スリランカ僧ソーマシリ師と東寺参拝

スリランカから来られている僧侶のタランガッレー・ソーマシリ師（蘭華寺＝らんかじ＝千葉県香取市）、浄土真宗本願寺派布教使の松林浄蓉師とともに、2012年7月、東寺（教王護国寺）を参拝した。


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東寺講堂、金堂には様々な仏像が祭られている。おそらく、そうだったはず…と思っていたことが、やはりその通りであって、私にとっても、ソーマシリ師にとっても、文化を体験することの面白さを感じさせてくれた。

それは、諸仏をどう解釈するか、ということだ。


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ソーマシリ師　不動明王像はほかの日本の寺院でも拝見しました。しかしなぜ、寺院に不動明王像があるのでしょう。スリランカもいたるところに仏像があります。いろんな顔をして形も様々ですが、でもそれはお釈迦様です。スリランカは、仏像と言えばお釈迦様の像のことです。日本に来て初めて不動明王像が寺院に祭られているのを拝見した時は、ずいぶんと、文化の違いを感じたものですよ。仏典には、もちろん、梵天など諸仏が出てきます。でもそれは、我々にとっては言葉だけの世界。

――そうですよね。梵天に対して、ことさらに、特別な気持ちで礼拝して行こう、という考え方にはならないですよね。

ソーマシリ師　なぜそうなるか分かりますか？梵天は神の中の神であり、悟りを開いた仏陀ではないですよね。だから、梵天は仏陀とは同じ意味にはなりえないのですよ。

――不動明王は悪いモノをさばくように、恐ろしい格好をされているが、それは、敵をやっつけ戦争に勝利をもたらす神などの意味ではなく、我々の心は煩悩にまみれているので、その悪い心を良い方向に導くため。大乗仏教にたくさんおられる仏は、そんなふうに、仏の様々な働きのひとつひとつを形にしたもの。だから、どの仏像にも仏教の精神が流れていますよ。


ソーマシリ師　ああ、そういうことなら良く分かりますね。そういう文化の違いは、尊重できますよ。


「お釈迦様がおられた時代は、きっとこうだったはず」という写真を撮影した。きっとこうやって、僧侶が木陰に立っていて、いろんな人がその話を聞いていた。2500年前へのオマージュ。

――布施と功徳、法施に関して

ソーマシリ師　スリランカ人は、どんなに貧しくても、その人がその時持っている何かを、差し上げたいという気持ちを持っています。それは来世の功徳。お釈迦さまがそう教えておられる。スリランカの仏教徒は子どものころからそれを知っています。だから、どんなに貧しくてもお坊さんに食事を差し上げる。自分の食事を抜いて、僧侶に差し上げることも珍しくないですよ。ダーナは、自分の煩悩を捨てて行く作業ですよ。


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――上座部の先生から、「日本人は『ジャータカ』を読まないので、過去・現在・未来がつながっていることを知らない人が多すぎる」と指摘されたことがあります。

ソーマシリ師　その通りですよ。過去・現在・未来のつながりについて、もっと注意するべきです。


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――貧者の一灯について。

ソーマシリ師　布施は、金額の多い少ないではないです。スリランカでも、布施は心の問題ですよと教えています。貧しいが心のある人が布施したお金が100円だったとして、それは、心のない大金持ちが布施した1億円よりもはるかに素晴らしいこと。私たちは、その価値観を大切にしています。

――スリランカの僧侶は、托鉢をしても食事に当たらない日などないですか？

ソーマシリ師　皆が行くわけではないから、当たらない人もいる。でも、信徒さんがご飯を持参して来られたりするので、なんとかなります。ちなみに、托鉢に、美味しいとかまずいとか、そんな発想はないですからね。「頂いたものを食べる。頂かないモノは食べない」それだけですから。好き嫌いは通用しません。だから、「ご飯と塩だけをもらったら、それで食べなさい」という指導を受けています。また、お金持ちの家ばかりを訪問するような真似はしてはならないのです。


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――スリランカに、Monastic School（寺小屋）はありますか？

ソーマシリ師　もともとは、日本と同じ、他の仏教国と同じように、スリランカにもMonastic Schoolはありました。でも、ポルトガルが侵略してきた時に寺小屋は廃止され、以降、政府の管理する学校だけになりました。

Fin.