どくだみ
六月 素手でどくだみを抜いた
指先や掌に真っ青なにおいがついた
また母の忌日(きじつ)が近づいてきたのだ
真っ青な手をいっぱいいっぱい嗅(か)いだ
十月 軍手をはめて枯れたどくだみを抜いた
鼻にこすりつけたがにおわない
母が亡くなって三十年余り
茶色に変わった葉を写真の前にそうっと置いた
六月
六月になったので
ぼくはすこしだけ静かに生きよう
六月は母が死んだ月だから
六月は妻が生まれた月だから
六月になったので
すこしだけぼくは優しくなろう
たいせつな人を送り
たいせつな人を迎えた六月だから
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かけがえのない人亡くしたひとなら、思いの深まる景色や生き物などがあるでしょうか。
6月は梅雨空のした、こころが静かになります。