アラサー螢子さん 番外編 思春期修羅くん

財布の中には一万マーカ。
人間界通貨なら五千円。
何でも、と言うわけにはいかないが
まあ、何かは買える。
菓子とか花束とか、凡そ『今日』贈る品物なら
ある程度納得いくものが買える。
だけど。
花束を贈ったところでもっと立派な花が庭に
咲き乱れているし、菓子を贈ったところで
ここ五年ほど『食事』を必要としなくなった
あの人に変な気を使わせるだけだ。
「どーしよう・・・」
人間界の友達に聞いたところで
『何もやんねー』か、『花束』か、『菓子』と返って
来るだけ。
魔界の奴等に聞いたって自分の様に両親揃ってる上
親子で同居しているほうが珍しく何の参考にもならない
答しか返って来ないのがオチだ。
まあ、それ以前に、『母の日』なんて知っている奴のが
少ないし。
他のことなら『母』に聞けばいいが本人に渡す物を本人に　
聞くのは不粋だろう。
てか、親父に負ける気がしてやだ。
元国王で現魔界大頭領府外交特使兼癌陀羅自治区総長兼
『妖孤蔵馬の選んだパートナー』の親父には負けたく、ない。
金も力も権力も全部手に入れてる親父に唯一負けないつもりなのは
『母』蔵馬への愛情だけなんだからな、と修羅は思う。
まあ、蔵馬本人の性認識はー妖化の進みにより完全な身体変化の
能力で女に化けることが可能になったのだけどー男なので
『母さん』と呼ばれるのは多少抵抗があるみたいだけど
他の誰も呼ばない呼び方で蔵馬を呼べる男はおれだけなんだぞと
父や、他の蔵馬になつく連中に威嚇もこめてそう呼ぶことに
決めたのは半年前。
親父と蔵馬が並んで立ってる写真が週刊誌に載った。
別に珍しくもないことだったのになんか悔しかった。
写真に添えられた文章、『魔界一の美形夫婦』。
そこには、自分はいなかった。
四、五年前までなら自分も二人と並んで写っていただろう。
文章も『魔界一の仲良し家族』とかだったろう。
蔵馬と並べるのはお前じゃないと言われたきがして、悔しかった。
だから、『母さん』と呼ぶことにした。
他の誰も呼べない呼び方で。

「どーしようかな、何あげよう。」
ベットでゴロゴロしながら考えるが思いつかない。
きっと飛影は原石のまんまの宝石を贈ってくる。
あいつなんで蔵馬になついてんだか解らないが
宝石ってのは巧いと思う。しかも原石。
飛影の妹の雪菜は永久に溶けない小さな雪像を
去年贈って来た。雪菜までなんで蔵馬に?とは
思ったが顔立ちの何処か似ている二人を見てたら何か
納得した。
「わっかんないなあ～」
志保利おばちゃんーお婆ちゃんて呼んだら蔵馬に怒られたーに
聞いたら親父に筒抜けだしなと考える。
桑原に聞くかな、それとも・・・
「あ、」
螢子姉ちゃんに聞こう。
あの人なら蔵馬や親父に報告なんてしないし、安心だ。
「えーと。」
『お久しぶりです。修羅です。
いきなりなんですが母の日の贈り物って
何がいいと思いますか？』



ぴろん。
何よもう。
纏めて借りてきた海外ドラマの別れ話に
夢中になっていた所のLINEにイラッとする。
いいとこなのにまったくもう。
「なになに？」
『お久しぶりです。修羅です。
いきなりなんですが母の日の贈り物って
何がいいと思いますか？』


修羅くんの母=蔵馬さん。
「本?」
でも確か蔵書が在りすぎて私設図書館みたいの
魔界に造ったんだってよ、とか幽助が言ってた気が
したわ。
食べ物は昔からあまり食べないし。
紅茶？バスボム？ボディケア用品?
思い付くものはすべて蔵馬さんが作れるわね。
『もっとオレに甘えて見ろよ！』
ん？
『ああ、おまえは確かに何でも出来るさ。
でもな今みたいな時くらいオレに寄りかかれよ』
『ジョージ・・・』
「あ、いいかも。」
修羅くん蔵馬さんにベタベタだったのに最近
甘えてない感じだし、「くらまあ😘」から「母さん😒」
だしね。

「甘えろ？」
なんやねんそのアドバイス。

でもちょっと魅力的だ。
隣に座って一緒にカフェラテでも飲んで。
なんかDVDでも見たり。
最近やってない。
親父は今日大頭領府に行ってるし。
このプラン結構いけてる？

そうと決まれば。
修羅は気に入りのDVDを手に取り『母さん』の
定位置リビングにむかった。




ぴろん。
「はいはい何～?」
夜８時。
まったりバラエティを見ていた螢子はスマホに手を伸ばした。
「ん・・・・あら！」
LINEの文面。
『螢子姉ちゃん😆💕✨
蔵馬すげえ喜んでくれた👍
ボクも楽しかった超ありがとう　修羅』
適当なアドバイスだったけど。
上手くいったみたい。
そっか、母の日。
私もお母さんにメールくらいしよっかな。




～アラサー螢子さん番外編。
修羅の設定説明的な。
うん、修羅っぺ蔵馬さんに仄かにLOVE的な？
そんなんになるとは思ってなかった・・・
飛影が母の日にプレゼント贈ってんのは
修羅に対向してかな？雪菜ちゃんは飛影への
意志表明。私貴方が兄だって知ってますよ的な。