍を会長に担いだひとりが田村議員だったという。そして、総理に返り咲いた安倍に、田村議員はレーガノミクスをもじったあの言葉を伝えたという。たとえば、2014年11月21日付けのブログで田村議員は、〈アベノミクスというワードは2年前に解散後、一番最初に田村が安倍さんに「いよいよアベノミクスですね。」と伝えた言葉だ。(少なくとも安倍総理はそう認知している)〉と記述している。

 こうした関係からか、田村議員は石破派に所属しながらも、総裁任期の延長が決まった2017年3月5日には、やはりブログで〈歴代最高の仕事人総理の安倍さん〉〈総裁任期は3期9年に延長されましたが、強く頼りがいのあるリーダーが世界的に求められる時代にこれは趨勢でしょう〉と絶賛している。

 そんな田村元厚労相の娘が、果敢に政権批判をおこなってきた『サタデージャーナル』のあとにはじまる新番組でMCを務める──。

 これをみると、忖度なしのMCとして存在感を放ってきた上田晋也と番組を潰して、政権批判色を一掃。新番組で自民ベテラン議員、しかも安倍政権での大臣経験者の身内を登用することで安倍自民党に媚を売ろうとしているとしかか思えない。

Ⅱ:【テレ朝に続きTBSでも薄まる政権批判色…小川彩佳の『news23』でも】
 もっとも、TBS関係者に取材すると、局内ではそういう話にはなっていないようだ。

「今回の番組改変について、局内で言われているのは、経費削減です。上田さんはじめコメンテーターも芸能人を起用したりで時間帯のわりに金がかかっていた。自前のアナウンサーを使えばタダですから。田村アナについても、すでにストレートニュースなどを読ませてますから、そこまで深い意図はない。ただ、新番組の『まるっと!サタデー』は、フジの『めざましテレビ』みたいに芸能やスポーツなどを増やすとも言われているので、結果的に、上田さんの『サタデージャーナル』のような踏み込んだ政権批判はほとんどなくなるかもしれませんが……」(TBS関係者)

 苦境のテレビ業界で「経費削減」と言われるともっともらしいが、しかし、TBSはこのところ、全体的に政権チェックの姿勢がどんどん弱くなっているとの指摘もある。たとえば、今月からはテレビ朝日『報道ステーション』でサブキャスターを務めていた小川彩佳アナウンサーがその舞台をTBSに移し、『news23』のメインキャスターとして登場。期待感が高まっていたが、蓋を開けてみると、初日から杉田水脈議員によるヘイトスピーチとそれに抗議する当事者やカウンターの声を同列に扱って問題の本質を矮小化したり、論文に重大な誤りが見つかった早野龍五氏とともに福島第一原発事故の「安全」神話を振りまいてきた糸井重里氏をゲストに迎えるなど、目も当てられない特集を連発。年金問題などでも報道し始めたのは他局よりも遅く、徹底追及の姿勢は見えない。

 テレビ朝日が早河洋会長と安倍首相の癒着で、政権批判報道をどんどん潰しているのは、本サイトでも何度も取り上げているが、TBSも同じようなことが起きているのではないのか。

Ⅲ:【唯一の期待は駒田健吾アナ 辺野古土砂投入のときは魂のレポート】
 そう考えると、新番組の『まるっと!サタデー』がどうなるのか、不安にならざるをえないが、唯一の期待は、MCの駒田アナの存在だろう。駒田アナといえば、『NEWS23』では、2017年の総選挙を前に安倍首相が出演した際にモリカケ問題について勝手な言い分を喋りまくる安倍首相に食い下がるなど、ジャーナリストとして気骨ある面を垣間見せてきた。

 なかでも、駒田アナは昨年12月、辺野古に土砂が投入されたときに現地を取材。声を詰まらせながら、「本土の人は無関心だし、みなさん辺野古が唯一の選択肢だということにもう頭から信じ込んでいるんですよね。これは、本土の人もですね、ここはひとつ考え方を変えてですね、ぜひ沖縄の方になんとか寄りそっていただきたいときょうは思いました」と訴えた。



 安倍政権の強大な権力に圧殺されようとしている沖縄の声を、しっかりと伝えた駒田アナ。そのジャーナリズム精神を、ぜひ新番組でも見せほしい。そうでなければ、忌憚なく政権に斬り込んだ上田と『サタデージャーナル』スタッフが浮かばれないだけではなく、なによりも視聴者に対する裏切りとなるだろう。

(編集部)

Ⅳ:【私見】それでもなお
TBS一局で、反安倍政府体制は、貫徹しきれない。それでもTBSに期待するのは、数々の気骨あるジャーナリストが長く健闘してきたからだ。いまの厳しい時代に、TBSはラジオもテレビも健闘している。
 「報道特集」「news23」も、他の番組もだ。
テレ朝も朝の報道番組も夕方も。リテラの的確で正確な指摘を踏まえたうえで、もしも自分はその職場にいたなら、私はどう選択してゆくか。自分の身にひきつけて、事態の進行に冷静で持続的なスタンスをめざしたい。

高致死率ウイルス初輸入へ 今夏にもエボラなど 感染研「了承」【転載と私見】

2019-05-31 20:07:58 | 転載と私見
2019年5月31日 東京新聞転載

・Ⅰ:東京新聞 高致死率ウイルス初輸入へ 今夏にもエボラなど 感染研「了承」(2019年5月31日 朝刊)

・Ⅱ:良心的科学者に見る感染研の未来     櫻井智志





Ⅰ:転載記事

写真:
学校や住宅地に隣接する国立感染症研究所村山庁舎=30日、東京都武蔵村山市で


 致死率の高い病原体を扱う施設の安全性を不安視する声は少なくない。実際、海外のBSL4施設では、危険なウイルスを使った実験で誤って感染した研究者が死亡する事故が起きている。三十日に同研究所村山庁舎で開かれた地元自治会などとの協議会でも、住民から「安全性に百パーセントの確証を持てない」と反対する意見も上がった。

 感染研が二〇一五年に公表した資料によると、〇四年にロシアの研究者がエボラウイルス感染のモルモットから採血する際に針刺し事故で感染し、死亡。〇九年にもドイツで針刺し事故があった。BSL4施設の整備を目指している長崎大によると、過去に少なくとも四カ国で六件の針刺し事故が確認されている。厚労省側は「これらは外部への漏えいに至っていない」と強調する。

 だが、感染研の元主任研究官で市民団体「バイオハザード予防市民センター」共同代表の新井秀雄さん(77)は「海外では誤って感染した人を施設内で治療する所が多い。日本のBSL4施設で事故があったら病院へ搬送することになっている。(海外で漏えいがないとしても)単純に参考にできない」と話す。

 この日の協議会を傍聴した地元の田中千恵さん(73)は、施設が特別支援学校や小学校に隣接し、住宅にも囲まれている点を不安視する。「事故が起きたら真っ先に危険にさらされるのは子どもたちではないか。それが一番心配」と話した。

 施設を巡っては、地元住民が将来的な移転を求めてきた経緯がある。協議会で「施設の移転が担保されていない状況で、輸入には賛成できない」と反対した雷塚自治会事務局長の須藤博さん(72)は終了後、報道陣の取材に「今日は報告を受けただけ。日本の技術革新は必要だが、住民の不安が起きないような場所でやるべきだ」と改めて早期移転を訴えた。


 国立感染症研究所は三十日、致死率の高いエボラ出血熱などを引き起こすウイルスを、国内に初めて輸入する方針を決めた。来年の東京五輪・パラリンピックを踏まえ、多様な国の人が集まり感染症が持ち込まれる可能性に対処するためという。ウイルスが運ばれる予定の東京都武蔵村山市の同研究所村山庁舎で同日行われた住民への地元説明会で、一部反対意見があったが、おおむね了承されたとしている。早ければ今夏にも輸入する方針。 (井上靖史、服部展和)

 同研究所には、二〇一五年に国内で唯一、致死率が最も高い感染症ウイルスを扱うことが許された「バイオセーフティーレベル(BSL)4」施設がある。病原体を輸入したり、所持するには厚生労働相の指定が必要なため、今後、感染症法に基づき、輸入と譲渡の指定を受ける手続きが進められる。

 輸入するのは、エボラ出血熱と南米出血熱、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病の原因ウイルス。いずれも国内に存在しないウイルスで、国内での感染症の報告例も一九八七年にあったラッサ熱の一例しかない。これまで計画的に輸入した例もないという。

 感染研によると、ウイルスは感染が疑われる患者の検査などに役立てる。昨年十一月に初めて方針を表明し、住民への説明会や見学会を重ねてきた。人為的ミスや災害による外部漏えいへの懸念について、感染研の脇田隆字所長は「安全対策、災害事故対策、避難対策を一層進め、情報開示にも努めたい」と述べた。



Ⅱ:私見

良心的科学者に見る感染研の未来  櫻井智志

 東京新聞記事の一節にこうある。
『、感染研の元主任研究官で市民団体「バイオハザード予防市民センター」共同代表の新井秀雄さん(77)は「海外では誤って感染した人を施設内で治療する所が多い。日本のBSL4施設で事故があったら病院へ搬送することになっている。(海外で漏えいがないとしても)単純に参考にできない」と話す。』

 新井秀雄氏は感染研の主任研究官だった。その新井さんが「自らの信条に嘘はつけません。」と言い切る。国家公務員で厚生省の国立感染症研究官として研究にずっと取り組んできた。定年まで3年。敬虔なクリスチャンでもある新井秀雄志氏は、新宿のど真ん中で大量に細菌やウイルスを扱う日本最大の病原体実験施設の危険性を内部から毅然と告発する。

 その経緯は新井秀雄著『科学者として』2000年11月に幻冬舎から出版されている。さらに映画『科学者として』(監督本田孝義氏)が東京のBOX東中野や大阪のシネ・ヌーヴオなどで同じ頃に全国上映された。
 最近、様々な伝染性の強い疾病が流行している。その危険性を十分に理解した市民たちが、科学者、住民たちとともに、住民への安全性を尊重しない感染研の実験強行の差し止めを要求する裁判闘争にたちあがった。東京地裁から、高裁、最高裁まで争われ、裁判は住民側の敗訴に終わった。
 だがこの裁判は広く日本の内外に問題の重大性を喚起した。原告団団長の芝田進午氏は地裁判決の年に、判決の直前に胆管がんでご逝去された。

 これらを背景に、この東京都東村山市の感染研村山庁舎へのウイルス初輸入の大問題が位置している。



 

新たな戦前に抗する羅針盤

2019-05-19 17:23:05 | 転載と私見
【新聞視写】池内了著『代替わり狂騒曲 天皇の政治利用に注意』全文と私見
櫻井 智志

Ⅰ: 序
左翼政党も左派知識人も深く言明していない領域を科学者が勇気をもって表明した。
池内了さんの『代替わり天皇の政治利用に注意』だ。だが新聞記事はネット上の電子版には無い。1960年是前後からどの新聞社も新聞購読の利益を企業広告の収益金額が上回る。巨大資本が広告を拒否したら、新聞社の経営は危うくなるのが現状だ。ネット掲載に危険があり新聞社が警戒するのは当然だ。読者が背景を読みこむべきだろう。読者が新聞社と記者の健闘を受け止め、自らを受け手であると共に送り手として自覚するべき刻だ。


Ⅱ:【池内了氏『代替わり狂騒曲 天皇の政治利用に注意』】転載

 私は従来、このコラムでは社会的な事象で評論することを避け、専門の科学・技術に関わる地味だが重要な問題を論じるようにしてきた。しかし新元号の発表以来、この一か月余り続いてきた天皇の代替わり行事に絡む一言感想を記しておかねばならないと思って筆を執った次第である。

 「天皇制の歴史は、天皇の利用者の歴史」とは林達夫が『反語的精神』の中で述べた言葉だが、天皇が「現人神」から「日本国の象徴であり日本国民統合の総意に基く」(以上、日本国憲法第一条)となっても、やはり本質的には政府が天皇の最大の利用者であることを示したのが、今回の代替わり騒動であったと言えるのではないか。

 新元号の決定過程に安倍首相が介入し、国書である『万葉集』から選ばれたと解説まで加えてみせたパフォーマンスは、内閣総理大臣たる自分が人々の時間までも支配していることを国民に知らしめる意図を感じさせる。
前もって新天皇になる予定の皇太子に対して「令和」を採用すると宣言したのも、時間の支配者は天皇ではなく、この自分であることを認識させるためであったのだろう。そうして、国民に対し「平成の終わり、令和の始まり」を広く演出して、あたかも時代が大きく変わるかのように錯覚させた。

 実際、新聞やラジオやSNS(会員制交流サイト)など、すべての情報媒体は「平成の終わり」の大合唱をし、退位の「おことば」に感激して天皇の在位時代を「言祝(ことほ」ぐ)ことになった。災害地や激戦地などへの訪問を高く持ち上げ、退位する天皇夫妻の人柄の良さばかりに話題が集中し、天皇制についての議論は棚上げとなってしまった。天皇を利用して天皇制の議論をタブーにしたのである。

 続く「令和の始まり」を合言葉のようにして、新元号に新天皇、五年先には新札にすることまで早々と発表し、まさに「令和元年という新たな時代」に相応しく、「新憲法」になだれ込もうという魂胆が垣間見える。具体的には、新天皇即位後の朝見の儀における「おことば」に、安倍政権による天皇利用の奥の手が仕込まれている。前天皇の即位の際には「皆さんとともに日本国憲法を守り」とあったのが、今回は「国民に寄り添いながら、憲法にのっとり」にしていることだ。この「おことば」は即位の儀の前に閣議決定を経ることになっており、安倍政権がそこに改憲の意を込めているとも読み取れる。天皇は「憲法を守る」という約束ではなく、いかなる憲法となろうと、ただ「憲法にのっとり」統合の象徴となると表明したにすぎないのだから。

 そもそも、沖縄・辺野古の問題をはじめとして安倍首相は「寄り添う」という言葉を連発しながらまったく「寄り添う」姿勢を示さず、今やこの言葉は無意味な修飾語となっているのだが、「おことば」にも使われているのは首相好みの口癖なのだろう。

 安倍首相は、「憲法九条に自衛隊を認知する条項を付け加えるだけで何ら変化はない」と言うが、実力部隊の存在を憲法に明記するのだから、九条の第一項の戦争放棄と第二項の戦力不保持の条項が空文化してしまうことは明らかである。新たに売りだした「令和まんじゅう」は餡(あん)に新味を付け加えただけと宣伝するが、実はじわじわと全身に毒をひそかに仕込んでいるようなものである。


 私たちは、天皇の政治利用に対し厳しく監視しなければならないのではないか。

(いけうち・さとる=総合研究大学院大名誉教授)


Ⅲ:【私見】
新たな戦前に抗する羅針盤
              櫻井 智志


 昏い時間の流れの中で
 あなたは沈黙している
 いまいうべき時に

 歴史の偶然は
 思いも知れない突然と偶然からとびだすから
 視野は広く目を見開き
 危険な兆候に
 ひとつひとつ意思表示をしよう
 持続できる範囲で
 無理せずに

 危機の予兆に
 豊かな抵抗とあたうる異議申し立て
 毅然と言おう

 黙ったまま飼い習わされていくなら
 いつか
がんじがらめに縛られ
 気がついたら
 何も言えなくなっている

 戦没学生の手記
きけ
 わだつみのこえ

 『人はのぞみを喪っても生きつづけてゆくのだ。

  手は泥にまみれ
  頭脳はただ忘却の日をつづけてゆくとも
  身内を流れるほのかな血のむくみをたのみ
  冬の草のように生きているのだ。

  同じ地点に異なる星を仰ぐ者の
  寂寥とそして精神の自由のみ
  俺が人間であったことを思い出させてくれるのだ。』

  私たちは
  現在
  ほんとうに精神の自由を実感しながら
  自由精神を保持しているだろうか

  戦時下に田辺利宏が堅持したような
  個性的な人間性と人格を
  ぎりぎりの非常線に居ても
  破壊されずに保守しているだろうか

  独裁者は
耳障りのよい言葉と
心理的マジックを携帯している
だがやがて自滅自壊して
権力没落の日が訪れる

その日が来るときまで
生きて生き続けること
自由精神の継承者として
次の世代へ


    -了―

【転載】リテラ 「北方領土を戦争で取り返す」発言の丸山穂高衆院議員だけじゃない、維新はネトウヨの巣窟だ!

2019-05-14 21:52:57 | 転載と私見
2019.05.14 12:50

(写真のみ記事と異なる小生の選んだ写真)


 またもや維新議員のトンデモ発言だ。日本維新の会の丸山穂高衆院議員が、北方領土をめぐる「ビザなし交流」の日本側訪問団に同行した際、「戦争しないとどうしようもない」などの発言をした。

 報道によれば、丸山議員は11日夜、ロシア側住人と日本側住人との「ビザなし交流」の友好の家で、訪問団の大塚小彌太団長が記者から取材を受けていたところへ、このように割って入った。

丸山議員「団長は戦争でこの島(北方四島)を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」
大塚団長「戦争なんて言葉は使いたくないです」
丸山議員「でも取り返せないですよね」
大塚団長「いや、戦争はするべきではない」
丸山議員「戦争しないとどうしようもなくないですか」


 言葉を失いかけるが、一応、つっこんでおこう。丸山議員は「戦争で北方四島を取り返す」と軽々しく言う。では、自衛隊員が奇襲をかけ、島々で生活する民間人を殺して制圧するというのか。それとも、主権をかけてロシアに宣戦布告し、全面戦争でも始めるのか。ロシアの反撃と報復、国際社会からの制裁はどのように想定しているのか。いずれにせよ、多くの血が流される。むろん、憲法違反でもある。

 そもそも「ビザなし交流」は、日本側とロシア側の住民同士の対話と相互理解によって、領土問題の平和的解決を目的とした取り組み。そこに、「戦争で島を取り返す」「戦争しないとどうしようもない」としゃしゃり出てきた丸山議員は、はっきり言ってどうかしているとしか思えない。

 日本テレビの報道によると、丸山議員はその後「基本的に酒をたくさんの飲んでいた」などと釈明し、謝罪した。丸山議員は2016年にも、都内で飲食した後、トラブルになった男性の手を噛むという不祥事をしでかしたことがある。当時、丸山議員はツイッターで〈猛省と自重の決意の証として自主的に、禁酒宣誓書を今井幹事長へ提出してまいりました。あらゆるトラブルを予防するため、今後の議員在職中において公私一切酒を口に致しません〉(2016年1月13日)と投稿していた。



 しかしながら、今回の発言は、酔っているかとか以前の問題だろう。むしろ酒が入っていたからこそ「戦争しないとどうしようもない」とあまりに軽々しく口をついたのではないか。ようは、この輩が常日頃から考えている本音にほかなるまい。

 そもそも丸山議員といえば、知る人ぞ知るネトウヨ議員。ネトウヨ御用達のネット番組『報道特注』の元メンバーであり、Twitterでも「帰化履歴を公表しろ」というようなヘイトまがいの発言や、露骨な安倍政権援護のリベラル派バッシングを繰り返してきた。そのタカ派気取りでネトウヨ気質丸出しの姿は、まさに、野党でありながら安倍政権にすり寄る「ゆ」党と揶揄される維新を象徴するような議員と言える。



【衆院に立候補した橋下徹の元秘書の講演会を在特会元幹部の団体が主催】

 今回の「戦争しないとどうしようもない」発言は、そんな愚か者による最も頭の悪い発言だが、もちろん、これは丸山議員個人だけの問題ではないだろう。周知の通り、維新の会は自民党と比肩するネトウヨ議員の巣窟と言っていい。

 その代表格が“暴言王”などと呼ばれて悦に入っている足立康史衆院議員だ。周知のように「アホ」「バカ」「死ね」が口癖で品性下劣そのもの。たとえば、加計学園問題では、朝日新聞の記事にリンクを貼るかたちで、〈朝日新聞、死ね。〉とツイート。また、森友学園問題では、辻元清美議員が豊中市に補助金を出させたなど、ネトウヨの間で流通していたデマをテレビで垂れ流し、街頭演説でも「森友問題は辻元のヤラセ」などと喧伝した。もっとひどかったのが、立憲民主党の蓮舫参議院議員(当時は民進党)の二重国籍問題のときだ。足立議員は、“蓮舫代表の言動は中国の回し者”とTwitterに投稿したあげく〈国籍のことを言うのはポリコレに反するので本当は控えたいのですが、ストレスたまると午後の地元活動に影響するので書いてしまいます〉などと「ストレス発散」でヘイトスピーチをバラまくことを自ら宣言してしまったのである。



 地元・大阪ではもっと露骨だ。2017年の衆議院選挙には、橋下徹氏の大阪市長時代の元秘書である奥下剛光氏が維新から立候補したが、その直前、ヘイト団体・在特会の元関西支部長である増木重夫氏が事務局長をつとめる団体が奥下氏を応援する講演会を開催しようとしていたことが発覚した。講演自体は取材の動きを知った奥下氏がキャンセルしたが、会には辻淳子・大阪市議ら維新の地方議員が参加していた。

 大阪では、こうしたかたちで維新とネトウヨ・ヘイト勢力の融合が進んでいるのだが、それ以前に政治家としての資質が問われる言動をする府議、市議が多数いる。維新所属または当時所属していた議員の不祥事をいくつか挙げてみるとこんな感じだ。

 経営していた整骨院で療養費をだまし取り詐欺罪で実刑判決をくらう市議、忘年会帰りに泥酔してタクシー内で暴れる府議、女子中学生らを集会に勝手に誘ってLINEで無視されると「ただで済まさない」「身元を特定している」などと恫喝する府議、宴席で女性市議の胸を触る写真が報じられ「触診です」と苦しい言い訳の市議、その女性市議の足の匂いを嗅ぐ市議、飲酒運転でひき逃げする市議(有罪)……。



【橋下徹が「自民党と協力して憲法改正のほうに突入していく」と宣言】

 そうしたことを踏まえれば、今回、丸山議員がぶちかました「戦争しないとどうしようもない」発言は、彼自身の問題というよりも、こうした人物に公認を与えている維新という政党のグロテスクな正体を象徴するものと考えたほうがいいだろう。

 しかも、看過できないのが、このネトウヨかチンピラが入り込んだ政党が、ヨダレを垂らしながら自民党との連立政権を狙っているという事実だ。いまも維新に多大な影響力をもつ橋下氏は、大阪W選挙で勝利した翌日に出演した『とくダネ!』(フジテレビ、4月8日放送)で「公明党を壊滅させる」と宣言。「そうすると、日本の政治構造も大きく変わります。自民党との協力がね、公明党じゃなくてもしかすると維新となって、憲法改正のほうに突入していく」とまで言い切っていた。



 一方、大阪では維新のプレッシャーに負けた公明党が「大阪都構想」を決める住民投票への協力を約束、強く反目していた自民大阪府連も住民投票の実施容認の方針を決めた。中央政界で、改憲をめぐって、同じような動きが起きる可能性は非常に高い。

 その意味でもやはり、維新の丸山議員の問題発言は、大阪での限定的な人気しかない「ゆ」党の妄言として片付けるべきではない。繰り返すが、現実問題として、維新は安倍政権を支える存在なのだ。領土問題でナショナリズムを煽りながら、自衛隊を名実共に軍隊化しようとしている安倍首相と、「戦争しないとどうしようもない」なる言葉が飛び出す維新の結託がもたらすものは、何か。言うまでもないだろう。

(編集部)

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【私見】
戦時下の「自由精神」の継承とは
              櫻井 智志


 昏い時間の流れの中で
 あなたは沈黙している
 いまいうべき時に

 先のことを
 眼前の絞られた
 定められたおきまりの定石に
 枠内で精力を費やす

 歴史のハプニングは
 思いも知れない突然と偶然からとびだす
 だから視野は広く目を見開き
 危険な兆候に
 ひとつひとつ意思表示をしよう
 できる範囲で
 無理せずに

 大局を見忘れず
 危機の予兆に
 豊かな抵抗と
 あたうる異議申し立ては
 毅然と言おう

 その言明も沈黙するなら
 いつかがんじがらめに縛られ
 気がついたら
 何も言えなくなっている

 きけ
 わだつみのこえ

 『人はのぞみを喪っても生きつづけてゆくのだ。

  手は泥にまみれ
  頭脳はただ忘却の日をつづけてゆくとも
  身内を流れるほのかな血のむくみをたのみ
  冬の草のように生きているのだ。

  同じ地点に異なる星を仰ぐ者の
  寂寥とそして精神の自由のみ
  俺が人間であったことを思い出させてくれるのだ。』

  私たちは
  現在時点において
  ほんとうに精神の自由を実感しながら
  自由精神を言動に展開しているだろうか

  戦時下に田辺利宏が堅持したぎりぎりの
  個性的な人間性と人格を
  破壊されずに保守しているだろうか

    -了ー

【広原盛明のつれづれ日記 2019-04-23 】 転載と私見

2019-04-25 06:06:19 | 転載と私見
Ⅰ:転載
沖縄・大阪衆院補選における自民2敗は〝予定の行動〟だった、大阪維新はなぜかくも強いのか(3)

 統一地方選後半戦と沖縄・大阪衆院補選の結果が出た。統一地方選の結果については何れ論じるとして、今回は沖縄・大阪の2つの衆院補選に的を絞って考えてみたい。選挙結果についての各紙1面の見出しは「衆院補選 自民2敗(完敗)」というもので、いずれもが夏の参院選に対する影響の大きさを伝える内容だった。具体的には「政権『常勝』に陰り」(朝日)、「自民、参院選へ立て直し」(日経)、「自民完敗 参院選に危機感」(産経)、「自公2敗 安倍政権に打撃」(赤旗)など、かなり与党に厳しい論調となっている。



 だが、選挙情勢を深読みすると、安倍政権とりわけ首相官邸にとって今回の衆院補選における2敗は〝予定の行動〟だったと言えるのではないか。沖縄は最初から「負ける選挙」と諦め、大阪は敢えて「負ける選挙」だと位置づけていたので、選挙前から「自民2敗」はすでに織り込み済だったのである。自民党関係者が「今回の補選はそれぞれの地域事情に基づくものであり、夏の参院選にはさほど影響しない」と言うのはそのことを指している。



沖縄選挙がもはや利益誘導策では勝てないことは、自民といえどもわかっている。あれだけ民意を踏みにじってきたのだから、今さらどんな利益誘導策も通用しない。沖縄県民の誇りが許さないからだ。一方、大阪は少し事情が込み入っている。安倍政権の政治戦略からすれば、維新とりわけ大阪維新は改憲勢力の「盟友」であり、これを潰すことは絶対にできない。まして、安倍首相と菅官房長官は橋下氏や松井氏と酒食を共にする昵懇の間柄であり、個人的にもきわめて親しい関係にある。首相官邸が創価学会幹部と共謀して大阪都構想住民投票に漕ぎつけたのも、政府の総力を挙げて大阪万博の誘致に取り組んだのも、すべては維新を安倍政権の「手駒」として使うためだ。



 日本第2の都市大阪で、知事・市長という手駒を自由に使える政治効果は大きい。野党共闘を分断する上でも公明党を手なずける上でも、維新を自家薬籠中の物にしておくことは首相官邸にとって政権維持のための最重要事項といえる。これに比べると、自民の国会議員1人や2人を失うことなど物の数ではない。安倍首相や菅官房長官が大阪ダブル選挙で自民候補の応援に入らず、また衆院補選では「負ける」ことがわかってから首相(だけ)がアリバイ的に応援演説に入ったのは、すべてこの判断に基づいている。



 安倍政権にとって、大阪ダブル選挙や衆院補選で維新が息を吹き返し、野党に流れるかもしれない無党派票を食い止めることができればこれに越したことはない。そのためにも夏の参院選の橋頭堡ともいうべき大阪衆院補選で維新が勝利し、その勢いを強めることができれば「何倍もお釣りが返ってくる」と踏んでいるのである。可哀そうだったのは大阪自民だが、なにしろ「弔い合戦」としか言えないような旧い体質のままだから、こんな連中は切り捨てても仕方がないと思われているのだろう。



 ところで、大阪衆院補選にはもう一つ大きな問題がある。それは、共産の議席を投げ打って野党共闘候補として出馬した宮本氏が惨敗したことだ。宮本氏の得票数は1万4千票、得票率は9%で候補者4人中の最下位だった。



【大阪12区衆院補選確定票数】

        60,341(38.5%) 藤田文武 維新  

        47,025(30.0%) 北川晋平 自新、公明推薦

        35,358(22.6%) 樽床伸二 無前

        14,027( 8.9%) 宮本岳志 無前、共産・自由推薦

        156,751( 100%)



 毎日新聞と共同通信社などが共同実施した出口調査によると、宮本候補が惨敗した構図があからさまに浮かび上がってくる。以下はその要約である(毎日、京都19年4月22日)。

(1)大阪衆院補選で投票した有権者の政党支持率は、維新31%、自民27%、公明9%、共産5%、立憲民主4%、無党派層21%などである。ここで注目されるのは野党支持率の驚くべき低さであり、共産と立民を合わせても9%、これに数字としては上がってこない国民や自由を加えてもせいぜい10%余りにしかならない。これでは表向き「野党共闘」を掲げても、有権者にとってはせいぜい「弱小政党の集まり=烏合の衆」程度にしか見られないのではないか。

(2)宮本候補への支持政党別投票率は、共産支持層77%は当然としても、立民支持層27%、無党派層9%とあまりに少ない(国民はゼロ)。立民支持層の大半(57%)は樽床氏に流れ、無党派層は樽床41%、藤田37%、北川14%、宮本9%に分散している。つまり、宮本氏は「野党共闘候補」として位置づけられず、泡沫候補レベルの投票しか獲得できなかったのである。

※朝日新聞の出口調査でも、無党派層の投票先は樽床35%、藤田34%、北川22%、宮本9%とほぼ同じ傾向が出ている。また宮本氏は、「夏の参院選で野党共闘を進めるべきだ」と回答した投票者の中の僅か10%しか支持されていない。つまり野党支持者や無党派層の中の共闘推進派の中で、宮本氏はその代表として認識されていないのである(朝日19年4月22日)。

(3)大阪都構想に対する賛否は、藤田投票者が賛成93%:反対4%(以下同じ)、北川投票者42%:52%、樽床投票者53%:38%、宮本投票者34%:62%である。「大阪都構想の実現で大阪を成長させる」「維新はそのための改革の旗手になる」という維新のアピールが広く有権者に浸透し、宮本投票者の3分の1までが大阪都構想に賛成しているという世論状況が形成されているのである。この世論状況を勘案しないで「大阪都構想反対」一本やりの公約を連呼しても、有権者の耳にはなかなか届かない。大阪を元気にする政策提起をともなわない安倍政権批判や大阪都構想批判だけでは、有権者の心を掴むことができなかった――。このことが、維新圧勝の背景であり、宮本氏惨敗の原因である。



 これに対して、沖縄衆院補選では名実ともに野党共闘のレベルを超えた「オール沖縄」の共闘体制ができあがっている。そして「オール沖縄」は、普天間飛行場の辺野古移設に反対という強固な世論によって支えられている。屋良投票者の89%が辺野古移設に反対であり、無党派層の76%、公明支持層の31%、自民支持層の18%が屋良候補に投票している(毎日、同上)。無党派層による屋良候補投票76%と宮本候補9%との間には、「天と地の差」があると言ってもいい。



 ところが、2つの衆院補選の結果を受けて立憲民主党の長妻選挙対策委員長は、「自民党の失速を感じている。(今後は)野党共闘を強力に進めていきたい」と語ったという(読売19年4月22日)。また、共産党の志位委員長は「宮本候補を先頭とするたたかいは、今後に生きる大きな財産をつくった」と述べている(赤旗19年4月22日)。大阪衆院補選の惨憺たる結果からどうしてこれほどの能天気な総括ができるのか、その真意はいっこうに分からないが、低迷している野党支持率をそのままにして形式的な野党共闘を組んでも結果は目に見えている。沖縄のように無党派層はおろか保守層の一部までも引き寄せることのできる政策を共有することなしには、夏の参院選はおろか衆参同日選挙にも到底対応することはできないだろう。


Ⅱ:私見


 広原盛明氏の結果分析ぬは、なるほど、と肯くことが多く、まなぶところが大きい。
では、日本共産党宮本岳志氏の無所属候補となり、野党共闘をよびかけた実践はどう評価されるべきか。私は宮本たけし候補と次々に応援が広がる様子を同タイムでネットで見てきたので、広原氏の分析は見事とうなりながらも、選択できた作戦としては、あれはベストに近いと思う。

 それでも、投票の数値を見ると驚愕の念に駆られる。

もはや日本社会の状態は、このような客観的情勢下に置かれている。
ここからの戦略は、仲間内での同感だけではなく、安倍政権首脳部の真相を見抜くことと、安倍自民党を支持する世間の社会心理を「あるがままに」見抜くことだ。

選挙戦で結果は意図と異なる場合でも、闘うことそして結果をできりだけ客観的に把握して、その対策をもとに再度挑戦すること。敗北を教訓化して闘い続けることだ。
そのような教訓として、広原盛明氏の分析は実に大切な見識と感ずる。





安保法をめぐる現在の日本を東京新聞記事を転載しつつ考える

2019-04-24 22:52:32 | 転載と私見
            櫻井 智志
構成
➀(新聞紙面から)安保法違憲訴訟 原告敗訴 札幌 全国22地裁で初判決
②【社説】安保法制判決 何も答えぬ司法に失望
③(紙面から)安保法初適用 自衛隊MFO(「多国籍軍・監視団」)幹部2人に防衛相辞令
④安保法廃止法案を提出 参院 5野党、共闘政策の柱
➄私見

Ⅰ:(新聞紙面から)安保法違憲訴訟 原告敗訴 札幌 全国22地裁で初判決
2019年4月23日【社会】面
この記事は電子版では発見できなかったが、同日に、社説は次のように明確に見解を述べている。

Ⅱ:【社説】安保法制判決 何も答えぬ司法に失望
2019年4月23日

 健全な司法か。「安全保障法制は違憲」と訴えた訴訟の全国初の判決が札幌地裁であった。だが、「訴えの理由がない」と原告敗訴。原告や証人の尋問も認めず、一刀両断する司法には失望する。
 集団的自衛権の行使を可能にした安全保障法制は憲法に反するのではないか-。多くの国民が抱いた疑問だ。長く日本政府が個別的自衛権のみを認め、「集団的自衛権の行使はその枠を超え、憲法上、認められない」と国民に説明してきたからだ。明らかに矛盾している。
 原告四百人余りは国家賠償を求める形で訴訟を起こした。平和的生存権の侵害による精神的苦痛などを理由とした。だから、原告たちには法廷で語らせないと、苦痛への理解は深まらない。証人尋問をしてこそ、裁判官も事実の認定ができるはずである。それらを排斥し、強引に審理を打ち切ったのは、乱暴である。原告の弁護団が「司法権力の乱用だ」と反発したのも理解できる。
 判決では「不安は抽象的」「自衛隊の海外派遣の蓋然(がいぜん)性はいまだ低い」などとの言葉が並んだ。しかし、この訴訟の核心は法律そのものが違憲か否かという点だ。
 政府答弁の矛盾に加え、安保法制の合憲性の裏付けとしている「砂川判決」にも致命的な問題がある。駐留米軍に関する一九五九年の最高裁判例である。ここで確かに固有の自衛権を持つと明示した。だが、あくまで個別的自衛権であるのは常識である。集団的自衛権はここでは全く問題になっていない。さらに判例には「一見極めて明白に違憲」ならば、行政行為を「無効」とできると踏み込んだ表現もある。だから、裁判官は「一見極めて明白に違憲」かどうかのチェックが求められるのではないだろうか。
 憲法との整合性への検討が全く見られない。むしろ判断を回避する理屈を駆使しているように感じる。司法に期待される役割の放棄とも受け止める。自衛隊のイラク派遣訴訟で、二〇〇八年に名古屋高裁は「平和的生存権は基本的人権の基礎で、憲法上の法的な権利」と認めた。今回はそれを「具体的な権利と解せない」と後退させた。納得できない。
 判決の根底には、司法は政治的問題に関わりたくないという消極姿勢がありはしないか。あと全国二十四の裁判所の判断が残る。三権分立の基本を踏まえれば、司法権こそ個人の権利侵害の訴えに誠実に向き合うべきだ。

Ⅲ:(紙面から)安保法初適用 自衛隊MFO(「多国籍軍・監視団」)幹部2人に防衛相辞令
(略)
「新任務の規制事実化」明治大学特任教授纐纈(こうけつ)厚氏に聞く
―派遣の意味は。
「中東の平和と安定に日本が貢献することは必要だ。だが、エジプトとイスラエルの軍事衝突の恐れは現在ほぼなく、MFOの役割も形骸化しっつある。派遣には、安保法の実績を重ねて自衛隊の新任務を既成事実化するとともに、海外での自衛隊の存在感を高めたい安倍政権の政治判断があったのではないか」(後略)

Ⅳ:安保法廃止法案を提出 参院 5野党、共闘政策の柱
2019年4月23日 朝刊

 立憲民主、国民民主、共産、自由、社民の野党五党は二十二日、他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法を廃止するための法案を参院に共同提出した。夏の参院選に向け、安倍政権への対立軸として違憲との批判が根強い安保法制の廃止を掲げ、野党共闘の基本政策の柱とする。
 安保法の廃止法案は、二〇一六年三月の同法施行に先立ち、同年二月に当時の民主、共産、維新、社民、生活の野党五党が衆院に共同提出したが、審議されないまま一七年九月の衆院解散で廃案となった。今回は再提出で、関連法を安保法制定前の状態に戻す内容。
 一六年七月の参院選では廃止法案を提出した野党五党のうち維新を除く四党が三十二の改選一人区全てに統一候補を擁立し、十一選挙区で勝利した。
 法案提出後の記者会見で国民の大野元裕氏は「参院選を前に、野党として統一した歩調をしっかりと打ち出すのが目的」と説明。立民会派の小西洋之氏も「他の野党と提出するのは、参院選前の野党共闘の観点からも大変重要で意義深い」と同調した。 (村上一樹)

Ⅴ:私見
  このような一連の流れを頭の中でぼおーっと考えながら、仕事の帰途、駅売りの夕刊フジのトップに『安保法廃棄5野党狂走』の見出しが飛び込んできた。その記事には、大和大学政治経済専任講師岩田厚氏の文章「5野党のあきれた安保法廃止法案提出」が掲載されている。 雑誌『世界』や『週刊金曜日』の読者は読まなくとも、スポーツ、芸能情報から風俗情報、セクシャルな記事・写真の掲載されている夕刊紙を仕事帰りのサラリーマンはさらっと飛ばし読みしつつ、いつの間にか、<野党はあきれたことやってる・・・>と情報は無意識に沈殿していく。
  野党の共闘が「安保法廃止」法案を提出したことは、きわめて貴重な行動である。小泉純一r郎内閣・安倍内閣は、連続して、中東への介入を契機に軍事立法と莫大な軍事兵器製造・米国からの爆買いに膨大な膨張予算を展開してきた。
 国内は政府決定にノー!と意思表示するものをことごとく潰しにかかる。政治団体、政党、報道局、ジャーナリスト、芸能人、音楽家。政府が危険とマークした人物には、別件で追い落とすためのネタ探しにカメラマンから公安刑事まで監視の目を光らせている。
 まさに、社会の表層での異変にとどまらない。日本の社会の仕組み全体の構造が変形し歪み崩れていく状態になっている。その根源は、日本社会の軍事システムへの無理矢理の強制移行にある。
 安倍自民党政権の即時退陣が要求される。同時に、日本の社会の構造、社会経済構成体の歪みを少しずつでもただしていく政治家や政党でなけtれば、なんら安倍自民党政権と本質は変わらない。
 改めて言うが、5野党共同の【安保法案廃止法案】は、軍事社会に坂を転がる勢いの 日本国を救う需要な問題提起である。―了―

【広原盛明のつれづれ日記】 大阪府議会、大阪市議会でも維新旋風の煽りを喰って野党各派は激減した、大阪維新はなぜかくも強いのか(2)

2019-04-14 17:52:18 | 転載と私見
改憲派「3分の2」時代を迎えて(その150)
2019-04-14



 2019年4月7日の大阪ダブル選挙投開票日から1週間、選挙の全貌が次第に明らかになってきた。統一地方選の後半が控えているので各党の選挙総括はこれからだが、野党各派は総括作業に苦しむのではないか。それほど見事な負けっぷりであり、単なる負け惜しみのコメントだけではすまされないからだ。まずは、知事選と大阪市長選の結果を地域別に見よう。以下は、その概要である。



(1)知事選では、政令市(大阪市、堺市)、府下31市、同10町村のいずれを取って見ても吉村候補(維新)が小西候補(自公、他)をほぼ6:4の割合で圧倒した。大都市から町村に至るまで維新票が平均して6割(強)を占めたことは、維新が浮動票の「風」に乗っているのではなく、安定した固定票によって支えられていることを示している【表1】。

(2)大阪市長選では、衆院選挙区別に見ると若干の差はみられるもの、いずれの選挙区においても松井候補(維新)が過半数の得票で柳本候補(自公、他)を大きく引き離した。また、大阪市における維新票は、知事選70万票(6割強)、市長選66万票(6割弱)でその差がきわめて少ない。「入れ替え出馬」という奇策が「知事・市長セット投票」という有権者の選択行動に結びつき、事前に不利が予想されていた市長選情勢を覆す結果となったのである【表2】。



【表1.大阪府知事選、市町村別得票数・得票率】

       吉村洋文(維新)    小西禎一(自公)    投票者数(含無効票)

大阪市     703,329(60.9%)   436,195(37.8%)   1,155,316(100%)

堺市      203,620(59.5%)   133,252(39.0%)    342,102(100%)

31市    1,309,216(65.6%)    660,218(33.1%)   1,996,038(100%)

10町村     49,938(65.3%)    24,535(32.1%)   76,451(100%)

計      2,266,103(60.9%)   1,254,200(37.8%)    3,569,907(100%)



【表2.大阪市長選、衆院選挙区別得票数・得票率】

                松井一郎(維新) 柳本顕(自公) 投票者数

衆院1区(中央・西・港・天王寺・浪速)122,685(59.1%) 81,927(39.5%) 207,537(100%)

衆院2区(阿倍野・東住吉区・平野) 106,605(53.9%) 88,803(44.9%) 197,897(100%)

衆院3区(大正・住之江・住吉・西成) 106,301(53.2%) 90,710(45.4%) 199,902(100%)

衆院4区(北・都島・福島・東成・城東)149,947(61.1%) 91,876(37.5%) 245,240(100%)

衆院5区(此花・西淀川・淀川・東淀川)124,583(58.4%) 85,321(40.0%) 213,204(100%)

衆院6区(旭・鶴見) 50,698(56.1%) 38,214(42.2%) 90,372(100%)

計      660,819(57.2%) 476,351(41.3%) 1,154,152(100%)





次に、府議選、市議選の結果の傾向についてである。前回統一地方選における両選挙の党派別得票数をまだ入手していないので詳細な比較はできないが、総じて大阪は府議選、市議選ともに革新・リベラル勢力が(著しく)後退しており、かっての支持層であった無党派層の大半が維新に流れているとみられる。



(1)府議選、市議選の党派別得票数は、維新が府議選では過半数、市議選ではそれに近い比重を占めて圧倒的な存在を示した。これに対して自民は両選挙とも2割前後、共産はその半分の1割前後、公明は府議選では1割、市議選では1.5割強であり、立民は影が薄い。【表3】。

(2)府議選は、定数1の選挙区が全53選挙区の6割近い31選挙区を占め、第1党派が議席を独占する傾向が強い(いわゆる「小選挙区制」の影響)。維新は、前回選挙の1人区で自民から議席を奪って躍進したが、今回は31選挙区で26議席(8割強)の議席を獲得し、また定数2以上の選挙区でも第1党の位置を譲らなかった。その結果、維新は前回の40議席に対して51議席を獲得し、過半数を制したのである。これに対して公明は現状を維持したものの、自民は9議席を失って15議席に後退した【表4】。

(3)大阪市議選は定数1の選挙区がなく、定数2が5選挙区(2割)、定数3以上が19選挙区(8割)と事実上の中選挙区制である。その影響で府議選のように大きな議席変動が起こることは少ないとされていたが、それでも今回は維新の躍進で共産が9議席から4議席へ半減(以上)するという激変が生じた。共産は市議会運営においてもこれまで無視できない影響力を発揮してきただけに、今回の大幅減によって議会運営に構造的な変化が起こることも予想される【表5】。



【表3.大阪府議選、大阪市議選、党派別得票数・得票率】

      維新   自民   公明  共産   立民  無所属  計

府議選 1,530,336 698,403 311,332 243,270 58,695 173,507 3,017,349

(%) 50.7 23.1 10.3 8.0 1.9 5.7 100.0

市議選  499,275 190,951 173,045 111,462 38,367  43,976 1,058,685

(%) 47.1 18.0 16.3 10.5 3.6 4.1 100.0



【表4.大阪府議選、定数別、党派別議席】

          維新 自民 公明 共産 立民 無所属 計

定数1(31選挙区) 26 3 ―   ―  ―   2 31

定数2(15選挙区) 15 7 8   ―  ―   ―   30

定数3(2選挙区)  2   2 2  ―   ―   ―    6

定数4(4選挙区)  7   2 4 1   1  1   16

定数5(1選挙区)   1   1  1 1 ―   1    5

計(53選挙区)  51  15 15 2 1 4   88

改選前 40 24 15 2 ―  3   88(欠員4)



【表5.大阪市議選、定数別、党派別議席】

          維新 自民 公明 共産 無所属  計

定数2(5選挙区)   5  2   2   ―   1   10

定数3(9選挙区)  15  6 5   ―  1   27

定数4(5選挙区) 10  3 5 ―  2   20

定数5(4選挙区)  8  4   4 4 ―   20

定数6(1選挙区)   2  2  2 ― ―    6

計(24選挙区)   40 17   18 4 4 83

改選前 33 21 19 9   2  86(欠員2)



 今回の大阪ダブル選挙(知事、大阪市長選)の結果については、各紙とも大きな紙面を割いて分析しているのであまり付け加えることもないのだが、府議選・市議選の結果はそれに劣らず重大な影響を与えるものと思われる。そのことに言及した数少ない解説記事に、毎日新聞(4月11日)の分析がある。以下、抜粋して紹介しよう。

 「7日投開票の大阪市議選(定数83)で共産党大阪市議団が9議席から4議席に半減し、56年ぶりに本会議で代表質問できない『非交渉会派』になる可能性が浮上している。大阪維新の会の大勝で立憲民主党は議席を得られず、議会の総保守化が進行している。大阪市議会では、代表質問権などを持つ『交渉会派』になるには内規で5議席が必要だ。共産党市議団が非交渉会派になれば、1963年以来。共産は今回、22人を擁立したが、瀬戸一正団長ら現職4人と元職2人を含む18人が落選。このままでは議会運営委員会に入れず、本会議での一般質問もできなくなる」 

 選挙結果を受けて、すでに公明には大きな変化が生まれている。大阪都構想の住民投票に向けての協議に公明が入らなければ、次期衆院選で公明現職がいる関西6選挙区で対抗馬を立てる―と維新から恫喝されているからだ。既得権益を何よりも大事にする「常勝関西・公明」のこと、「虎の子」の衆院6議席を失うことなど想像もできないだろう。いかなる犠牲を払っても取引に応じることは容易に予想されることから、遠からず大阪都構想法定協議会での議論が始まるだろう。そのとき、「反維新」各会派はいかなる行動をとるのか、これからの新たな戦略なしには事態に対応できない。今回の選挙総括はそのことと密接に結びついている。


【私見】
 大阪市議会の議席の現状は、危機的な様相を呈している。
➀大坂自民党は維新の会よりはまともで、リベラルである。日本共産党が自民党と共闘して府知事選・市議選で候補を擁立していることに異論はない。
②ただ、神奈川県知事長洲一二氏の3期目、川崎市長高橋清氏の2期目に、社共をベースとした初当選に旧民社・公明以外に、自民が相乗りした時点で地域の共産党は独自候補をたてるようになった。明確な変質を見越しての独自候補だった。
➂衆院大阪補選に、宮本たかし参議院議員が共産党から無所属の野党共闘候補として立候補。自由党社民党が推薦に回った。
➃立民・国民は公然とは明示していない。しかし、無所属元とうたった樽床伸二候補は、民進党が小池都知事の策謀で民進党解体をはかって「希望の党」を作った時の民進側から出た初代の代表代行である。そのような候補に国民党立憲民主党が明確な態度もあきらかにせず、野党共闘も投げ出している。
 以上4点を広原盛明氏の深い示唆から得たことに感謝している。


しんぶん赤旗【教育のつどい フォーラム活発討論 憲法と子どもの権利大切に】を読む

2018-08-20 00:28:17 | 転載と私見

序文  櫻井智志


写真:信濃毎日新聞転載 長野市で開幕した教育研究全国集会の開会全体集会=17日

 全教など多数の市民団体が共同で、8月17日から長野市で始まった「教育のつどい2018」。17日夜には、子どもと教育について、憲法と子どもの権利条約の視点を大切にしながら、保護者や地域住民、教職員、教育関係者がともに語り合おうと、七つのテーマで「教育フォーラム」が開かれた。「しんぶん赤旗」デジタル版はその様子を詳細に伝え、どの会場も、パネリストの報告をもとに、活発な討論が続いたようだ。しんぶん赤旗が「教育のつどい」取材団を編成した記事を再構成して、教育に対する国民の熱意と取り組みを、以下に記す。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲはすべて編集部の力作を転載させていただいたものである。


【Ⅰ: 主権者教育】
2018年8月19日
 
《学校運営参加通して》

 フォーラム「憲法を生かす学校・地域をつくる生徒の取り組みと主権者教育」では、会場いっぱいの参加者が、生徒の学校運営や社会活動への参加を通した主権者教育の実践について議論しました。
 首都大学東京の宮下与兵衛特任教授が基調報告。いま世界で、アメリカのオキュパイ運動やイギリスの「反新自由主義」への支持の広がりなど「ゆるやかな結合」を特徴とする新しい社会運動がおこっていると指摘。権利について学ぶと同時に、学校運営や地域活動に「自分がかかわることで社会は変えられると実感することが今の主権者教育に問われている」と強調しました。
 討論では、有賀久雄さんが長野県松本市の高校で、選挙の模擬投票を通して出された「公共交通の充実」などの生徒たちの要求を、生徒たち自身が議論するなかで「地域にも求められている」として、市議会に請願して採択まで至った実践を報告しました。
 長野県内の小林恵一さん、和歌山県の横出加津彦さんが地域との結びつきのなかで、主権者意識を強めてきた経験を報告。地域の祭りへの参加、生徒自身による路上マナー向上への取り組み、高校生の意見を取り入れたまちづくりなど、交流と話し合いを重ねる中で“荒れた学校”とされていた学校が、地域の活力となり、生徒自身も成長する場になっていると語りました。
 宮下氏が、長野県下では、1970年代以降すべての高校で「平和宣言」が作られ、憲法学習、平和学習が取り組まれてきたと報告。長野県の辰野高校では生徒、保護者、学校による3者協議会によって校則の改善などや授業改善を実現してきた取り組みが語られました。会場からは3者協議会の実践にかかわった男性が「生徒は、押し付けたルールは守らないが、自分たちで決めたルールは守る」と実感を語りました。



【Ⅱ: 多様性と共生】
2018年8月19日

《「人材」ではなく人間》

 フォーラム「『こうあるべき』からの脱出~多様性と共生について考えよう~」には120人が参加。「こうあるべき」という規範にたいして、「人材」ではなく人間を育てる教育が何を大切にするのかが話し合われました。
 コーディネーターの人間環境大学の折出健二教授が、事実をふまえた思考をくぐっていない先入観のもつ危険性を指摘。「学校スタンダード」などにみられる「こうあるべき」をどう考えるかと問題提起しました。
 長野県の中学校教師の中沢照夫さんは、前任校の「学校スタンダード」について語りました。数人の「荒れた」生徒を「抑える」ためにあちらこちらで鳴り響く教師のどなり声。職員会議のたびに繰り返される「いっさいの例外を認めない」、仕事ができるか否かで評価され、教師たちがしだいに思考停止に陥っていく状況を語りました。
 愛知県の2人の私立高校生が、愛知県高校生フェスティバルの活動を紹介。東北や熊本などの被災地、戦争跡地を訪ねるスタディーツアーで人々と交流して学び、学んだことを発信することによってさらに学びを深めていく様子を生きいきと語りました。
 首都大学東京の杉田真衣准教授は、誰もが性の多様性を織りなす一員であり、性的少数者への差別は誰にとっても人ごとではないと指摘。日常のたわいない会話の中にある「こうあるべき」という価値観が差別の構造をつくっていると話しました。
 会場からは、「処分で生徒は変わらない」「教師たちにも意味がわからないルールを子どもたちに押し付けている。高校生の発言を聞いて、中学生フェスもやりたいと思った」「教師が『こうあるべき』から解放されることが大事」などの発言が続きました。


【Ⅲ: ゆたかな“学び”】
2018年8月19日

《新指導要領で学校は》

 フォーラム「子どもたちにゆたかな“学び”を―新学習指導要領で子どもと学校は?」には約240人が参加し、国による統制が強まる中、教師や保護者がつながって子どものための教育を進めることが話し合われました。
 新日本婦人の会長野支部の宮澤里恵さんは、学齢期の子を持つ新婦人の会員らから聞いた学校の実態について報告。授業時間が増え、子どもが楽しみにしていた遠足などの行事が減った、小学校でも期末テストが行われるなど子どもがテスト漬けになっているという声を紹介し、「『学力アップ』にばかり力を注ぐようになってしまい疑問」と語りました。
 小学校教師の高野毅さんは、「特別の教科・道徳」について、教科書に従った子どもの実態に即さない授業で、「本当に道徳的な判断力がつくのか」と批判、「子どもの実感と現実に根ざした実践を」とのべました。
 地域での子どもの遊びと学びのための活動している京都のNPO法人「チャレンジクラブ」の森賢悟さんは、放課後の子どもの様子や学校の成績に表れない学びをと取り組んでいることを紹介。高校教師の西村太志さんは、高校の新学習指導要領で新設される科目「公共」の問題に触れつつ、「社会科は暗記科目」と思われている現状を変えたい、そのためには教師の教材研究の時間と教育実践の自由が必要だと指摘しました。
 コーディネーターの梅原利夫・民主教育研究所代表は「人間をはぐくむ営みに『数値目標追求』方式はなじまない」とし、「教育の場に人間らしいいぶきを」と呼びかけました。
 討論では、ゆたかな“学び”とはなにか、それを子どもに保障するため教育への統制にどう対抗するかなどを語り合いました。


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「まとめにかえての私見」 櫻井智志
 教育科学研究会の全国大会が8月10~12日に、神奈川県川崎市の法政二高を会場に開催された。ずっと恒例となっている「後援」を、主催地の市教委は出していた。それは教育に関わる地方公務員の常識を示す。だが、いくつかのフォーラムのひとつで「憲法をめぐる動きと教育実践」をとりあげたものがあることに、外部から苦情が寄せられ、市教委は後援撤回を出した。
 名古屋市では、文科省事務次官という事務方トップの歴任者前川喜平氏の講演への自民党文教部会部長副部長が、市教委と講演を行った校長に文科省とともに不自然な介入を行い世論の批判を浴びた。
 これらの各地の事態の中で、この長野の研究集会とフォーラムは、保護者や地域住民、教職員、教育関係者らの協力した熱意の中で今日の教育課題を掘り下げるとともに、多くの市民の支えによって、集会を実りあるものとした。むろん教科研全国大会や前川喜平氏講演会も充実した意義深い成功を収めた。
 教育をめぐる困難な課題と軍事的国家的介入がずけずけと浸透し、空気を読むことや沈黙することが教育の世界に蔓延している。このフォーラムの成果は教育の論理に則してより専門的なアドバイスを得ているし、素朴な疑問や素人の鋭い感覚も大切にしている。極めて今日的意義をもつ集いである。ー了ー
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リテラ転載『報ステ』政権批判潰しのチーフPは安倍応援団と“お友達”か!? 局上層部は株主総会で『徹の部屋』安倍ヨイショを擁護

2018-08-13 22:52:21 | 転載と私見
リテラ転載『報ステ』政権批判潰しのチーフPは安倍応援団と“お友達”か!? 局上層部は株主総会で『徹の部屋』安倍ヨイショを擁護
2018.08.12
構成(構成&転載責任&私見:櫻井智志)
1【『報ステ』政権批判潰しのチーフPは安倍応援団と“お友達”か】
2【イージス・アショアの配備問題も放送予定に含まれながら放送されず】
3【『報ステ』だけじゃない!親安倍一派によるテレ朝報道の骨抜き化が止まらない】
4【株主総会で「放送法違反」と追及されたAbemaTVの見城徹“安倍ヨイショ”】

写真:テレビ朝日公式HPより

1【『報ステ』政権批判潰しのチーフPは安倍応援団と“お友達”か】

 先日、本サイトで配信した『報道ステーション』(テレビ朝日)の“政権批判をしなくなった問題”を伝えた記事は、大きな反響を呼んだ。
 『報ステ』といえば、これまで、与党の乱暴な国会運営や政府肝いりの法案の危険性、さらには安倍首相やその周辺が推し進めている歴史修正主義などをたびたび批判。マスコミとして、権力の監視にしっかりと取り組む番組として知られていた。ところが、今年7月にチーフプロデューサーが交代してからというもの、そうした従来の政権批判や権力監視の報道がすっかりなりを潜め、当たり障りのないスポーツニュースなどをメインに扱うようになってしまったのだ。
 既報のとおり、そのチーフプロデューサーとは桐永洋氏。『報ステ』は従来、チーフが退くと内部から新チーフが昇格することが多く、それによって番組の基本方針を継承してきたとされるが、桐永氏は最近まで同局の朝の情報番組『グッド!モーニング』のチーフを務めており、いわば“外部”から『報ステ』に送り込まれたかたち。テレビ朝日編成局関係者によれば、「桐永さんは編成局の経験もあり、上層部のおぼえめでたい人物。早河洋会長の子飼いという指摘も一部にある」という。
 そんなことから、桐永氏の抜擢と骨抜きとなった番組制作の背景には、安倍首相とべったりの関係で有名なテレ朝・早河会長による“政権忖度”があったのではないかとささやかれている。
 しかも、桐永プロデューサーの政権批判放棄の姿勢はたんに早河会長にいわれて、というだけでなく、もっと積極的な意味合いがあるのかもしれない。
 というのも7月29日に本サイトが『報ステ』の報道姿勢の変容を伝えたあと、ネット上で、桐永氏と安倍政権周辺との関係を指摘する声が相次いだのだ。まずひとつめは、桐永氏が自身のFacebookに、自民党参院議員の丸川珠代元五輪担当相とのツーショット写真を掲載していたという指摘だった。丸川議員といえば、いうまでもなく、安倍首相の“喜び組”としてスピーカー的役割を担い、デマによる原発擁護や野党攻撃、忖度質問などで、しばしば非難を集めている側近議員。丸川議員はテレ朝の元アナウンサーで桐永氏とは同期入社だというが、わざわざツーショットを掲載していたとすれば、少なくともその政治姿勢に批判的ではないということだろう。
 さらにもうひとつ、桐永氏をめぐっては、信じがたい“SNS上の交友関係”も取りざたされている。あの準強姦事件を報じられた安倍官邸御用ジャーナリスト・山口敬之氏とFB上で「友達」になっていたという情報が拡散しているのだ。
 いずれもいまは桐永氏がFBを閲覧できない状態にしているため、真偽は確認することはできないが、以前のFBのスクショらしきものがネット上に出回っている。
 しかし、これだけの批判を浴びても、桐永氏は報道姿勢を変えるつもりはなさそうだ。たとえば7月30日、31日、8月1日も、例の自民党・杉田水脈衆院議員によるLGBTヘイトの問題をはじめとする政権に批判的なニュースを一切扱わなかった。いや、というよりも、政治報道自体がほとんどない状態で、甲子園や東京五輪などのスポーツ系の話題がメイン。言っておくが、これまでの骨太だった『報ステ』ならば、五輪について報じるにしても、酷暑問題などについての批判的な検証は欠かさなかったはずだ。


2【イージス・アショアの配備問題も放送予定に含まれながら放送されず】

 さらに、7月30日には、陸上配備型の弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」2基の配備費用について、防衛省が4664億円になるという見通しを発表したが、『報ステ』は、これまでイージス・アショアの配備問題を継続して特集してきたにもかかわらず、その日の放送ではまったく触れようともしなかった。なお、イージス・アショアについては「“地上イージス”配備候補地の今」という企画が、8月2日の放送予定に含まれていたが、9日現在になってもいまだ放送されていない。
 また、8月2日の放送では、他局の報道番組から一周遅れとも言うべきタイミングで、ようやく杉田議員のLGBTヘイト問題を扱ったが、じつはこの日は、自民党が「今後、十分に注意するよう指導した」などと公式見解を初めて発表した日。同日には安倍首相も「多様性を尊重するのは当然」などとコメントしている。
 ようするに、そうした自民党と安倍首相の“いいわけ”とセットにすることで、はじめて『報ステ』は番組内で取り上げたということらしい。事実、西日本豪雨災害をめぐる「赤坂自民亭」の問題を振り返っても、TBSなどがいち早く報じるなかで、『報ステ』だけは1週間後の7月17日になってようやく紹介したのだが、その日もやはり、安倍首相が同日の参院内閣委員会に出席して「いかなる事態にも対応できる万全の態勢で対応にあたってきた」と答弁したタイミングだった。こんどはテレ朝の報道局関係者が首を傾げて言う。
「杉田議員の件に関しては、現場からも『これはおかしいんじゃないのか』という声が漏れていると聞いています。現場のスタッフは7月27日の自民党前での抗議デモの模様をはじめ、関係者への取材もしっかり進めていたのですが、放送されたのがそれから1週間も後になった。普段は政府批判のデモをあまり取り上げようとしないNHKですら、デモ当日にその光景を報道していたにもかかわらず、です。上の“配慮”が働いたと思われてもしかたがない」(テレビ朝日政治部記者)
 もちろん、現場は懸命に抵抗を続けている。8月6日の広島の原爆記念日の放送では、小川彩佳アナは現地へ向かい被爆者たちを取材。核禁止条約をめぐる政府の姿勢について批判的なアプローチで、その取材の模様はかろうじて放送された。また、長崎の原爆記念日である8月9日の放送でも、スタッフが複数の被爆者にインタビューをし「なぜ首相は挨拶で核禁止条約に一言もふれないのか」「毎年同じようなことを言って、前進させようという気が少しも見られない」という日本政府、安倍首相への怒りの声を伝えた。

3【『報ステ』だけじゃない!親安倍一派によるテレ朝報道の骨抜き化が止まらない】
 だがそれでも、侵食するように『報ステ』の骨抜き化が進められているのは間違いない。事実、先日にはその広島で被爆者の声を取材した小川アナが番組を降板し、徳永有美アナに交代になることが発表された。小川アナは、古舘伊知郎がキャスターを務めていた時代、東日本大震災の直後から出演してきた番組の顔で、取材にも積極的に出かけ発言もリベラル。差別事件や政権の不正には厳しい発言もしていた。そんなところから、小川アナは現在の路線に抵抗を示した結果、とばされたのではないかという見方も流れている。 
 また、10月以降の金曜日の放送ではMCの富川悠太アナもお休みとなり、スポーツやカルチャーを中心にした内容に切り替えられるという。
「おそらく、テレ朝上層部は桐永氏が安倍政権に批判的でないでことを知っていて、チーフプロデューサーに抜擢したんでしょう。番組トップや報道のメインのスタッフを親安倍派にすげかえれば、いちいち圧力をかける必要はなくなる。テレ朝では今、そういう人事が進行しています」(テレビ朝日編成局社員)
 実際、先日のテレビ朝日の午前から午後にかけての情報番組『ワイド!スクランブル』でも、それを象徴する人事があった。露骨な安倍政権擁護を繰り返してきた“ネトウヨ局アナ”小松靖アナをメインキャスターに抜擢したのだ。
 しかも、早河会長ら上層部はもはや“政権への忖度”を隠さなくなってきている。たとえば、6月のテレビ朝日の株主総会の場でも、早河会長をはじめとする上層部が露骨に“アベ友擁護”を繰り出す一幕があった。
 それは、本サイトでも昨年報じた『徹の部屋』(AbemaTV)の問題について、株主から厳しい質問が飛んだときのこと。この問題をあらめて振り返っておくと、昨年の衆院選の公示日2日前の10月8日夜、テレ朝が出資しているインターネットテレビ・AbemaTVで、見城徹・幻冬舎社長がホストの番組『徹の部屋』に安倍首相が生出演。同番組で見城氏が「ずーっと安倍さんのファン」「日本の国は安倍さんじゃなきゃダメだ」「世界が外交においても認めている総理大臣は誰もいない」などとあまりに露骨なPRを展開したというものだ。

4【株主総会で「放送法違反」と追及されたAbemaTVの見城徹“安倍ヨイショ”】

 この問題ついては本サイトで詳しく取り上げてきた(http://lite-ra.com/2017/10/post-3528.html)が、今年6月のテレビ朝日株主総会のなかで、株主のひとりが同番組を「ひたすら安倍政権を礼賛する番組内容」「地上波なら間違いなく放送法違反」「公職選挙法に抵触しかねない番組」などと追及。AbemaTVにはテレ朝が40パーセント、サイバーエージェントが60パーセントを出資しており、同社の取締役会長に早河氏が就いていること、また、テレビ朝日の放送番組審議会の委員長を見城氏が、委員をサイバーエージェントの藤田晋社長が務めていることを念頭に、テレ朝側に対してAbemaTVの番組審査体制と見城・藤田両氏の放送番組審議会からの離脱の必要性を質したのだ。
 ところが、こうした指摘を受けた早河会長らテレ朝上層部の対応はけんもほろろ。むしろ、安倍首相の“オトモダチ”である見城氏らをかばい、歯が浮くような賞賛の言葉ばかりで、たとえば、報道局長の篠塚浩取締役が「基本的にAbemaTV社の判断での放送」と開き直れば、両角晃一取締役は「(見城氏と藤田氏は)大変豊富な事業経験とその高い見識から番組審議会で毎回貴重なご意見を頂戴している」などと持ち上げた。一方、ふたりの言葉を継いだ早河会長からは興味深い発言もあったという。
「早河会長は『徹の部屋』のヨイショ問題について『AbemaTVが自主的な放送ガイドラインを作っている』としたうえで、『テレビ朝日としても放送法を遵守する立場として、ガイドラインに関する情報をAbemaTVに渡している』と話していました」(テレビ朝日中堅社員)
 つまり、早河会長らテレ朝側は、選挙直前に露骨な安倍PR番組を垂れ流したAbemaTVに対し、その放送内容を事実上指導する立場にあるということを認めたのである。だとすれば、早河会長は一層、放送番組審議会委員長である見城氏の“暴走”を批判し、しかるべき処置をとらねばならないはずだろう。にもかかわらず、テレ朝側は総会で見城氏らをかばい、いまだに審議会という要職に置き続けているのだ。この総会での二枚舌こそ、今回の『報ステ』が政権批判をやらなくなった問題にも通じる、テレ朝上層部による安倍政権忖度のなによりの証左ではないのか。

 こうした事実を鑑みても、やはり『報ステ』に起こっている“異変”は、早河会長率いるテレビ朝日全体の“安倍ファミリー化”の延長線上にあると思わざるをえない。古賀茂明事件や古舘降板事件など、これまで『報ステ』は様々な政治的圧力にさらされながらもギリギリのところで耐え、視聴者からその報道スタンスが高く評価されてきたが、いよいよ、限界まで押しつぶされるということなのだろう。
 いずれにしても、このままでは「『報道ステーション』は死んだ」と言わざるをえない。この流れを食い止めるためには、視聴者ひとりひとりが番組とテレ朝に、まっとうな報道姿勢を求める声を大にしていくしかない。


(編集部)
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私見:進歩的文化人の代名詞のように朝日新聞の名前が使われてきた。事実そのような記者や報道人は朝日グループにいた。それを憂う村上義雄や本多勝一は別のメデイア媒体をつくった。いま報道の朝日は、大きく舵を切替得るのか。リテラ編集部が訴えるように「この流れを食い止めるためには、視聴者ひとりひとりが番組とテレ朝に、まっとうな報道姿勢を求める声を大にしていくしかない。」。