自然回帰マーチャンダイジング

-地域-自然-デザイン-商品-生活-を繋ぐ遊び場・仕事場から

まもなくモコモコ

2009-09-26 21:05:09 | Weblog
 
 国民体育大会の文化版といえる国民文化祭が、いよいよ10/24(土)~11/8(日)の16日間、静岡県全域で展開される。掛川市における事業の1ジャンルで、大東地区 土方(ひじかた)での「アートフェスティバル」は、地域の歴史・地形・風景の価値を見直し、地域の空間を使った『モコモコ・グランドアート』を開催する。

 土方の地形そのものが、自然の造形(アート)だ。ここには、隆起したであろう「山」とも「丘」とも違う、「こんもり小山=モコモコ」が象徴的地形をつくっている。これは、いわば自然の造形=アートであり、住民はその上・中で生活(暮らし、営み、商い、農・工生産)をおくっている。歴史をひもとけば、この小山が城であり、水源であり、人の営みに大きな影響をもたらしている。

 人間には、高いところと低いところに行きたいDNAがある。また、日本人にとって里山は懐かしさを憶え、すっと馴染む風景だ。あっという間に登ることができるのがモコモコ。しかし、たった数メートル登ってみただけで、吹く「風」と見渡す「景」の違いは、登ってみた人にしかわからない。

 モコモコの上に、造形物(アート)を創作・設置する。期間限定(約2週間)で、モコモコの頂上やその近くに、地域の営みや、自然、歴史をテーマとした造形物や、その場所を使ったパフォーマンスなどの創作を想定している。創作には東京学芸大学の鉄矢悦郎准教授(デザイン教育)の指導のもと、鉄矢研究室の大学生、地元住民に協力をいただく。

 写真は、モコモコのひとつ『iモコ』だ。てっぺんに2本の栗の木。2人は東京学芸大学の学生。こうしたロマンチックなモコモコから、一面が茶畑のモコモコ、富士山と太平洋が眺められるモコモコなど、厳選した12のモコモコを巡るショート・トリップを提供しようと、いまマップの編集が佳境に入っている。

栗の酒をつくる意味

2009-09-22 20:21:05 | Weblog

 理事をつとめるNPOスローライフ掛川では、この秋、掛川産の『栗』に着目し、『栗』を使って地域に有効な情報発信や交流を実現し、商品化へと結びつけようと、市民・農業・小売業・行政と協働で推進する「かけがわ栗焼酎プロジェクト」を立ち上げた。

 掛川市は、農業生産出荷額が静岡県で第3位と、農業が地域経済を大きく支えている。しかし、これは農産物を素材として生産し、出荷している状態であり、例えば掛川の産出額第1位である「茶」は、あくまで「茶葉」としてのものである。その意味からも、「農」の持つ価値を「商」へも有効に機能させるために、高付加価値化による、加工品などへの商品化と流通が求められている。
 
 掛川市では栗の生産も盛んであり、里山には多くの栗畑が点在している。特筆すべきは、著名な栗羊羹、栗鹿ノ子、栗落雁などの和菓子に使われている栗が、掛川からも出荷されている(らしい)という点だ。栗の産地でありながら、地域で加工品として顕在化しているのは、栗蒸し羊羹、栗きんとんといった和菓子だが、そこに“栗産地としての掛川”という情報発信は希薄だと言わざるを得ない。また、栗農家の現状も、継承者不足やイノシシによる被害によって、栗畑の荒廃が進みつつあり、農産物の高付加価値化や、美しい里山の保全が、地域の大きな課題ともなっている。

 そこで、掛川の栗を使った加工品の単なる商品開発にとどまらず、多彩なジャンルで活動するメンバーならではの視点と、市民参画を促進できるネットワーク力で、栗畑のメンテナンスや収穫の補助、地域のひとびとにその価値を享受できる商品づくり、地域を代表する農産物としての情報発信を実現したいと考えた。“栗焼酎”に着目して商品化する理由は以下3点に集約される。

 1)栗焼酎は日本でも四国と九州の一部でしか商品化されていないため希少感がある  
 2)酒は掛川の他の農産物との組み合わせにより新たな食提案が可能となる
 3)酒造りへの関心の高まりや地酒ブームにより、酒づくりのプロセスに関与することが価値となりつつあり、
   栗の場合比較的関与がし易く、地域の課題(農業継承者不足やイノシシ被害など)も明確になる


 『かけがわ栗焼酎』をつくるプロセスを、市民はもとより、農業関係者、小売業者、蔵元の参画により実現したい。市民や地域を積極的に巻き込んだ「内発型」の事業として、身近な農産物が魅力的な商品になり得ることを実証し、市民にとって地域の農産物や農空間が貴重な資産であることを認識するとともに、積極的に活用することを提案したい。

 地域商品の開発と流通を市民主導で行うことにより、単なる短期的な商いの域を超えた、持続可能な商いを創造することの価値や、本来の地域ブランドや地域商品のあり方を、地域に提案していくのである。地酒開発は、その酒が一人歩きするのでなく、その素材が生まれる地域の背景はもちろん、その酒に合う地産の食材にも光をあてることに繋がる。特に今回の『栗』は、ありそうでなかった加工品であり、高付加価値商品になり得るものである。市民にとって、身近にある栗の木から、新たな価値をもったお酒が開発されることのインパクトは大きいはずだ。

 栗焼酎は、高知県の四万十川流域でつくられる「ダバダ火振」が著名だが、東日本には見当たらない。今回の醸造にあたっては、富士山麓にある富士錦酒造に強力に協力をいただけることになった。名ばかりの地域ブランド・商品が出回る中、本当の意味での地域商品を提示し、地産地消ならぬ“地産地生”を実現することに、このプロジェクトの本来の意義があるのだ。