昨年の淡路で試行したスロースタイルサイクリングで、いちばん印象に残った地元人が、山田脩二さんだった。この方、建築写真で著名な写真家(カメラマン)だったのだが、25年以上前に、職業写真家に終止符を打ち、淡路島の津井で瓦師(カワラマン)へと転進した。
昨年10月に掛川を訪れた、小布施のセーラ・マリ・カミングスさんに、来月淡路へ行くと言ったら、「山田脩二さんと会わなければ淡路島に行ったことにならない」ときっぱり言われた。おそるおそるYちゃんがアポイントをとり、しかも約束時間よりかなりの遅刻をして、自転車で山田さんの工房を訪れたのが出会いの一歩。
「みんなオレの写真を見てるんじゃなくて印刷をみてるんだ。だから印刷の現場をしっかり知らなきゃ写真は撮れない」「写真も瓦も、同じ焼き物だよ」と喋られた衝撃的な出会いから2ヶ月。“写真なんか見てないで印刷物を見てる”と語るカメラマン(カワラマンか)に初めて出会った。掛川にぜひ来て欲しい!とオファーしてあったが、「東京の帰りに寄るぞ」と、ついに掛川へ山田脩二さんはやってきた。
建築評論家の浜口隆一さんが晩年を過ごした掛川で、まず「浜口さん」で繋がっていた建築家の小澤義一さんに引き合わせた。いつもの饒舌な会話は、さらに饒舌になった。はるばる富士山麓から山村レイコさんが駆けつけ、再会を抱き合って歓んだ。会う人、みんながみんな“脩ちゃ”(しまいにはみんなにそう呼ばれていた)ワールドにはまっていった。
『山田脩二氏、掛川で茶畑を撮る』の図。“写真家が写真を撮っている写真を撮るのは緊張するなぁ”と、この写真を撮ったMさん。帰り際、「サトー、今度淡路に来たときゃ、うちで大宴会やろうぜ!」とひと言。掛川で酒を呑み、掛川の風に吹かれ、掛川の人を魅了して帰っていった。