北朝鮮からの生還

北朝鮮からの生還

敗戦から71年。当時満州や朝鮮半島に残留していた日本人は多く、敗戦の混乱の中やっとの思いで日本本土の地を踏んだようですが、そこにたどり着くまでには壮絶な体験や親族や仲間の死を乗り越えてきた歴史がある。

今回紹介する本は終戦前に北朝鮮に渡り、戦地と暴徒化する朝鮮人との合間を潜り抜けて日本へ戻った少年の生還記録である。空腹に耐え、悲しみに耐え、一日一日を生き抜いた少年の体験談。「たとえ国の為であっても、家族のためであっても、けっして戦争に参加したり、人を殺したりしてはいけないと心に決めた。戦争による肉親の不条理な死がどんなにつらく悲しいかを身を持って知ったからです」と、筆者の悲痛とも取れる体験。

物が溢れ、欲しいものはある程度手に入り、食べる物も豊富な現在の日本では体験する事はない。まだ世界各地で紛争が続いているので、戦地から避難している人は同じような感覚なのかもしれないが、終戦７１年を迎える日本人にはある意味で未知の世界。

このような体験を記録として残している事は非常に貴重で、当時の日本人が体験した悲惨な状況を偲ぶ。
平和な日本しか知らない我々が読むべき本だと思います。