60日ぶりに焼津港へ帰ってきた、御前崎の鰹の一本釣り漁船「日光丸」の水揚げに立ち会うことができた。
その船いっぱいに積まれた鰹の総量はなんと370t。丸一日かけて凍った鰹を水揚げする。370tの量に対して、焼津港での“競り”は、驚くことにものの5分で終了してしまった。
この鰹は“ビックリガツオ”と呼ばれる。釣った鰹をすぐにフリーズさせたことの証として、口を大きく開いたまま凍っている。網漁に較べて漁獲量に大きな差が出るが、その大きな違いは、魚に対するダメージを最小限に留めて捕獲したことでの魚の鮮度にある。根こそぎ獲る網漁は、囲い込みから引揚げまでの時間がかかり、網や魚同士の接触により、ダメージは大きい。資源保護やトレーサビリティーの観点や、希少な価値感を持つ食材として、もっと注目されるべきだ。
この非効率な、足るを知る漁法は、日本にしか存在しない。しかも、日本では数えるほどの漁船にしか採用されていない。しかし、船も、港も、競りも、ビックリガツオも、私たちのすぐそばにある。