木村秋則

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録

木村秋則　Wikipedia
木村秋則　YouTube

木村さんに関しては数年前から気になっていましたが、無農薬・無肥料にてリンゴ栽培を成功させた偉人です。　壮絶な闘いがあったのは、その笑顔の裏に隠されています。　何故、彼は闘ったのか。

彼は元々機械弄りが好きで、工業高校を卒業し、川崎にて勤め人になったそうです。学生の頃には、コンピュータを作成しようとして、それを実現するには30000本だかの真空管が必要で、ビル1個分になってしまうと分かり、諦めたこともあったそうです。　さて彼は実家の事情で帰郷して、リンゴ農家に養子として婿入りすることになりました。しかし、お嫁さんは、農薬に過敏な体質であり、1日散布後は、1週間も農園に出られないようになってしまいます。　彼は、「家族のために頑張ったんだよ」と言いますが、結局は、10年もの間1個もリンゴが実らずに、飢えと貧困で一家は困窮することになります。そこで彼が「もうやめようか」と弱音を吐くと、娘たちが「何のためにここまで頑張ってきたの」と、逆に叱咤されてしまったこともあったようです。この親にしてこの子在り。

しかしそれは壮絶な旅でした。　ある時、お金が無い中で、家族旅行に出掛けた時の事。もうその頃は限界の状態であり、家族団欒は一切無かったようです。些細なことで子を怒鳴る木村さんの状態では、楽しいはずもありません。　周りの農家からは「カマドケシ」と呼ばれ、自然農場が害虫の発生元になるということで非難される。村八分にされる。　木村さんは、誰にも会わない様に、朝早く農場に向かい、日が暮れてから帰宅する毎日だったようです。　田畑を手放し、ご飯と味噌汁だけの食事。　彼に歯が無いのは、キャバクラでのバイト中、ヤクザに殴られてそれを治療しなかったからだ。ホステスも他の従業員も、みんなそれぞれの事情を抱えて、その店にたどり着いていた。店でそれぞれの事情を聞くのは暗黙のタブーだったが、その分だけ誰もが他人の苦境には敏感だった。　キャバレーの支配人は、木村が来てから店の雰囲気が明るくなったことに気付いていた。店では、木村はいつしか、なくてはならない存在となっていた。しかし、その事件が、木村を、再びリンゴ畑に呼び戻した。

彼がそこで苛立っていたのは、自分が成功しないからではなかった。家族に申し訳が無い気持ちからだった。それが彼を焦らせ、家族の笑顔を奪い、彼自身を深い谷底へと突き落としていたのである。　木村は自分の頭がどうにかなってしまったのではないかと思った。まるで脳味噌が半分に割れているようだった。頭の中ではもう1人の自分が、「もう諦めろ」と叫んでいた。

夜も寝付けず、ただ独り納屋へ行って真っ暗闇の中座り続ける。それを見る妻も声も掛けられない。　しかし、彼を護ってくれる方々も居た。　郵便局の所長は、なけなしの金を返そうと持って行けば、「それを払えば生活できないだろう」と言い、けっして受け取らなかったという。退所する際には、「あいつが成功したら3ピースの背広をプレゼントすること」と書き残して行ったという。義理の母は、そんな婿の挑戦を一切咎めもせず、協力し、病院へも行かずに手遅れとなり、病死した。死に際の義母の手を握り、木村は絶対成功を誓ったという。

何をやっても実らない。　やはり、農薬無しでのリンゴ栽培は無理なのか。どうにも手詰まりとなった彼は、もう木々に話し掛けることしかできなかった。　「枯れないでくれ」その言葉を、木々に掛けて廻った。隣の農場との境の木々には、「とうとう気が振れた」と思われるのがどうしても受け入れ難かったために声を掛けなかった。不思議なことに、「声掛けしなかった木」のみが枯れてしまったという。

そして、いよいよ彼が自殺する時が来た。　彼は、村の祭りに娘たちを連れて行くよう妻に告げ、自分は山に向かった。　ロープを手に持ち、暗い夜道を登り、手ごろな木を探す。　そこで彼は、神の啓示とも言えるほどの真理に出会う。　「これだ！」
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何故、「こんなになるまで」神は知らせてくれなかったのか。　首を括るその寸前で・・・・・「希望の光」が、とうとう見えたのである。

無農薬自然農法に成功後の彼の畑は、まさに奇跡の農場である。　リンゴの木が、自ら病んだ部分を切り落としてしまうようになったのは、木本来の自然治癒力が戻ったことによる現象である。彼はその手法を、特許も付けず講演にて全世界に明らかに語り廻っている。その貢献を、韓国の農業組合から表彰もされている。しかし、彼はそれを金儲けとして成立させるよりも、目標としては、自然農法リンゴを安く提供することを目指しているようだ。　何故ならば、そこでは、自然農法が全世界に普及することが求められるはずであり、そのためには安く生産できなければならないからだと言う。

彼の著書には、「UFOや宇宙人や幽霊やらとの遭遇」が頻繁に出て来る。1番面白いのは、「龍」との遭遇である。　その中で、彼は宇宙人に、「地球の寿命」を教えられたという。そしてそれは、近未来の事だと言う。　人類に残された時間は短いので、彼は、「人類が在るべき在り様」を説くことを、弛まずに実践し続けるつもりだと言う。　本には、無農薬自然農法による作物と、農薬や有機栽培された食物の腐り方の実験結果も顕されている。

汚染された「正しくない食物」を食していけば、人類の体もまた汚染され、「正しい結論」に行き着けないままに、人類は終焉を迎えるのかもしれない。　おぼろげながらも、いつからか感じていたその答えへの希求が、その頑固な性格も手伝って、彼をここまでに突き動かしていた原動力だったのだろう。　日本、世界、地球の浄化を目指し、その命運の一端を担っている者は幾人か居るが、この男もその1人である。





「林檎の木は、林檎の木だけで生きているわけではない。　周りの自然の中で、生かされている生き物なわけだ。
人間もそうなんだよ。
人間は、そのことを忘れてしまって、自分独りで生きていると思っている」


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