自然回帰マーチャンダイジング

-地域-自然-デザイン-商品-生活-を繋ぐ遊び場・仕事場から

雨の狩野川100kmサイクリング

2007-10-20 19:27:47 | Weblog

 2000年に伊豆の観光再生を目指し、静岡県と伊豆の市町村が開催した「伊豆新世紀創造祭」から、すでに8年が経過した。狩野川を観光商品化しようという構想から、サイクリストを伊豆の観光客として顕在化しようと計画したのが、“コリドー狩野川”事業である。

 この事業は、サイクリングルートの設計、サインの整備、マップの編集・発行、を機軸に、マップを使ったサイクリングラリー、シンボリックなロングライドイベントを行った。狩野川100kmサイクリングのルーツである。

 狙いは外れなかった。2000年から、サイクリストたちは狩野川に集い始めた。週末は、河川敷や川沿いのみちを、自転車を積んだクルマがうろうろするようになった。カラフルなウェアを身に着けたサイクリストたちが、さかんに堤防上を疾走するようになった。計画の当初、行政マンたちは我々の提案に首を傾げていた。彼らは、サイクリストが観光客になることに想像力が働かなかった。

 今年は雨のサイクリングになった。申込者はなんと600名。かなりの雨量だったため、当日の実走者は減ったが、「じゃまた来年!」「来年は晴れることを期待してます!」今年もたくさんのサイクリストに声をかけられ続けた。(写真/小川博彦)

アマゴウォッチング

2007-10-19 14:46:15 | Weblog

 ここ10年ほど、長野県遠山川でアマゴの産卵行動を観察している。ほぼ同じ時期、同じエリアで観察を続けているため、一定レベルでの定点観測となっている。

 個体数が減った感は否めないが、今回も40cmオーバーを含め、数多くのアマゴに出会うことができた。ただし、例年10月第2週の週末がピークだったのが、ここ3年は産卵行動の初期段階であるケースが多くなった。

 こうしたことを全て温暖化のせいだ!と騒ぐ気はないが、脱ダム宣言した長野県では、逆にダムのようには目立たない堰堤の建設がすすんでしまったようだ。例年、産卵アマゴが押し寄せていた支流は、本流合流点から約100m先で、真新しいコンクリートの壁が、彼らの行く手を阻んでいた。(写真/榑松 亨)


空中集落

2007-10-15 18:20:52 | Weblog

 長野県の遠山川へ、アマゴの産卵ウォッチングへ行ってきた。そこへ向かうには、このような空中集落を抜けていくことになる。

 下栗の里。長野県南信濃郡上村(現在は飯田市)を通ると、同行した皆が「チベットだ」「マチュピチュだ」と叫んだ。標高1,000m近い山の斜面に、人家が点在する光景。対面にある人家へは、谷を降り、吊り橋を渡り、自らの足で登っていかなければならない。

 皆が「なぜこうした場所にあえて住んだのだろう?」と口を揃えるが、答えは“時代の必然性だったから”だ。あえて、ではない。ここが住みやすかった時代があったということを創造すべきだろう。

近くて小さな旅~掛川のみち・まち

2007-10-05 13:50:57 | 執筆/寄稿

 その先を曲がると何が待っているのか。その向こうにはどんな世界が拡がっているのか。こういう想いにかられる場面によく出会う。まちの中心部を少しだけ外れ、かつてのサイズのままの路地を歩いているとき。自転車に乗り、緩やかにカーブした里川沿いや、適度なアップダウンを繰り返す里山の農道を走っているとき。ローカル鉄道に乗り、列車がスピードを緩めて蛇行した線路を進もうとするとき。手前の空間や風景が、魅力的であればあるほど期待感が膨らむ。その先が大きく開けていたり、あるいはさらにこうしたカーブが続いていたりすることで、その風景や空間はより価値の高い場所となる。

 例えば、この掛川市内の路地。古い建築、煉瓦造りの壁、路地の狭さ、向こうまで見渡せないみちの曲がり方。このみちを使ってCMを撮影した。掛川の魅力ある風景を紹介する出版物にも採用した。掛川を訪れたサイクリストたちを、必ずといっていいほどこの空間へ案内した。単にお気に入りの場所を自慢げに紹介したかったのではない。何気ない日常空間に価値があることを、訪れる人にはもちろん、このまちに暮らす人にも示したかった。

 また、掛川駅を発着するローカル鉄道「天竜浜名湖線」沿いは、素敵な空間資源の宝庫でもある。線路沿いに3kmも続く一直線の道があるかと思えば、小さな山の手前で大きく線路が蛇行する。田圃の直線と丘が作り出す曲線は、このまちにしかない風景財産だ。絶妙なカーブを描くその先には里川にかかる鉄橋が、その手前にはゆるやかな里山が待ち構えている。

 その先をどうしても見てみたくなるところは、自然に加えた人の手が、意図なく効果的なチラリズムを演出している。自然と人との関わりが見える風景。時間が止まったままの空間。味わい深い建築群。日々の生活の中に、選りすぐったかのようなロケーションが存在している。掛川に例をとったが、決してここにしかない風景というわけではなく、ローカルには、こうした魅力的な空間がまだまだある。地域の人びとが、こうした価値に気付かないのはあまりにもったいない。遠くへと大がかりな旅に出るチャンスは少ないかもしれない。しかし、小さくとも魅力的な旅は、あなたの生活のすぐ近くにある。

(写真)
掛川市旭町には、時間が止まったかのような空間がある。

■ビジネスマガジンVEGA 8月号「しずおか自然回帰の旅⑨」として寄稿

アメリカから来た釣り仲間

2007-10-01 22:59:06 | Weblog

 彼は昨年初めて日本に来た。今年になって初めて日本でフライフィッシングを覚えた。TEIMCOやFOX FIRE、C&FといったMade In Japanの優れたフライフィッシングタックル、ツールやウェアを着こなし、日本のネイティブトラウト(アマゴやイワナ)を初めて釣った。

 彼はサカナを釣るたびにその画像をメールで送ってくる。昨日は、同じ仲間の酒井クンと今シーズンの締めくくりの釣りをしてきたようだ。見慣れた渓相の川岸でキャストし、釣れたアマゴを手にして笑っている。

 日本の遊漁システム。日本の渓魚の習性。日本独特のフライパターン。彼は英訳された文献を片っ端から読み、多くの知識を得ている。さらに、われわれと川に立つことで、自然と遊ぶ知恵や作法を日本人以上に体得している。

 日本で培ったフライフィッシングライフ。彼が母国へ帰り、友人たちと釣りに出かけたとき、日本人フライフィッシャーの価値観や心意気が乗り移った彼のスタイルは、アメリカ人たちにどう映るのだろうか。