祈りを、うたにこめて

祈りうた(聖句つれづれ  わるくち)

わるくち


私は言った。私は自分の道に気をつけよう。私が舌で罪を犯さないために。私の口に口輪をはめておこう。
(旧約聖書「詩篇」三九篇)



わるくちって気持ちがいい
いつでもどこでも大きな口を開けたがっている
きょうもなんどもあけてしまったな
わるくち という口



犬も猫もわるくちを言わない
にくしみ、さげすみ―そのシミをもつニンゲンだけ
くやしさ一杯だから いやらしさに気づけない
わるくちが自分らしさ なんて!



わるくちには重さがない 空中にフッと飛ばされる
だが心に沈むと 澄んだ湖を泥沼に変えてしまう
言った口にも 聞いた耳にも
くろずんだ藻がからみつく



ひとを悪く言うとき蛇のような眼をしている
―妻からそういわれた
自分だってたくさん失敗しているのに 赦(ゆる)せないのね
―妻からそう言われた



ひと言のわるくちの前に
千のわるい思いがある
くやしさ、腹立ち、ねたみ、さげすみ、復讐心 
敗北感と劣等感と優越感と その他ごちゃごちゃだ



コンクリートミキサーのように邪念をかき混ぜ
たったひとつの口から無念を吐き出す
それでスカッーとするみたいに
口臭に 唾に さらに邪気までふりまいて



口にチャックするのはつらい
くやしい! という心にふたをするのは簡単じゃない
けれど せっかくの口だ、ひとつしかない
せめて 美しくない言葉のふさぎ口になれたらいいな



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