いつものように外を駆けずり回り元気いっぱい住処に戻って来た黄泉は
目を見開いた。
目の前に立つ蔵馬。
朝着ていた着物でなく真っ白な服を着てる。
「新しい服!?ずりい!」
地団駄踏んで黄泉は叫んだ。
くーが大きくなって着物が小さくなったのは黄泉も解っている。
新しい服手に入れなきゃな、とは思っていたのだ。
でも、黄泉だって大きくなった。
今着てる服は襟ぐりがヨレヨレだし裾も擦り切れてる。
丈も短いしみっともない。
けど金が無い。
くーが作ってくれる木苺や李なんかをちょっとだけ山向こうの市で
(盗賊団にバレない程度に)売ろうか?なんて相談している
くらいには金が無い。
だから我慢してたのに。
「くーだけ新しい服ずるい!」
顔を真っ赤にして怒鳴る黄泉に黒鵺はやっと我に返った。
「あ……いや、待てって黄泉。
確かに新しい服だけど買ったんじゃなくて」
ずるいずるいと叫ぶ黄泉に黒鵺の言葉は届いてない。
流石に煩いのに閉口したのか蔵馬は黄泉の前まで歩いてきて額をぺちん!と叩いた。
「いてぇ!なんだよ!」
「これ、おれが自分で作ったふく。
ぬーに買ってもらったんじゃないからさわぐな」
一瞬黙った黄泉はまた
「ずりい!なんでくーだけ服作れんの!」
と叫びだした。
「ぎゅーってしてふわってなったらしゅってする」
ふふんと自慢げに語る蔵馬。
意外にも感覚派なんだね、と黒鵺は頷く。
しかし、不思議なものを見た。
着物を脱いだ蔵馬が目を瞑り何事か唱える。
ふわふわひらひらした物が蔵馬の身体を包み、
手や足や胴に巻き付き一瞬光り。
眩しくて目を閉じた黒鵺が再び目を開けたそこには
汚れ一つない新品の真っ白な服を着た蔵馬が立っていた。
白いズボン。襟と脇が大きく開いた上着。
ちょっと扇情的すぎるきらいもあるが良く似合ってる。
今蔵馬がやった事は多分ある程度のちからと素養のある奴なら誰でも
出来ることだろうが黒鵺は充分過ぎるくらい驚いた。
驚き過ぎて決意した。
近いうちにここを出る、と。
〜シャランラ。
あ、なんか短い。