「これは幻の島焼酎ですよ。いけますよ」と薦められたのが「黄八丈」という銘柄。麦焼酎で3年古酒とありました。飲み口がやわらかく、心もち甘い。「女性にも人気です」には納得。
幻は味にもあるでしょうが、蔵元が後継者がいなくて廃業、いまは手元に残っている分を売っているだけなので在庫が底をつく寸前、なるほど、存在自体が幻になる日が近いと薦めた人は憂い顔でした。
考えてみると私の焼酎とのつきあいもかなり長くなりました。学生時代、編集者時代、新宿でつきあったのは強烈な臭いがする芋焼酎でコップ2,3杯で不覚にもダウン、翌朝は寝具にまで臭いが移り、頭がガンガンしたものでした。あのころは銘柄など飲み屋さん任せ、ひょっとしてノー・ブランドだったのではないでしょうか。
そしてビール・日本酒・ウィスキー・ワインと腕を上げ、ふたたび焼酎とめぐりあったのは数年前、痛風予備軍になってドクターから「焼酎なら」とお墨付きをもらってのことでした。
ひさしぶりの焼酎はまったく昔とは別物。以来、昵懇の仲になりました。芋なら宮崎の「赤霧島」、麦なら壱岐の「壱岐」と決め、深いおつきあいです。
いかに気に入ろうとも幻ではつきあいを深めるわけにはいかず残念です。帰り道、「黄八丈」の700ml瓶を後生大事に抱えて来たのはもちろんです。八丈は焼酎の島でした。プラス、空港のレストランで食べた「島ピザ」唐辛子がピリッと効いて旨かったこと。