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憎めない男・アンダレーが生きていける社会

2012年08月29日 | インタビュー
憎めない男・アンダレーが生きていける社会


写真:『スリランカの民話』タランガッレー・ソーマシリ師翻訳

スリランカ人僧侶 タランガッレー・ソーマシリ師(千葉県・蘭華寺)は、スリランカの民話を日本語に翻訳されている。
『スリランカの民話』と題した書籍で、売り切れたため現在は第2集制作に取り掛かっておられる。

第1集に収録された話はどれも、登場人物の躍動感が素晴らしい。
道化師アンダレーという、人々を笑わせるために奔走する男がいる。
このアンダレーの物語は、短いエピソードがいくつもちりばめられている。

例えばある日の物語はこうだ。
王様の命により、国をあげた道路工事が始まった。しかし道をふさぐ大きな岩があり、国中が困っている。
王様は、この岩を動かした者に褒美をやるという。アンダレーは、自分が岩を動かすから体力が必要だと言い張って、王様から数カ月にわたってごちそうを頂く。約束の日にアンダレーは、この岩は自分で運ぶから、皆で自分の背中に岩を乗せてほしいという。王様もだまされたことに気付き大笑いをして幕が閉じるが、アンダレーはまた元の貧しい生活に戻る。

大切なのは、アンダレーが元の生活に戻る姿が示されていることだ。体をはって、数か月に及ぶ壮大ないたずらを見事に完成させて、その達成感と引き換えに、元の生活に戻る。

ここには、憎めないいたずらをする大人の男が生きていける世界がある。

また、民話には人間だけでなく、ジャッカル、トラといった動物たちが登場する。
人間たちは、彼ら動物に物事を相談し、知恵を授けてもらう。

スリランカの民話の中では、人間と動物の間には、人間優位の価値観が存在しない。
王様と道化師の間にも、立場の違いはあるが、それは人間の優劣にはつながっていない。

日本の昔話もそうだった。
そして、その世界観を、現代社会で再現して行くことは、大変に難しい。

今夏、実姉夫妻、ご友人の前田Y子さん(日本語教師)とともにご旅行されていたソーマシリ師とお会いした時に、そのことをお尋ねした。


写真:ソーマシリ師とお姉さん夫妻、前田Y子さん

――スリランカの民話で、人間同士、人間と動物、という関係の中でいのちの優劣がないのは、それはやはり、自然が豊かな国の特長なのかもしれませんね。日本の昔話が伝えようとしていたテーマと似通った内容に驚きました。己こそが唯一優れた存在なのだ、とは考えないこの価値観は、やはり、一人でも多くの人に伝えるべきです。


写真:ソーマシリ師

ソーマシリ師 そうですよね。だから、今、第2集を出版するために、翻訳をしているのです。日本とスリランカの友好を進めて行くことが、いのちの尊厳につながっていくように、働きかけたいのです。

スリランカ・平和寺の三輪日本語学校

前田さんは定期的にスリランカを訪問し、日本語を教えておられる。長野市・光林寺の西澤清文住職、ソーマシリ師とともに、ソーマシリ師が住職を務めるスリランカの平和寺に、三輪日本語学校という学校を作られた。この学校すでに運営がはじまっており、スリランカ人教師によって日本語の授業が行われている。年に1度は三輪日本語学校が主催して、スピーチコンテストが開催されている。

前田さんに、携帯電話で撮られた写真を見せていただいた。


写真:自分が何かをしてあげると思っていた相手が、実は自分に元気を与えてくれる。前田さんの携帯電話。

前田さんが語る。

…この素晴らしい笑顔。私は彼らからいつも元気を分けてもらっているんです。だから、支援と言うよりも、交流といったほうが良いのかもしれませんね。

それは、ボランティアの本質であり、それがそのまま、人間関係の本質、ご縁の本質だ。


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