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ブログ版「泥鰌の研究室」

 信州飯田周辺の方言(飯田弁)を発信しながら、日本語について考えていきます。

メンメロ

2004-11-12 | 飯田弁語彙の解説と考察
昭和28年に下伊那教育会が発行した「下伊那方言集-中間報告-」には、次のような記載があります。

 メンメロ はしばみ、うのはしばみ、やしゃぶしの総称 売木村

売木村に存在することばと「下伊那 方言集」には、書かれいます。残念ながら、「信州下伊那郡方言集」には、「メンメロ」の記述はありません。 ところが、平成9年11月に「在京飯田高校同窓会」が刊行した「飯田・下伊那の方言」を調べましたら、「メンメロ」は「ねこやなぎ」と解説しています。したがって、「メンメロ」は「ねこやなぎ」と理解してよいと思います。「はしばみ」とか「うのはしばみ」「やしゃぶし」とはどんなものか、私にはわかりませんが、売木村で使っているということを考えると、隣接する阿南町和合に「メンメロ」が存在していても不思議ではありません。しかも近隣の町村等の「方言集」などを調べると、昭和7年刊行の「伍和村方言集」、昭和61年刊行の「松川町の方言」などに「メンメロ」の記述はありません。売木、和合を中心としたこの地域独特のことばではないかと推察しています。 
「ねこやなぎ」は全国的にどのような異称で呼ばれているか、これについては、東京堂出版で刊行している「全国方言辞典」「分類方言辞典」で調べました。

いっこ 福島
いぬころ 和歌山県東牟婁郡
いんころ 石川県鹿島郡
えっこ 福島県若松 「いっこ」の「い」が「え」に転じたもの
かわらのこちこち 山形県荘内
こちこち 秋田県鹿角郡
こぶやなぎ 大阪府泉北郡
さるこやなぎ 千葉県夷隅郡 埼玉県幸手
ちんこやなぎ 群馬県邑楽郡
とーとー 鳥取県東伯郡 岡山県津山 備後では「えのころぐさ」をこう呼ぶとか
やなぎころころ 群馬県佐波郡
いぬこやなぎ 仙台
ちんころ 長野県伊那地方 確かに私の母は「ちんころ」と呼びます
たんころ 滋賀県野洲郡 ただし「まつぼっくり」と注がある

所変われば品変わると言いますが、実にさまざまな異称があります。植物や、動物などの呼び方は、地域によって実にさまざまです。それも父祖の時代の生活の中から呼称されてきているものは、その動植物の風貌、容貌などから付けられたものが多いので、こうした調査も試みてみると、意外とおもしろいと思います。