ふふ、ふふふ。
誰かに見られたらかなり不気味な表情と笑い声。
でも、ここは、一人暮らしのマンションの一室。
誰憚ることなく、笑えるし、泣ける自分の城。
とうとう、手に入れたわ。
思いたってから二週間。
入荷しないとまたされて、一週間。
これでなんとかなる❗はず。
垂れ行く私の胸がまた、大きくなる⁉はず。
・・・・給料日前に五千円は痛かったわ。
でも、このナイトブラは私のアラサーボディに
革命を興してくれる‼はず。
一月ほど前、中学時代の親友達と女子会をやった。
オカッパ眼鏡ちゃん(アニメの声は修羅と同じ)と
つり目ツインテールちゃん(アニメの声は蔵馬と同じ)だ。
ダサい中学生だった私達もこじゃれたバルでワイン飲んで
ハモンイベリコなんて食べるようになったのね・・・・と
なま暖かく微笑んでいたら、夏子(どっちが夏子だったかしら?)が
言ったのだ。
『〇〇〇のナイトブラいいわよ。』
ナイトブラって、何?
『そうなの?私の使ってるの寝苦しいのよ。』
なんで当然の様に話しが続くのかしら?
てか、昔は一番モテるの私で(でも幽助いるので彼氏の数は0のままだ)
最新情報も私からで(静流さん経由で)だったのに。
そう言えば。
二人とも・・・・・結婚してたわね。
オカッパ眼鏡に到っては子供三人も、居るし。
つり目ツインテールは外資系IT企業の広報だっけ。
普通のOLしてる私より女子力高いのねー。
二人と別れたあと、週末のルーティン幽助のラーメンを
食べに行ったらそこに、珍しい人がいたわ。
「躯さん?」
「よう」
と、右手を軽く挙げる。
相変わらずカッコいいな、と思う。
ースタイルもいいし。
「あ、螢子ね・・・ユキムラさん。」
躯さんの隣から声をかけて来たのは修羅くん。
「修羅くん?!
わあ、大きくなったわねぇ!前に会った時は
私の肩くらいだったのに!」
「あ、はい、母が言うには成長期らしいです。
母もおれ位の年で背が伸びたって言ってました。」
「・・・母。」
「はい。」
蔵馬さんのことか。
「おかーさんとお父さんは?」
「今日は来てません。おれ15になったんで一人で
こっち来れるようになったんです。」
「オレはたまたま幽助に用事があったから
丁度いいんでコイツと連れ立ったんだ。」
・・確か魔界の子供は15才まで一人では入界禁止だったっけ。
「みんな、元気?」
修羅くんが敬語喋りなのは蔵馬さんの影響かしら。
「元気!また、飲み会したいって孤光。」
「棗も会いたいってよ。」
「最近皆忙しいものねえ。」
「つか、おめえ、ヒマだろ。」
ずっと黙っていた店主ー幽助が私の前にチャーシューとビールを置いた。
「何よ、暇じゃないわよ。」
「金曜の夜にラーメン食う女の何が暇じゃねーんだよ。
どうせ、土日も予定なくてビールかっくらってお取り寄せした
肉とか食ってんだろ?しかもノーブラで。」
「見てきた様に言うんじゃないわよ!」
「見てきたから言うんじゃねーか!
お前な、オレら付き合ってた頃はまだ十代だったから
ノーブラでも、揚げ物ビールが毎日でも大丈夫だったけど
今は3×才だろ?!」
「往来で女の年大声で言うんじゃないわよ!」
ぶん、と風を切った右手が幽助の無防備だった頬にクリーンヒットした。
衝撃にバランス崩した幽助は足下に置いてあった段ボールにひっかかって
後ろへと転んだわ。
「・・・すげぇな。」
「うわあ、蔵馬とパパの言ってた通りだ・・・」
何を言ってたのよ、蔵馬さんと黄泉さん。
ひさびさに殴ったからか手首が痛かったわ。
くそ、と呟きながら幽助が立ち上がる。
「いいか。螢子。」
「何よ」
こいこいと、手招きするので近づく。
「殴るなよ?」
「殴られる様なこと言うつもりなわけ?」
「・・・オレを殴る前に躯にも聞けよ?」
「何をよ?」
幽助は私の耳元に口を寄せて囁いた。
お前、胸垂れてきてんぜ。
袋から出したナイトブラを撫でる。
あの後再度幽助を張っ倒し涙目で躯さんに
胸の位置が下がったか聞いたら言いにくいそうに
頷かれた。
本当にもう、凄いショックだったわよ!
自慢じゃないけど大きさも形も大満足してたのよ。
それが、垂れて・・・・
あの夜は泣いたわ。
その三日後YSK ボタニカルカラーズから無料で
ボディケア用品が贈られて来たのには二重の意味で泣いたわ。
蔵馬さんにバラしてんじゃねえぞ修羅坊。
でもそのおかげで肌の調子めっちゃ良いけど。
さあ、シャワーでなく、お風呂に入って
ボディケアしたらこのナイトブラをつけるわよ!
きっと十代の頃の張りが戻るはず。
「お祝い、しようかしら。」
ずっと飲んでないビール。
食べてない揚げ物。
お洒落で低カロリーでお高いものばかり食べてたから
串カツとか食べたい。
うちの近くにチェーン店だけど美味しい串カツ屋が
オープンしたんだっけ。
ぴろん。
「ん?あ、LINEかえーと」
『螢子ちゃん😘
今螢子ちゃんちの近くにいるんだけど
串カツ食べない?勿論静ちゃんもぼたんちゃんも
雪菜ちゃんも来るよん\(^o^)/で、どう? 温子』
そんなの。
そんなの。
「いかいでか!」
串カツ!生ビール!
美味しいものは茶色もの!
茶色いものは美味しいの!
頑張った一ヶ月間の努力(減った体重)が三日間で
水泡に帰したのに螢子が気付くのは一週間後。
~アラサー螢子さん2話。
アラサーなんで修羅は中学生?くらい。
YSKボタニカルは妄想で出した黄泉様と蔵馬さんと鈴木で
作った化粧品とかの会社です。創立から10年くらいたって社名に
カラーズがついた模様。あと、螢子は教職目指してましたが
少子化の為免許だけ取って普通にOLしてます設定。
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