取扱い注意
家をリフォームして四年、今日はじめてトイレットペーパーの交換方法とやらを読んだ。
取付け:支持部を下から押し上げてセットします。
取外し:そのまま上へ押し上げます。
ご使用上の注意
紙巻器本体の上に乗ったり、寄りかかったりしないでくだ
さい。
*器具が外れ、ケガをする恐れがあります。
便器を製造する会社のひとの親切さは「ご使用上の注意」から伝わってきた。「紙巻器本体の上に乗るな」という。
試しにてのひらを紙巻器の上に置いてみた。指は外に出る。掌(たなごころ)もすこしはみだす。私の手は大きなほうではないのだが。
はて、と考えた。「紙巻器に乗る」というのは、はたして人間の子どものことだろうか。それとも、子猫だろうか。あるいは、ちいさな人形かなにかだろうか。まさか、七人の小人?
わらいがこみあげてきた。
「手を乱暴に載せないでください」ならわかる。
さらに「手を載せて、上から押さないでください」なら、もっとわかる。
「手を載せて、支えにして立ち上がらないでください」なら、ほんとうに親切。―そんなことをすれば、「器具が外れ、ケガをする恐れ」があるではないか。
ひょっとして、と思った。
これは私の妻が私の「取扱い注意」を書いたものかもしれぬと。
放っておくと、このヒトはトンデモナイことをしますよ。
人の心や事情、それらの幅も長さもおかまいなしに乗っかってきますから。
相手の思想・信条・心理・体調からはみ出しそうな憤懣(ふんまん)をぶつけてきます。ひとりよがりの手形をべたべたとくっつけてきます。
気をつけてください。
巻き込まれると、あなたの心が外れ、ケガをする恐れがあります。
●ご訪問ありがとうございます。
神さまには、きっと、一人ひとりの「トリセツ」がおありなのだと、安心する気持ちはあります。
が、それでも、感染者が爆発的に増えているコロナ禍、五カ月になろうするのに止まないロシアの侵略、日本各地の大洪水、野菜や電気代にたまげる物価高騰、パチンコ屋で遊びほうけて子どもを殺す親、山火事を世界各地で起こしている熱波などなど、持って行き場のないような憤り・無力感・疲労感・痛みなどで自分自身を持て余します。
そのようなとき、危険人物と化す私の、その「取扱い説明書」でも「取扱い注意書き」でも必要かなあと思うのです。