土手猫の手

《Plala Broach からお引っ越し》

「虹」(転載)

2013-08-30 03:33:02 | 夢日記/感興小説(改稿)
   「虹」
                          本居 寝子

霧になる手前の空気が辺りを包んでいる。
瞼に伝わるひんやりとした感触に耳をそばだてて。
足先に清流の音、高みから流れの先をゆっくりと追いかける。
やって来る露をはらんだ風が、やがて深い茂みのそれを一層濃いものへと変えてい行く。
深い深い眠りから、
明けて行く空に立ったまま手を回して、私は、一本の木と浮遊していた。

深く切立った渓谷に添うせせらぎの音。
岩肌から枝を伸ばす青々とした匂い。
きらきらと影を撒きながら降り注ぐ木洩れ日。
過ぎて行く景色を、
案内されるそのままに、果て無い先を私は見つめていた。
まだ見ぬもの、
いつか架かる海と空を辿って。

ひと時、木に止まり休む鳥のように。
ひと息、風を掴んで飛ぶ鳥のように。

手を離し、
やがて飛んで行く鳥のように。

ー飛ぶ夢2ー
2009.8.2「Open Sesame」(初出)。
http://pub.ne.jp/nekome9_1/?entry_id=2329408

2013.8.30。
「様に」を「ように」に。読点を一箇所足しました。

《Plala Broach「土手猫の手」2013.8.30》