COCCOLITH EARTH WATCH REPORT

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人を養うミツバチの危機

2008-06-14 11:30:49 | Weblog
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 12日のクローズアップ現代で「アメリカ発 ミツバチ“大量失踪”の謎)」が放送された。昆虫が植物の受粉に働いていることは知っていたが、アメリカの大規模農家が作物の受粉期になると、養蜂家からミツバチを借りているという話には驚いた。使われているのは、集団行動を好む穏やかな性質のセイヨウミツバチである。養蜂家は沢山の巣箱とともに農場巡りの旅をする。
 ところがアメリカ全土でミツバチが大量に姿を消し、衝撃が広がっている。2年前に最初の異変が見つかったフロリダの養蜂家のところでは、全体の8割にあたる7200万匹もいなくなり、失われたミツバチの死骸がほとんど見つからなかったという。異変は全米の35州に確認された。科学者たちはこの異変を「蜂群崩壊症候群(CCD、Colony Collapse Disorder」と命名した。2007年夏から2008年春までの7ヶ月間に、全体の36%にあたる270億匹のミツバチが失われたが、その多くはCCDによると考えられている。農業大国アメリカでは、農作物の3分の1をミツバチの受粉に頼っているだけに、ミツバチのレンタル料の高騰が、食糧価格の高騰に拍車をかけかねないと危機感が高まっている。
 原因究明に乗り出した研究者達の調査から、巣箱に残っていたミツバチの免疫力が低下し、ウイルス感染への抵抗力が著しく低下していることが分かった。全米の半数のミツバチが集められているカリフォルニアでは、ミツバチの行動半径3~4キロを超える広大なアーモンド単一栽培の農園が広がっている。実験的にアーモンドの花粉だけを与えたミツバチの寿命は、5種類の花粉を与えたものの半分しかなかった。人の営みによって多様性を失った食生活が、ミツバチの健康を損ねているのだ。心配なことに、インドや中国からの需要拡大に応えるため、アーモンド農場はさらに拡大する見込みだ。
 単調な食生活以外に人間が及ぼした影響として、巣箱に残っていた花粉から、50種近くの除草剤や殺菌剤が予想以上のレベルで見つかった。特に最近多用されているネオニコチノイド系殺菌剤が、ミツバチの方向感覚を失わせ、帰巣できなくしている可能性が考えられている。
 対応策として、ミツバチの活動を高める研究も行われている。合成の昆虫フェロモンを与えて花粉収集活動を高める研究では、ミツバチの短寿命化が問題だそうだ。また、病気に強く、繁殖力旺盛なアフリカミツバチは攻撃性も強いので、セイヨウミツバチとの交配が試みられているそうだ。
 もっと原点に立ち返って、人間が何故ミツバチ依存になってしまったか考えて対策を練っている生物学者がいる。スティーブ・バックマン博士は、人間が自然に手を加えて生物の棲家を奪い、数を減らして閉まったと考え、ミツバチ以外にも受粉を担う生物の数を増やすため、四季折々の花、それもより多数の花をつける野生種を植える活動を進めている。番組の終わりに、バックマン博士が語った。「小さな一歩でも踏み出すことが重要です。自分を担う生物の減少を防ぐだけでなく、地球をより安全で美しい場所に変えることのなるのです。」

追 記
 生物種の大量絶滅に警鐘を鳴らし、生物多様性の保全に尽力しているノーマン・マイヤーズ博士は、「映像詩プラネット第3回 傷つけられた生態系の逆襲」の中で、哺乳類と鳥類の半数が絶滅しても何とかやれても、昆虫の半数が絶滅したら人類は大変な困難な状況に置かれるだろうと予測しています。
 

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